Termination(契約解除条項)

英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)

英文契約書の 一般条項であるTermination(契約解除条項)コモンローとの関係について解説します。いくつかの例文に、要点と対訳と語注をつけました。

目次
1.解説:
1)Termination(契約解除条項)とは
2)Termination(契約解除条項)のパターン
3)Termination(契約解除条項)行使の際の注意点と解除後の効果
2.例文と基本表現:

 

1.解説:

1)Termination(契約解除条項)とは

Termination(契約解除条項)とは

Termination(契約解除条項)とは、

契約上の重大な違反や基本的な違反がある場合に、契約解除となる事由を挙げてどのような事由・条件があるときに、契約に基づく義務を停止させて当事者間の契約関係を終了できるかについての手続き

を定めた条項のことをいいます。

Termination(契約解除条項)とコモンロー(英米法)

英文契約書のTermination(契約解除条項)は、コモンロー(英米法)の原則がベースにあります。

コモンロー(英米法)では、当事者の間に契約の重大な違反や基本的な違反があったとき、契約関係を終了させることができます。

コモンロー(英米法)とは

世界各国の法体系は、大陸法コモンローに区分されます。

コモンローとは、英国、米国、カナダなどが採用する判例法を基本とする英米法のことです。

これに対して、ドイツやフランスなどが採用する大陸法は、成文法を起源とします。

(ご参考):

*コモンローについては、remedy at law(コモンローによる救済)とremedy in equity (エクイティによる救済)でも解説しています。

2)Termination(契約解除条項)のパターン

①Termination(契約解除条項)のパターン

Termination(契約解除条項)で定められる内容には、さまざまなパターンがあります。

たとえば、以下のようなものです。

(a) 通知により解除できるもの

(b) 違反により解除できるもの

(c) 破産により解除できるもの

(d) 当事者の支配権(オーナーシップ)の変更により解除できるもの

(e) 特定の条件の発生により解除できるもの(例えば、優先する他の契約の終了など)

Termination(契約解除条項)のその他パターン

さらに、契約解除の条件として:

・当事者の双方に適用させるのか、一方当事者のみに適用するか、

・条件をさらに追加して厳しくするか、それとも限定して弱くするか、

などのパターンもあります。

Termination(契約解除条項)の例文について

以下の Termination(契約解除条項)の例文 ①~③は、いずれも契約当事者の双方について、解除権があるパターンとなっています。

例文①と例文③は、重大な違反があり、通知後一定期間内に是正されない場合に、解除できるものです。

例文②は、列挙した解除事由のいずれかに該当した場合に、通知して解除できるものです。

3)Termination(契約解除条項)行使の際の注意点と解除後の効果

Termination(契約解除)は、契約関係を終了させる強力な手段ですが、その行使には慎重さが求められます。

解除条項の内容を理解するだけでなく、実際に解除を行う際の実務的な注意点と、解除によって生じる効果についても理解しておくことが重要です。

解除権の慎重な行使(誤った解除のリスク)

契約違反があったとしても、安易に解除権を行使することは避けるべきです。

・解除事由の慎重な判断:

契約書に定められた解除事由に厳密に合致しているかを慎重に確認する必要があります。

例えば、「重大な違反(material breach)」とされている場合、その「重大性」の判断は法的に難しい場合があります。

もし、解除事由に該当しないのに契約を解除してしまった場合、逆に自社が契約違反(不当な解除)を問われ、損害賠償を請求されるリスクがあります。

・通知と是正期間の遵守:

解除に際して「書面による通知」や「是正期間(cure period)」が定められている場合は、これらの手続きを厳密に遵守しなければなりません。

通知が不十分だったり、是正期間を与えなかったりすると、解除が無効とみなされる可能性があります。

・証拠の確保:

解除事由となった相手方の契約違反や、通知の送付、是正期間の経過などを証明できる証拠(メール、記録など)を確実に保管しておくことが重要です。

解除後の効果と残存義務(Survival条項との連携)

契約が解除されたからといって、当事者間のすべての義務が消滅するわけではありません。

解除はあくまで契約関係の将来に向かっての終了を意味し、解除までに発生した権利義務や、特定の義務は解除後も存続します。

・損害賠償義務:

契約違反による解除の場合、違反当事者は相手方に対して損害賠償責任を負うのが一般的です。

契約解除によって、この損害賠償請求権が消滅するわけではありません

・Survival(存続)条項の確認:

契約解除後も効力を持ち続ける義務(例:秘密保持義務、知的財産権の利用制限、保証責任、紛争解決条項など)は、Survival(存続)条項に明確に規定されます。

解除を行う前に、このSurvival条項の内容を必ず確認し、自社が解除後も負うべき義務や、相手方に課される義務を把握しておく必要があります。

この確認を怠ると、予期せぬ法的責任を負ったり、重要な権利を失ったりするリスクがあります。

・原状回復義務:

契約によっては、解除後に支払い済みの対価の返還や、引き渡した物品の返却など、原状回復に関する義務が発生することもあります。

Termination条項は、あくまで契約を終わらせるためのルールですが、その裏には多くの法的・実務的リスクが潜んでいます。

これらの注意点を事前に把握し、適切に対応することが、ビジネスを守る上で非常に重要となります。

2.例文と基本表現:

(注):基本表現をハイライトし語注を付けています。

1)Termination (契約解除条項)の例文①

双方に解除権あり。重大な違反があり、通知後、一定期間内に是正されない場合に、解除できます。

This Agreement may be terminated by a party which is not in material breach hereunder, by written notice to the other party, following the occurrence of any material breach by such other Party of any material provision of this Agreement, which material breach is (if capable of being cured) not cured within thirty (30) days after receipt of such notice.  

(訳):

本契約は、本契約の重要な条項について(是正可能な)重大な違反が発生した後重大な違反をしていない当事者は、本契約に基づき、他の当事者への書面通知を行った後、当該通知の受領後30日以内に是正されない場合に、解除することができる

(注):

may be terminatedは、解除することができるという意味です。terminateは、(契約を)解除するという意味で使われます。

*material breach は、重大な契約違反を意味します。詳しくは、material breachとは|英文契約書の基本表現をご覧ください。

*hereunderは、本契約に基づきという意味です。詳しくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。

*following the occurrence ofは、~が発生した後という意味です。

*any material provision of this Agreementは、本契約の重要な条項という意味です。

*curedは、是正されるという意味です。詳しくは、cureの意味と例文をご覧ください。 

2) Termination (契約解除条項)の例文②

双方に解除権あり。列挙した解除事由のいずれかに該当した場合に、通知して解除できます。

Either Party to this Agreement may terminate this Agreement by written notice to the other Party if, and only if, such other Party (a) becomes insolvent, (b) makes a general assignment for the benefit of creditors, (c) suffers or permits the appointment of a receiver for its business or assets, (d) becomes subject as the debtor to any proceeding under any bankruptcy or insolvency Law, whether domestic or foreign, and such proceeding is not dismissed with prejudice within sixty (60) days after filing, or (e) commences liquidation or dissolution proceedings, voluntarily or otherwise.

(訳):

本契約のいずれかの当事者は、相手方の当事者が、(a)支払不能になった場合、(b)債権者の利益のため一括譲渡を行った場合、(c)その事業又は資産の管財人の任命を受ける若しくは許可する場合(d)国内又は外国を問わず、破産法に基づく手続き債務者としての対象となり、その手続きが、申請後60日以内に請求棄却されない場合 、e)自発的又はその他の方法で清算若しくは解散手続きを開始した場合、にのみに限り、相手方への書面通知により、本契約を解除することができる。

(注):

*Either Partyは、いずれかの当事者という意味です。

*the other Partyは、相手方の当事者という意味です。

*becomes insolventは、支払不能になるという意味です。

*makes a general assignment for the benefit of creditorsは、債権者の利益のため一括譲渡を行うという意味です。債権者への債務の弁済のために債務者の財産をtrustee(受託者)に譲渡する米国破産法の手続きです。

*receiverは、ここでは、管財人という意味です。

*becomes subject as the debtorは、債務者としての対象となるという意味です。

*any proceeding under any bankruptcy or insolvency Lawは、破産法に基づく手続きという意味です。

*dismissed with prejudiceは、少しとっつきにくい表現ですが、請求棄却されるという意味です。米国の民事訴訟で使われる表現です。

*filingは、日常的には書類のファイリングのことですが、ここでは(破産手続きの)申請という意味です。

*commences liquidation or dissolution proceedingsは、清算若しくは解散手続きを開始するという意味です。proceedingsについては、詳しくは、proceedingsの意味と例文をご覧ください。

*or otherwiseは、又はその他の方法でという意味です。詳しくは、or otherwiseの意味と例文をご覧ください。 

3)Termination (契約解除条項)の例文③

双方に解除権あり。重大な違反又は機密保持違反による重大な悪影響のおそれがあり、通知後、一定期間内に是正されない場合に、解除できます。

This Agreement may be terminated by either Party immediately upon notice to the other Party if such other Party commits a material breach of any of the material provisions of this Agreement, and such breach is not cured within thirty (30) days after written notice of such breach is received from the non-breaching Party, except that the time period shall be fourteen (14) days for breaches in respect of Confidential Information that result or are reasonably likely to result in a material adverse effect on the non-breaching Party.

(訳):

本契約は、他の当事者が本契約のいずれかの重要な条項につき重大な違反を犯した場合、非違反当事者から当該違反の書面通知を受領してから30日以内に解消されない場合、機密情報に関する違反により非違反当事者重大な悪影響を及ぼす又は合理的にその可能性が高いときの期間は14日とする場合を除き、他の当事者への通知により直ちに解除することができる。

(注):

*immediately upon notice to the other Partyは、他の当事者への通知により直ちにという意味です。

commits a material breach of any of the material provisions of this Agreementは、(他の当事者が)本契約のいずれかの重要な条項につき重大な違反を犯すいう意味です。

*the non-breaching Partyは、非違反当事者という意味です。

the time periodは、期間という意味です。 

in respect of は、~に関するという意味です。同じ意味をもつ表現や用語は、以下のように数多くあり、これに置き換えて使うこともできます。

・with respect to

・respecting

・concerning

・relating to

・regarding

*result or are reasonably likely to result in a material adverse effectは、result or are reasonably likely to result in(を及ぼす又は合理的にその可能性が高いa material adverse effect(重大な悪影響の組み合わせで、重大な悪影響を及ぼす又は合理的にその可能性が高いという意味です。 

 

英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。

納品後1年間は、契約締結が完了するまで追加費用なしで、サポートいたします。

お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。

ホームページ