トラブルになりやすい英文契約書の条項と修正例

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はじめに、

ビジネスにおいて、英文契約書は不可欠な存在です。しかし、その内容を十分に理解せずに契約を結んでしまうと、後に思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

この記事では、トラブルの原因となりやすい条項とその修正例を、例文で分かりやすく解説します。

(注):

よくあるケースについてポイントを分かりやすく解説しています。

実際の契約書に適用する際には、通常、個々の契約内容や状況に合わせて、詳細に検討することが必要となります。

目次:
トラブルの原因となりやすい条項とその修正例:
1)定義条項 (Definitions)
2)努力義務条項 (Best efforts)
3)不可抗力条項 (Force majeure)
4)支払い条件の条項(Payment Terms)
5)損害賠償条項 (Damages)
6)機密保持条項 (Confidentiality)
7)契約解除条項 (Termination)
8)知的財産権条項 (Intellectual property rights)
9)準拠法条項 (Governing Law)
10)紛争解決条項 (Dispute Resolution)

 

トラブルの原因となりやすい条項とその修正例:

1)定義条項 (Definitions)

定義条項 (Definitions)とは、

契約の解釈に食い違いがないように用語の意味を定義する条文です。

修正前の条文:

“Product” shall mean any goods or services provided by Seller to Buyer.

(訳):

「製品」とは、売主が買主に提供する全ての商品またはサービスを意味する。

問題点:

用語の定義が曖昧で、解釈の相違が生じる可能性がある。

修正しない場合の潜在的リスク:

「製品」の範囲が不明確なため、供給すべき製品の範囲や、保証・責任の対象が曖昧になり、後々「どの製品が契約に含まれるか」で争いが生じ、追加コストや訴訟のリスクにつながります。

対応:

定義をできるだけ具体的にし、曖昧な表現を避ける。

修正によるメリット:

定義を明確にすることで、契約内容の解釈のブレがなくなり、将来の紛争リスクを大幅に低減し、取引の透明性が確保されます。

修正後の条文:

“Product” shall mean the goods or services specified in the attached Schedule A.

(訳):

「製品」とは、別紙Aに記載された商品またはサービスを意味する。

2)努力義務条項 (Best efforts)

努力義務条項 (Best efforts)とは、

契約履行のため当事者が最善の努力をすることを規定する条文です。

修正前の条文:

Seller shall use its best efforts to deliver the Products on time.

(訳):

売主は、製品を期日通りに納入するために最善の努力をする。

問題点:

「最善の努力」という表現が曖昧。

修正しない場合の潜在的リスク:

「最善の努力」は客観的な基準がなく、義務を果たさなかった場合に「努力はした」と主張されるなど、責任追及が困難になります。これにより、期待通りの成果が得られず、ビジネス上の損失を招く可能性があります。

対応:

「最善の努力」を「商業的に合理的な努力」に置き換えることで、より客観的な評価ができるようにする。

修正によるメリット:

「商業的に合理的な努力」にすることで、業界慣行や一般的なビジネス基準に基づいて義務の履行を評価でき、法的責任の範囲が明確になり、より実効性のある義務となります。

修正後の条文:

Seller shall use commercially reasonable efforts to deliver the Products on time.

(訳):

売主は、商業的に合理的な範囲で、製品を期日通りに納入するために努力する

3)不可抗力条項 (Force majeure)

不可抗力条項 (Force majeure)とは、

不可抗力により契約履行が不可能となった当事者が免責されることを規定する条文です。

修正前の条文:

Neither party shall be liable for any delay or failure to perform any of its obligations under this Agreement due to any cause beyond its reasonable control.

(訳):

いずれの当事者も、その合理的な支配の範囲外の事由により本契約上の義務の履行が遅延または不能になった場合には、その責任を負わない。

問題点:

不可抗力の範囲が明確でない。

修正しない場合の潜在的リスク:

不可抗力の範囲が不明確なままだと、予期せぬ事態が発生した際に「それは不可抗力なのか?」という解釈をめぐる争いが生じ、契約履行の免責が得られない、あるいは過剰な免責を許すなど、予期せぬリスクを抱える可能性があります。

対応:

不可抗力の範囲を具体的に列挙する

修正によるメリット:

具体的な事由を列挙することで、どのような事態であれば免責されるのかが明確になり、両当事者間のリスク配分が透明化され、予測可能性が高まります。

修正後の条文:

Neither party shall be liable for any delay or failure to perform any of its obligations under this Agreement due to any event beyond its reasonable control, including but not limited to, acts of God, war, terrorism, and natural disasters.

(訳):

いずれの当事者も、天災、戦争、テロ、自然災害など、その合理的な支配の範囲外の事由により本契約上の義務の履行が遅延または不能になった場合には、その責任を負わない。

4)支払い条件の条項(Payment Terms)

支払い条件の条項(Payment Terms)とは、

代金支払い条件について規定する条文です。

修正前の条文:

Buyer shall pay Seller the purchase price within 30 days of invoice date.

(訳):

買主は、請求書の日付から30日以内に売主に対し購入代金を支払う。

問題点:

支払い遅延時の対応が欠けている。

修正しない場合の潜在的リスク:

支払い遅延時のペナルティがないと、買主側にとって遅延しても大きな不利益がないため、支払いが滞る可能性が高まります。これにより、売主側のキャッシュフローが悪化し、資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。

対応:

支払い遅延時のペナルティを盛り込む。

修正によるメリット:

遅延利息などを設けることで、買主側の支払いインセンティブが高まり、遅延リスクが低減します。万一遅延した場合でも、売主側の損失を一部補填できる仕組みが構築されます。

修正後の条文:

Buyer shall pay Seller the purchase price within 30 days of invoice date. In the event of late payment, Buyer shall pay interest on the overdue amount at the rate of 15 percent per annum from the due date until payment in full.

(訳):

買主は、請求書の日付から30日以内に売主に対し購入代金を支払う。支払い遅延の場合、買主は、支払期日から完済時まで、年15%の割合で延滞利息を支払う。

5)損害賠償条項 (Damages)

損害賠償条項 (Damages)とは、

当事者のどちらかに契約違反があった場合に損害賠償を請求できることを規定する条文です。

修正前の条文:

In the event of a breach of this Agreement, the non-breaching party shall be entitled to damages.

(訳):

本契約に違反した場合、非違反当事者は損害賠償を請求できる。

問題点:

損害賠償の範囲が不明確。

修正しない場合の潜在的リスク:

損害賠償の範囲が不明確なままだと、契約違反時に不当に広範囲な賠償請求(例:逸失利益などの間接損害)を受けるリスクや、逆に請求すべき損害をカバーできないリスクが生じます。これにより、予期せぬ巨額の賠償責任を負う可能性があります。

対応:

損害賠償の範囲を具体的に定める(直接損害、間接損害など)。

修正によるメリット:

賠償の範囲を直接損害に限定することで、当事者の賠償責任を予測可能にし、過度なリスクを回避できます。これにより、ビジネスの予見性が高まります。

修正後の条文:

In the event of a breach of this Agreement, the non-breaching party shall be entitled to recover all direct damages actually suffered as a result of such breach.

(訳):

本契約に違反した場合、非違反当事者は、その違反の結果として実際に被った直接的な損害をすべて賠償請求できる

6)機密保持条項 (Confidentiality)

機密保持条項 (Confidentiality)とは、

第三者に漏洩されると支障のある情報について機密に保持する義務を課すための条文です。

修正前の条文:

Buyer shall keep confidential all information disclosed by Seller.

(訳):

買主は、売主が開示した全ての情報を機密に保持する。

問題点:

機密情報とは何を指すのかが曖昧。

修正しない場合の潜在的リスク:

機密情報の定義が曖昧だと、開示した情報が安易に第三者に漏洩されるリスクがあり、企業の競争力やブランドイメージに深刻な損害を与える可能性があります。また、どの情報が保護対象なのか、後で争いになることがあります。

対応:

機密情報の定義を具体的に示す。

修正によるメリット:

機密情報の定義を明確にすることで、保護すべき情報が特定され、情報漏洩のリスクが低減します。これにより、両当事者間の情報の取り扱いに関する認識の齟齬を防ぎ、信頼関係を強化します。

修正後の条文:

Buyer shall keep confidential all information disclosed by Seller that is marked as “Confidential” or that should reasonably be understood to be confidential.

(訳):

買主は、売主が「機密」と表示した情報、または合理的に機密と認識されるべき情報を機密に保持する。

7)契約解除条項 (Termination)

契約解除条項 (Termination)とは、

契約解除の条件や手続きについて規定する条文です。

修正前の条文:

Either party may terminate this Agreement upon written notice to the other party.

(訳):

いずれの当事者も、相手方に対して書面で通知することにより、本契約を解除できる。

問題点:

契約解除の条件が欠けている。

修正しない場合の潜在的リスク:

解除条件が曖昧だと、相手方が一方的に契約を解除するリスクや、不当な解除に対して法的対抗措置が取りにくくなるリスクが生じます。これにより、ビジネス計画の破綻や、長期的な関係性への悪影響が懸念されます。

対応:

契約解除の条件を具体的に定める(重大な違反、是正期間など)

修正によるメリット:

解除条件を明確にすることで、契約の安定性が高まり、予期せぬ解除のリスクが軽減されます。また、重大な違反に対する是正期間を設けることで、関係修復の機会も与えられます。

修正後の条文:

Either party may terminate this Agreement for cause upon written notice to the other party, if the other party materially breaches this Agreement and fails to cure such breach within thirty (30) days after receipt of written notice.

(訳):

いずれの当事者も、相手方が本契約に重大な違反を行い、その違反を通知を受けてから30日以内に是正しない場合、書面で相手方に対して通知することにより、本契約を解除できる。

8)知的財産権条項 (Intellectual property rights)

知的財産権条項 (Intellectual property rights)とは、

知的財産権が当事者の誰に帰属するのかを規定する条文です。

修正前の条文:

All intellectual property rights arising out of or in connection with this Agreement shall belong to Seller.

(訳):

本契約からまたは本契約に関連して生じる全ての知的財産権は、売主に帰属する。

問題点:

売主のみに知的財産権が帰属し公平でない。

修正しない場合の潜在的リスク:

知的財産権の帰属が不明確だと、共同で開発した成果物の権利をめぐって将来的に大きな紛争が生じ、技術やビジネスの利用・収益化に支障をきたす可能性があります。

対応:

当事者双方の知的財産権の帰属を明確にする。

修正によるメリット:

貢献度に応じて知的財産権の帰属を明確にすることで、当事者間の権利関係が透明化し、紛争リスクが低減します。これにより、安心して共同開発や協業を進められます。

修正後の条文:

All intellectual property rights created or developed by Seller in the performance of this Agreement shall belong to Seller. All intellectual property rights created or developed by Buyer shall belong to Buyer.

(訳):

本契約の履行において売主が作成または開発した全ての知的財産権は、売主に帰属する。買主が作成または開発した全ての知的財産権は、買主に帰属する。

9)準拠法条項 (Governing Law)

準拠法条項 (Governing Law)とは、

契約の解釈の基準となる法律をどの国の法律にするのかについて規定する条文です。

修正前の条文:

条文そのものがない。

問題点:

準拠法が契約書に明記されていない。

修正しない場合の潜在的リスク:

準拠法が明記されていないと、紛争発生時にどの国の法律が適用されるかをめぐって大きな争いになり、解決までに時間と費用がかかります。また、自社にとって不利な国の法律が適用されるリスクもあります。

対応:

準拠法を明確にする。

修正によるメリット:

準拠法を明確にすることで、契約の解釈における法的安定性が確保され、将来の紛争解決の予測可能性が高まります。

修正後の条文:

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.

(訳):

本契約は日本国の法令に準拠し、解釈される。

10)紛争解決条項 (Dispute Resolution)

紛争解決条項 (Dispute Resolution)とは、

当事者間で紛争が生じた場合の紛争解決方法について規定する条文です。

修正前の条文:

条文そのものがない。

問題点:

紛争解決方法が契約書に明記されていない。

修正しない場合の潜在的リスク:

紛争解決方法が明記されていないと、紛争発生時にどの手続き(訴訟、仲裁など)を取るべきか、どこの国の裁判所が管轄となるかなどが不明確となり、解決までに時間と費用がかかります。また、自社にとって不利な場所での手続きを強いられるリスクもあります。

対応:

紛争解決方法を明確にする。

修正によるメリット:

準拠法を明確にすることで、契約の解釈における法的安定性が確保され、将来の紛争解決の予測可能性が高まります。

修正後の条文:

Any dispute arising out of or in connection with this Agreement shall be finally settled by arbitration in accordance with the Commercial Arbitration Rules of The Japan Commercial Arbitration Association.

(訳):

本契約からまたは本契約に関連して生じるいかなる紛争も、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従い、最終的に仲裁によって解決される。

 

 

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