Indemnification(補償条項)

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英文契約書の General Provisions(一般条項)のひとつであるIndemnification(補償条項) について解説します。例文に要点と対訳と語注をつけました。

(目次)
1.解説:
 1)Indemnification(補償条項)とは
 2)三つのキーワード
 3)defend(防御する)について
 4)Indemnification (補償条項)のパターン
 5)Indemnification (補償条項)の範囲と責任制限の考慮
 6)warranty(保証)とindemnification(補償)の違い
2.例文と基本表現:
 1)例文① – 双方向の補償
 2)例文② – 一方向の補償
 3)例文③ – 一方向の補償
 4)例文④ – 防御(弁護)を含まない補償

1.解説:

1)Indemnification(補償条項)とは

Indemnification (補償条項)とは、

A(一方当事者)に契約違反や義務違反があり、

B(相手方当事者)が損害を被った場合に、AがBに損害を補うことを約束する、

つまり損害のリスクをAからBに移転させる

ことを目的とした契約条項です。

2)三つのキーワード:

Indemnification(補償)条項 では、

以下の三つのキーワードが登場します。

・defend(防御する)

・indemnify(補償する)

・hold harmless(免責する)

この三つのキーワードが、

A shall defend, indemnify and hold harmless B from and against C (Aが、BをCから防御し補償し免責するものとする)

の形式で表現されます。

防御し補償し免責するとは、

損害請求の訴訟から守り、損害の費用を補って、損害責任を負わせない

ということです。

そして、

Aに、補償の責任を負う側の当事者

Bに、補償を受け免責される側の当事者

Cに、補償の対象となる損害

がそれぞれ入ります。

3) defend(防御する)について:

Indemnification (補償条項) の役割のひとつに、

万が一第三者が訴訟を起こしてきた場合に、補償を受ける当事者を保護することがあります。 

defend(防御する、弁護する)という用語があると、

損害を発生させた当事者に、補償される当事者を訴訟から守る責任があることを意味します。 

ただし、一部の英文契約書には、補償する側の当事者の負担が重くなることを意図的に避けるため、

defend(防御する、弁護する)の用語を省いて、訴訟から自ら守ることを要求するものもあります。(下記の例文④のコンサルタント契約をご覧ください。)

4)Indemnification (補償条項)のパターン:

Indemnification (補償条項)には、いくつかのパターンがあります。

代表的なパターンが双方向の補償一方向の補償です。

双方向の補償では、契約違反の結果生じた損害について双方の当事者が相手方を補償します。(下記の例文①をご覧ください。)

一方向の補償では、一方当事者のみが補償する義務を負います。(下記の例文②例文③をご覧ください。

そして、前述の項目3)で解説した防御(弁護)を含まない補償です。(例文④をご覧ください。)

5)Indemnification (補償条項)の範囲と責任制限の考慮

補償条項は、当事者間でリスクを移転させる重要な条文ですが、その「範囲」をどこまで広げるか、また他の条項との「兼ね合い」をどう考えるかが、契約交渉における大きなポイントになります。

補償の範囲(対象となる損害の種類)

補償される損害は、通常、以下のようなものが含まれます。

Liabilities(責任):
 法的な義務や負債

Losses(損失):
 事業上の損失、売上減など

Damages(損害):
 実際に発生した損害(直接損害、間接損害、逸失利益など)

Costs/Expenses(費用・諸経費):
 訴訟費用、弁護士費用、調査費用など  

特に注意すべきは、「間接損害(Indirect Damages)」や「逸失利益(Lost Profits)」が補償の対象に含まれるかどうかです。

これらは金額が膨大になる可能性があるため、補償を負う側(補償当事者)としては、これらを除外したいと考えるのが一般的です(例:excluding indirect, consequential, or incidental damages or lost profits)。

一方、補償を受ける側(被補償当事者)は、これらを含めたいと考えるのが一般的です。

補償の例外(Exceptions to Indemnification)

補償義務が発生しない条件を定めることも一般的です。

例えば、以下のようなケースです。

補償を受ける側の過失(Gross Negligence or Willful Misconduct of Indemnified Party):
 損害が補償を受ける側の重大な過失や故意によって生じた場合です。

不適切な使用(Improper Use):
 製品やサービスが、契約で定められた方法以外で不適切に使用された場合です。

契約違反以外の事由(Causes other than Breach of Contract):
 契約違反以外の原因で生じた損害です。

これらの例外を明確にすることで、補償当事者の責任範囲を限定し、予期せぬリスクを避けることができます。

責任制限条項(Limitation of Liability)との関係

Indemnification条項は、損害を補償する責任を定めるものですが、多くの場合、英文契約書には別途「責任制限条項(Limitation of Liability Clause)」が置かれます。

責任制限条項は、契約違反などにより当事者が負う損害賠償の上限額を定めるものです。

【重要なポイント】

通常、補償条項による義務も、この責任制限条項の適用を受けます。

 つまり、いくら補償条項で「全損害を補償する」と定めていても、責任制限条項で「損害賠償の上限は契約金額の〇倍まで」と定められていれば、補償額もその上限に拘束されるのが一般的です。

しかし、例外的に、特定の補償(例:知的財産権侵害に対する補償など)については、責任制限条項の適用外とする場合もあります。

 これは、知的財産権侵害の場合、損害額が非常に大きくなる可能性があるため、上限を設けることが不適切と判断される場合があるためです。

このように、補償条項は単独で存在するのではなく、他の条項、特に責任制限条項と密接に関連しているため、これらを総合的に見て、自社にとってのリスクと義務のバランスを適切に評価することが非常に重要となります。

6) warranty(保証)とindemnification(補償)の違い

warranty(保証)indemnification(補償)の違いについて見てみましょう。

warranty(保証)の規定は、

目的物に「不具合が発生しない」ことを約束することであり、たとえば、売主と買主との間で目的物の売買が行われる売買契約販売店契約などに見られます。

これに対して、indemnification(補償)の規定は、

契約違反などにより被った損害に関して、その損害の費用を「補償する」約束であり、契約の種類に関わらず置かれる一般的な条文です。

(ご参考):

Warranty(保証)について、詳しくはWarranty(保証条項)をご覧ください。

2.例文と基本表現:

(注):defend, indemnify and hold harmless青文字で示しています。

(注):基本表現をハイライトし語注を付けています。

1) Indemnification(補償条項)の例文①:

表明・保証等の違反から生じる損害について、双方の当事者が相手方を補償する義務を負います。

Each party shall defend, indemnify and hold harmless the other party and such other party’s Affiliates, employees, officers, directors, and agents from and against any liabilities, losses, damages, costs or expenses (including, without limitation, reasonable attorneys’ fees) (collectively, “Losses”) resulting from or arising in connection with the breach by the indemnifying party of any of its representations, warranties, covenants or obligations contained in this Agreement.

(訳):

各当事者は、他の当事者、およびかかる他の当事者の関連会社、従業員、役員取締役または代理人を、補償当事者による本契約に記載された表明、保証、誓約または義務の違反に起因または関連して生じる責任、損失、損害、費用または諸経費(合理的な弁護士費用を含むがこれらに限定されない。)(以下、総称して「損失」という。から、相手方を防御し、補償し、免責するものとする。

(注):

青字部分(以下の例文②~例文④の青字部分も同じです)の “defend, indemnify and hold harmless from and against ~ “は、indemnification(補償条項)で使われる慣用表現で、「~からを防御し、補償し、免責する」という意味です。詳しくは、indemnify and hold harmlessの意味と例文をご覧ください。

*Affiliates, officers, directors, agentsは、それぞれ、関連会社役員取締役代理人という意味です。

*liabilities, losses, damages, costs or expensesは、責任、損失、損害、費用または諸経費という意味です。

liabilityresponsibilityの違いですが、liability (法的な)責任を、responsibility広い意味での責任を意味します。詳しくは、responsibilityとliability、obligationとdutyの意味と例文をご覧ください。

costs or expensesは、同義語を並べた強調表現として費用と訳すこともできます。

*including, without limitationは、を含むがこれらに限定されないという意味です。詳しくは、including, but not limited to/including, without limitationの意味と例文をご覧ください。

*collectivelyは、以下、総称して~というという意味です。詳しくは、collectivelyの意味と例文をご覧ください。

*resulting from or arising in connection withは、resulting from(~に起因する)or arising in connection with(または~に関連して生じる)の組み合わせで、に起因または関連して生じるという意味です。

arising in connection with(~に関連して生じる)については、arising out ofとarising fromの意味と例文をご参考にしてください。

the breachは、違反という意味です。他にも、同様の意味を持つviolation(違反)contravention(違反)もよく使われます。

*the indemnifying partyは、補償当事者という意味です。

*contained in this Agreementは、本契約に記載された、本契約のという意味です。containは、日常生活では含むという意味ですが、英文契約書では通常、記載するという意味で使われます。

2) Indemnification (補償条項)の例文

株式譲渡契約からです。表明・保証等の違反から生じる損失について、売主が買主を補償する義務を負います。(一方向の補償)

Seller shall defend, indemnify, and save and hold harmless Buyer, its members, managers, shareholders, officers, directors, employees and agents (the “Buyer Indemnified Parties”), from and against all Losses which arise directly or indirectly from or in connection with (i) any breach by Seller of any of Seller’s representations and warranties contained in this Agreement that survive the Closing or (ii) any breach of Seller’s covenants or agreements contained in this Agreement.

(訳):

売主は、(i)クロージング後も存続する本契約に含まれる売主の表明および保証に関する売主による違反、または(ii)本契約に含まれる売主の誓約または契約の違反から直接的もしくは間接的に、または関連して生じるすべての損失から、買主、その一員、管理者、株主、役員、取締役、従業員、および代理人(以下「免責される買主当事者」という。)を防御し、補償し、救済し、免責するものとする

(注):

*arise directly or indirectly from or in connection withは、から直接的もしくは間接的に、または関連して生じるという意味です。

*survive the Closingは、クロージング後も存続するという意味です。the Closingとは、資産譲渡契約などで、取引(資産の受け渡しと、代金の支払い)が完了することをいいます。the Closingについては、ClosingとClosing Dateの意味と例文をご覧ください

*covenantsは、誓約という意味です。詳しくは、covenantの意味と例文をご覧ください。

3) Indemnification(補償条項)の例文

ライセンス契約からです。表明・保証等の違反から生じる請求について、ライセンサーがライセンシーを補償する義務を負います。(一方向の補償)

Licensor shall defend, indemnify and hold harmless Licensee, its parent, affiliates, officers, directors, employees and agents (collectively, “Licensee Indemnified Parties”) from any Claims arising out of or in connection with: (i) any breach or violation of any representation or warranty by Licensor or any of its Affiliates; or (ii) any breach or violation of any law or regulation by Licensor or any of its Affiliates; or (iii) any breach by Licensor of any contractual obligation of Licensor to its Affiliates or to a third parties.

(訳):

ライセンサーは、ライセンシー、その親会社、関連会社、役員、取締役、従業員、および代理人(総称して「補償をうけるライセンシー当事者」という。)を、(i)ライセンサーもしくはその関連会社による表明もしくは保証の違反、または(ii)ライセンサーもしくはその関連会社による法律もしくは規制の違反、または(iii)ライセンサーの関連会社もしくは第三者に対するライセンサーの契約上の義務のライセンサーによる違反、 それぞれ起因または関連する 一切の請求から、防御し、補償し、免責するものとする。

(注):

*collectively ~ は、collectively referred to as ~の略で、総称して~というという意味です。詳しくは、collectivelyの意味と例文をご覧ください。

*arising out of or in connection with は、~に起因または関連するという意味です。

*any breach or violationは、同義語を並べた強調表現です。違反という意味です。

4)Indemnification (補償条項)の例文

コンサルタント契約からです。契約不履行から生じる損害等について、委託元の会社がコンサルタントを補償する義務を負います。防御(弁護)の義務は負いません。

The Company will indemnify and hold harmless Consultant from and against any loss, damage, liability, cost, suit, expense, assessment, interest or penalty, including, without limitation, reasonable attorneys’ fees and court costs resulting from the Company’s failure to comply with the terms of this Agreement.

(訳)

会社は、本契約の規定の会社の不履行に起因する損失、損害、責任、費用、訴訟、諸経費、査定、利子または罰金(合理的な弁護士費用および裁判費用を含むがこれらに限定されないから、コンサルタントを補償し免責するものとする。

(注):

*including, without limitationは、を含むがこれらに限定されないという意味です。

*the Company’s failure to comply with the terms of this Agreementは、the Company’s failure(会社が怠るto comply with (~を遵守することを)the terms of this Agreement(本契約の条件・規定の組み合わせで、本契約の規定の会社の不履行という意味です。


■ 補償請求の前提となる「通知(Notice)」の手続き:

第三者からの請求に基づき相手方に補償を求める際、いつまでに、どのような方法で通知すべきかは「通知条項」の定めに従う必要があります。通知の不備で補償が制限されるリスクを防ぐため、以下の基本ルールを確認しておきましょう。

解説記事:
Notice(通知条項)の解説と例文




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