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英文契約書で何かを列挙するときの表現であるincluding, but not limited toとincluding, without limitation について解説します。例文をとりあげ対訳をつけました。例文中の他の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)including, but not limited toとincluding, without limitationとは
including, but not limited to~は、
~を含むが、それらに限定されない
という意味です。
including, without limitation~も同様に、
~を含むが、それらに限定されない
という意味です。
2)including, but not limited toとincluding, without limitationの使い方
including, but not limited to~と
including, without limitation~
の二つの表現は、対象とする範囲について、具体例を例示する際に、
例示したものに限定させないで、その類似のものにも適用させる「例示列挙」
のために使われます。
英文契約書においては、
・責任制限条項(Limitation of Liability)
・不可抗力条項(Force Majeure)
などでよく使用されます。
なお、責任制限条項(Limitation of Liability)とは、
契約違反がおきた場合に、高額な賠償請求に備えるため、当事者が直面する賠償責任を制限する
ことを規定した契約条文です。
また、不可抗力条項(Force Majeure)とは、
当事者の責に帰せられない不可抗力の状況が起きた場合に、契約の履行が不可能となった当事者が免責される
ことを規定した契約条文です。
責任制限条項(Limitation of Liability)では、賠償責任の具体例を提示するのに
including, but not limited to~と
including, without limitation~
の表現が使われます。(例文①をご覧ください)
不可抗力条項(Force Majeure)では、不可抗力事由を提示するのに、
including, but not limited to~と
including, without limitation~の表現が使われます。(例文②をご覧ください)
3)「例示列挙」がもたらす注意点とリスク
including, but not limited to や including, without limitation は、契約書で具体例を挙げつつ、それらに限定しない「広がり」を持たせたいときに非常に便利な表現です。
しかし、この「広がり」が、時には注意すべきリスクにつながることもあります。
具体例を挙げる側(例:責任を制限したい売主、免責事由を広く捉えたい当事者など)にとっては、条項の適用範囲を広くできるため有利に働くことが多いです。
しかし、その具体例を受ける側(例:損害賠償を請求したい買主、免責される範囲を限定したい当事者など)にとっては、以下のような注意点とリスクがあります。
対象範囲の「不明確さ」が生むリスク:
この表現を使うと、契約書の条項がカバーする範囲が、具体的に例示されたもの以外にも広がる可能性があります。
これは、「どこまでが範囲に含まれるのか」という境界線が曖昧になることを意味します。
例えば、不可抗力条項で例示された事由以外にも、予期せぬ出来事が起こった場合に、それが「類似の原因」として不可抗力と認められるかどうか、争いになる可能性があります。
責任制限条項で例示された損害以外に、「これは果たして契約で制限された損害に含まれるのか?」 という疑問が生じ、解釈をめぐって紛争に発展するリスクがあります。
このように、意図的に「限定しない」ことで、将来の紛争時に「その事柄が条項の適用範囲に含まれるかどうか」をめぐって解釈の食い違いが生じ、時間や費用がかかる可能性があります。
予期せぬ責任や義務の発生:
特に義務や責任の範囲を定める条項でこの表現が使われる場合、例示された項目以外にも、予期せぬ責任や義務を負う可能性が生じます。
契約書に署名する際には、例示されたものだけでなく、「その類似のもの」として何が含まれうるのかを慎重に検討し、自社にとって不利益にならないかを確認することが重要です。
契約交渉におけるポイント:
この表現が使われている場合、契約の相手方としては、「例示されたもの以外にどのようなものが含まれる可能性があるのか」 を具体的に確認し、必要であれば、
範囲を限定するような修正、例えば、including, but not limited to, the following examples: (以下に挙げる例を含むが、それらに限定されない:)とした上で、極めて限定的な例を挙げる、など
を提案することも検討すべきです。
「例示列挙」は便利な表現ですが、その「限定しない」という特性が、同時に「不明確さ」と「予期せぬリスク」につながる可能性があることを理解し、契約締結時にはその影響を十分に考慮することが重要です。
2.例文と基本表現:
(注):including, but not limited to~は、青文字で示しています。
1)including, but not limited to~(~を含むが、それらに限定されない)の例文①:
損害賠償の責任制限条項(Limitation of Liability)からです。賠償責任の制限について、including, but not limited toを入れて例示列挙しています。
With the exception of liability relating to intellectual property, Seller shall not be liable to Buyer for any consequential or indirect damages that Buyer may suffer in relation to the Products, including, but not limited to, lost profits, lost revenues, lost business chance, loss of use of the Products, and loss of use of other products or facilities.
(訳):
知的財産権に関する責任を除き、売主は、買主に対し、製品に関連して買主が被る逸失利益、逸失収入、ビジネスチャンスに係る機会損失、製品の使用に係る損失、および他の製品または施設の使用に係る損失が含まれるが、それらに限定されない結果的または間接的な損害については、責任を負わない。
(注):
*With the exception of liability relating toは、With the exception of(~を除き)とliability(法的な責任)とrelating to(~に関連する)の組み合わせで、(知的財産権)に関する責任を除きという意味です。
*be liable toは、(買主)に対して責任を負うという意味です。
*consequential or indirect damagesは、結果的または間接的な損害という意味です。くわしくは、consequential damagesとpunitive damagesの意味と例文をご参考にしてください。
*sufferは、被るという意味です。
*in relation toは、(製品に)に関連してという意味です。
*lost profitsは、逸失利益という意味です。
2)including, but not limited to~(~を含むが、それらに限定されない)の例文②:
不可抗力条項(Force Majeure)からです。不可抗力事由について、including, but not limited toを入れて例示列挙しています。
Neither party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations hereunder or individual contracts due to the occurrence of any event beyond the reasonable control of such party or third parties employed by such party to render all or any part of Services, and affecting its/their performance, including, but not limited to, governmental regulations, orders, or guidance, act of God, war, warlike conditions, hostilities, civil commotion, riots, epidemics, fire, strikes, lockouts or any other similar cause or causes.
(訳):
いずれの当事者も、当該当事者またはサービスの全てもしくは一部を提供するために当該当事者に雇用された第三者の合理的な支配が及ばない事態、かつ当該当事者/第三者の履行に影響を与える事態の発生により、本契約または個別契約の履行を行うことができない場合は、いずれの当事者とも、他方の当事者に対して当該不履行について責任を負わない。上記の事態は、政府の規制、命令あるいは指導、自然災害、戦争、戦争と類似する状況、敵対行為、内乱、騒乱、疾病、火災、ストライキ、ロックアウトまたは他の類似の原因を含むが、それらに限定されない。
(注):
*failure to performは、履行を行うことができないという意味です。
*beyond the reasonable control ofは、~の合理的な支配が及ばないという意味です。くわしくは、beyond the reasonable control の意味と例文をご覧ください。
*render all or any part of Servicesは、サービスの全てもしくは一部を提供するという意味です。render(~を提供する)については、くわしくは、renderの意味と例文をご覧ください。
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