訳:
下請け義務継承条項、フローダウン条項
意味合い:
親契約(本体契約)で定められた義務や制限を、下請け契約(サブライセンス契約)に対してもそのまま引き継がせる(流し込む)ための条項です。
法的解釈(Legal Interpretation):
この条項の核心は、「義務の連鎖」にあります。親契約の当事者が負う義務を、下請け業者にも連帯して、あるいは同様に負わせることで、親契約の当事者が「下請けがやったことだから知らない」という言い逃れをできないようにし、また義務違反のリスクを回避する役割を果たします。
flow-down clauseとback-to-backの違い:
flow-downが「特定の義務を下位に流し込む条項そのもの」を指すのに対し、back-to-backは「親契約と下請け契約の内容が鏡合わせのように同一である」という契約全体の構造を指すことが多いです。
実務のヒント(Practical Tip):
なぜSubcontracting条項とIP条項に置かれるのか:
- Subcontracting(下請け): 受託者が秘密保持義務を負っていても、下請け業者がそれを知らずに漏洩させれば、受託者が責任を問われます。これを防ぐため、下請けにも同等の義務を課すフローダウンが必要です。
- Intellectual Property(知財): ライセンシーが第三者にサブライセンスを出す際、親契約の制限(転売禁止や改変禁止など)を下位に引き継がせないと、知財権者の権利が守られないため、同等の保護条項を置くことが必須となります。
用法:
主に、業務委託契約(Service Agreement)やライセンス契約(License Agreement)の下請け(Subcontracting)または知的財産権(Intellectual Property)条項で使用されます。
- (義務の継承):親契約の遵守事項を、下請け業者やサブライセンシーにも義務付ける際に使用されます。(Subcontractor Management Clause)
例文1(flow-down clause:フローダウン条項):
The Contractor shall ensure that all subcontracts entered into for the performance of this Agreement contain a flow-down clause requiring the subcontractor to comply with Article 9 (Confidentiality).
(日本語訳)
請負業者は、本契約の履行のために締結するすべての下請け契約に、当該下請け業者が第9条(秘密保持)を遵守することを義務付けるフローダウン条項(下請け義務継承条項)を盛り込むことを確実に行うものとする。
例文2(flow-down clause:保護条項の継承):
The Licensee shall ensure that any sublicense agreement contains provisions as protective of the Proprietary Rights as those set forth in this Agreement.
(日本語訳)
ライセンシーは、いかなるサブライセンス契約においても、本契約に定める規定と同程度に所有権を保護する条項を盛り込むことを確実に行うものとする。
例文の注記:
- ensure that:~であることを確実にする。単なる努力義務(best efforts)ではなく、結果責任を負うことを明確にするために、下請け管理の文脈で多用される強い義務表現です。
- as protective of … as:~と同程度に保護する。サブライセンス先でも本体契約と同等の権利保護水準を維持させるための実務的な制約表現であり、知財漏洩リスクを最小化する法的機能があります。