英文契約のLOIとMOUの違いとは?法的拘束力の例文と注意点を解説

英文契約の実務において、本格的な契約を締結する前段階で交わされるLOI(意向表明書)MOU(基本合意書)

これら2つの違いや、法的拘束力の有無は、実務担当者が最も頭を悩ませるポイントです。

特に、将来的に「独占的供給契約(Exclusive Supply Agreement)」を結ぶことを前提とした交渉では、これらが重要な役割を果たします。

今回は、LOIとMOUの定義、実務上の注意点、そして法的拘束力をコントロールするための具体的な例文までをわかりやすく解説します。

1.LOIとMOUの基本:最終契約の「前段階」で交わされる書類の基本

LOI(Letter of Intent)とMOU(Memorandum of Understanding)は、どちらも「最終的な契約(Definitive Agreement)を結ぶ前の、現時点での合意事項」をまとめた書類です。

LOI(Letter of Intent):意向表明書

主に買い手側(または一方の当事者)が「私はこのような条件で契約したいと考えています」という意向を相手に伝えるために作成されます。

MOU(Memorandum of Understanding):基本合意書

両当事者が「現時点でここまで合意しました」という内容を確認し、署名し合う形式が一般的です。

MOUは、独占的な供給契約の交渉プロセスでは、以下のような目的で使用されます。

・交渉の真剣度を確認する

・将来の供給価格や販売地域などの主要条件を、早い段階で整理しておく

・他社との並行交渉を一時的にストップさせ、集中して協議できる環境を作る

通常、取引の検討が一定進み、本格的な詳細条件の交渉に入る直前のタイミングで締結されます。

LOI(意向表明書)とMOU(基本合意書)の違い・使い分け

LOI(意向表明書):

手紙の形式(レター形式)が多く、主に一方から他方へ送られます。

MOU(基本合意書):

契約書の形式が多く、双方が署名して取り交わします。

LOIとMOUの使い分け:

交渉の初期段階では「LOI」、ある程度条件が固まった中盤では「MOU」とされるのが一般的です。

 

比較項目 LOI(意向表明書) MOU(基本合意書)
正式名称 Letter of Intent Memorandum of
Understanding
主な形式 レター(手紙)形式が多い 契約書に近い形式が
多い
作成の主体 主に一方から他方へ
提示
双方が合意して作成
締結のタイミング 交渉の初期〜中盤 条件が固まってきた
中盤〜終盤
法的拘束力 原則なし(例外
あり)
原則なし(例外あり)
主な目的 交渉の意思表示・
条件の提示
現時点での合意事項
の確認

2.実務上の最重要ポイント:LOI/MOUの法的拘束力をコントロールする「例外条項」

LOIやMOUを作成する際、最も注意すべきなのが「法的拘束力(Legally Binding)」の扱いです。

(1)原則:LOIやMOUに「法的拘束力はない」

LOIやMOUは、あくまで「交渉のプロセス」であり、原則として将来の取引そのものを法的に義務付けるものではありません。

万が一、交渉が途中で決裂しても、相手に対して「なぜ契約してくれないのか」と損害賠償を求めることはできないのが基本的なルールです。

(2)例外:実務で必ず「法的拘束力を持たせるべき項目」

ただし、以下の項目については、交渉中の自社の利益を守るために「法的拘束力あり」とすることが実務上のセオリーです。

独占交渉権(Exclusivity)

交渉期間中、他社と同じような供給交渉をしないという約束

秘密保持義務(Confidentiality)

交渉を通じて知った情報を他人に漏らさないという約束

費用負担(Expenses)

交渉にかかる調査費用などをどちらが負担するかという約束

準拠法・管轄(Governing Law)

もしこのLOI上のトラブルが起きた際、どこの国の法律で解決するかという約束

(3)違反時のリスク

もし「独占交渉権」などの法的拘束力がある条項に違反し、こっそり他社と契約を結んでしまったような場合には、相手から損害賠償を請求されるなどの法的リスクが生じます。


3.LOI/MOUの実務で役立つ「英文例文」と日本語訳

独占的供給契約に向けたLOIやMOUにおいて、特に重要な条項の記載例を紹介します。

検索されやすい誠実交渉義務(Good Faith)独占交渉権(Exclusivity)の書き方を確認しておきましょう。

(1)誠実交渉義務(Good Faith)と将来の取引条件

最終契約ではないため、法的拘束力を否定しつつ、交渉の姿勢を定めるのがポイントです。

・例文:

The parties shall negotiate in good faith the definitive agreement, which is expected to include a minimum purchase quantity of 10,000 units per year.

(訳:両当事者は、年間10,000個の最低購入数量を含む予定の最終契約について、誠実に交渉(グッドフェイス)するものとする。)

(2)独占交渉権(Exclusivity):他社との交渉禁止

他社との同時並行での交渉を禁止する、実務上で最も法的拘束力を持たせるべき条項です。

・例文:

During the period of ninety (90) days from the date of this LOI, Vendor shall not, directly or indirectly, solicit or negotiate with any third party for the supply of the Products.

(訳:本LOIの日付から90日間、売主は、本製品の供給に関し、第三者に対して直接的または間接的に勧誘や交渉を行ってはならない。)

(3)法的拘束力の否定(Non-binding Clause)の宣言

どの条項に拘束力があり、どれに無いのかを明確に宣言し、法的リスクを回避します。

・例文:

Except for the provisions of Section X (Exclusivity) and Section Y (Confidentiality), this LOI is not intended to be legally binding and does not create any legal obligation.

(訳:第X条(独占交渉権)および第Y条(秘密保持)を除き、本LOIは法的拘束力を意図するものではなく、いかなる法的義務も創出しない。)

英文契約の交渉プロセス(LOI/MOU)と戦略的な合意のイメージ

4.スケジュールと最終契約までのプロセス

LOI/MOUを締結した後は、以下のような流れで最終的な「独占的供給契約(Exclusive Supply Agreement)」の締結を目指します。

ステップ1:LOI/MOUの締結

主要な条件の合意と、独占交渉期間のスタート

ステップ2:デューデリジェンス(詳細調査)

供給能力の確認、工場の視察、品質基準の協議など

ステップ3:最終契約(Definitive Agreement)のドラフト作成と交渉

LOIで合意した条件をもとに、詳細な権利義務を文書化する

ステップ4:最終契約の締結

最終契約(Definitive Agreement)に調印し、本格的な取引(供給)が開始される


英文契約の交渉において、LOI/MOUは「お互いの信頼関係を形にする第一歩」です。

法的拘束力の範囲を正しく理解し、重要なポイントを外さないように活用しましょう。


LOIやMOUは、契約全体の構成においては『頭書』の前の段階にあたります。

契約書そのものの全体像については、

こちらの英文契約書の構成(structure of contract )

をご覧ください


■ 英文契約の実務をより深く理解するための「関連条項」リンク集

LOI/MOUの段階から本格的な契約締結に至る過程で、あわせて確認しておくべき重要事項をまとめました。

【1. 秘密保持(NDA)】

交渉前段階で最も重要なのが情報保護です。

【vs 比較ミニコーナー:LOI/MOU vs NDA】

LOI/MOU: 取引の「内容や条件」を合意し、交渉を前進させるための書類

NDA: 取引に際して開示される「秘密情報」を守るための書類

※LOI/MOU自体に秘密保持条項を含めることもありますが、取引規模や重要性に応じて、独立したNDAを結ぶのが安全です。

解説:
Non-Disclosure Agreement(英文秘密保持契約)の解説

【2. 法的拘束力(Binding / Enforceable)】

LOI/MOUが契約として有効か、裁判で認められるかを判断するための基準です。

【vs 比較ミニコーナー:Binding vs Enforceable】

Binding: 契約内容に「縛られている」という合意の性質(拘束力がある)

Enforceable: 裁判所などで「強制執行できる」という権利の性質(法的に強制可能)

※LOI/MOUの内容が単なる「覚書」か、それとも「契約」として成立しているかを判断する際、この2つの視点が極めて重要になります。

解説:
bindingとenforceable|英文契約書の基本表現

【3. 誠実交渉義務(Good Faith)】

LOI/MOUの段階から、交渉相手とどのような姿勢で話し合うべきかについての解説です。

【vs 比較ミニコーナー:Good Faith vs Best Efforts】

Good Faith: 相手を裏切らない、嘘をつかない「誠実な」姿勢(義務の性質)

Best Efforts: 目的達成のために「考えうる最善の手段」を尽くす義務(努力のレベル)

※LOI/MOUにおいて「Good Faithでの交渉」が求められる場合、単なる話し合い以上の法的態度が期待されます。

解説:
good faithの意味と例文 | 英文契約書の基本表現

【4. 独占交渉権(Exclusivity)】

交渉期間中に、他の相手と契約を進めさせないための重要な取り決めです。

【vs 比較ミニコーナー:Exclusive vs Non-exclusive】

Exclusive: 一定期間、他の相手との交渉を「禁止する」独占的な状態

Non-exclusive: 複数の相手と同時に交渉することを「許容する」状態

※LOI/MOUにこの条項がある場合、その期間中は他社へのアプローチが制限されるため、期間設定や解除条件には特に注意が必要です。

解説:
exclusiveとnon-exclusiveの意味と例文

【5. 紛争解決のルール(Governing Law / Jurisdiction)】

万が一、LOI/MOUの解釈や交渉を巡ってトラブルになった際の基準についてです。

【vs 比較ミニコーナー:準拠法 vs 裁判管轄】

準拠法(Governing Law): 「どこの国の法律」に基づいて判断するか(ルールの指定)

裁判管轄(Jurisdiction): 「どこの国の裁判所」で争うか(場所の指定)

※特に海外企業とのLOI/MOUでは、たとえ法的拘束力が限定的であっても、準拠法と管轄だけは明確に定めておくことが実務上のリスク管理となります。

解説:
Governing Law(準拠法条項)とJurisdiction(裁判管轄条項)

【6. 取引完了の目標日(Closing Date)】

交渉の最終ゴールである、契約履行や取引完了の日程に関する解説です。

【vs 比較ミニコーナー:Closing Date vs Effective Date】

Closing Date: 取引そのものが「完了」し、目的物が移転する日(最終ゴール)

Effective Date: 契約そのものの「効力が生じる」日(スタート地点)

※LOI/MOUでは「ターゲットとなるClosing Date」を明記することが多く、そこから逆算して交渉スケジュールを組むのが一般的です。

解説:
ClosingとClosing Dateの意味と例文

【7. 交渉の終了・打ち切り(Termination)】

本契約に至らなかった場合や、交渉を中止する際の手続きについてです。

【vs 比較ミニコーナー:Termination vs Expiration】

Termination: 途中で意思表示によって「解除・打ち切り」にすること(能動的な終了)

Expiration: 期間が満了して「期限切れ」になること(自然な終了)

※LOI/MOUでは「〇月〇日までに本契約が締結されない場合は自動的に終了する」という規定や、いつでも通知によって打ち切れる規定を置くことが一般的です。

解説:
Termination(契約解除条項)のポイント



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