訳:
〜の前に、〜に先立って
意味合い:
prior to(〜の前に、〜に先立って)は:
時間的な前後関係を示すフォーマルな前置詞句であり、「〜より前に(before)」「〜に先んじて」という意味を表す用語です。
法的解釈:
prior to(〜の前に、〜に先立って)は:
ある行為が完了・発生するより「前」の時点で、一定の条件がクリアされていなければならないという「前提条件(Conditions Precedent)」を構築する法的な時間枠を指定します。一方が先に義務を履行する「先行履行」の義務関係を法的に担保する効力を持ちます。
実務のヒント:
prior to(〜の前に、〜に先立って)は:
beforeと意味は完全に同じですが、契約書ではより引き締まった格式高い専門的な表現としてprior toが好まれます。実務においては、「prior to such disclosure(当該開示に先立って)」とある場合、実際の情報開示のアクションが起こる前の段階で承認(同意)が完了していなければならないことを厳格に意味するため、事後に「同意を得た」としても免責されない点に注意が必要です。
類似・関連する用語との違い:
- before(〜の前に)との違い:
beforeは口頭表現でも広く使われる一般的な表現であるのに対し、prior toは契約書等の法的な書面で好まれる格式の高い表現です。法的な解釈上はいずれも指定された時点より「時間的に前であること」を指す同一の基準として機能します。 - subsequent to(〜の後に)との違い:
基準点よりも前(prior)か後(subsequent)かという時間軸が完全に相反します。法的な関係においては、義務履行の順序において相手方のアクションの「前提」となる先行義務を課す関係(prior)と、特定のイベント発生を条件としてその「結果」発生する受動的義務を課す関係(subsequent)という違いがあります。 - concurrently with(〜と同時に)との違い:
行為の発生に時間的なズレがあること(prior)と、同一タイミングであることを要求する(concurrently)点に違いがあります。法的な関係においては、同時履行の抗弁権を排除して先行して義務を果たさせる関係(prior)と、双方のリスクを低減するために同時に取引を完了させる関係(concurrently)という「当事者間のリスク配分」の違いがあります。
用法:
prior to(〜の前に、〜に先立って)は:
主に、Confidentiality(秘密保持条項)において、情報の取り扱い手続きを規定する局面で使用されます。
- (文脈): 受領当事者が、開示当事者から得た秘密情報を第三者に開示するにあたり、その開示アクションを起こすよりも「時間的に前」の段階で、開示当事者からの同意(書面)を取得する義務を課す文脈で使用されます。
- (例文での役割): 第三者への情報開示が許されるための「絶対的な前提条件」として、事前に開示当事者から同意を得る時間的順序を設定する役割を果たしています。
例文 prior to(〜の前に、〜に先立って):
【Confidentiality(秘密保持条項)より】
The Receiving Party shall not disclose any Confidential Information to any third party without obtaining the express written consent of the Disclosing Party prior to such disclosure, and shall restrict access to the Confidential Information solely to those employees who reasonably require such information for the purpose hereof.
(日本語訳)
受領当事者は、当該開示に先立って開示当事者から書面による明示的な同意を得ることなく、秘密情報を第三者に開示してはならず、また、当該秘密情報へのアクセスを、本件の目的のために当該情報を必要とする従業員のみに制限するものとする。
例文の注記:
- without obtaining the express written consent … prior to such disclosure(当該開示に先立って開示当事者から書面による明示的な同意を得ることなく)は: 情報開示という具体的な行動を起こす前のタイミングで、相手方から「書面」によるクリアな許諾を得ておかなければならないという先行義務を厳格に課す表現です。
- restrict access … solely to those employees who reasonably require(当該情報を必要とする従業員のみにアクセスを制限する)は: 秘密情報の漏洩リスクを最小限に抑えるため、社内であっても「業務上知る必要のある者(Need-to-Knowの原則)」だけに情報接触を制限する義務を受領当事者に課す実務的に不可欠な規定です。
- The Receiving Party shall not disclose(受領当事者は開示してはならない)は: 秘密情報の「受領側(Receiving Party)」に対して課される、第三者への無断開示を禁止する不作為の義務(禁止事項)を明確にする強い表現です。
- for the purpose hereof(本件の目的のために)は: 秘密情報を使用できる範囲を、本契約で合意された本来の取引目的や検討目的に限定し、受領当事者が勝手に他の用途(競合ビジネスへの流用など)に使用することを防ぐ限定フレーズです。