No Third Party Beneficiary(第三者利益条項)

英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)

英文契約書の 一般条項であるNo Third Party Beneficiary(第三者利益条項)について解説します。いくつか代表的な例文をとりあげ要点と対訳をつけました。例文中の基本表現に注記を入れました。

1.解説:

1)No Third Party Beneficiaryとは

No Third Party Beneficiary(第三者利益条項)とは、

契約当事者のみに契約に基づく権利や利益がある

ことを規定する条文です。

契約当事者でない第三者(=Third Party)が受益者的(=Beneficiary)な立場から、権利を主張することはできない

ということです。

Beneficiary は、受益者という意味です。

契約の締結によって、契約の当事者でない第三者のために何らかの権利や利益を創設したり付与したりするものではないことを明確にする

ことを狙いとしています。

この条項をいれておかないと、

契約の中で、たとえば、第三者に対して契約当事者が何らかの行為を行うことの記載がある場合に、

その第三者(=契約当事者でない)から契約に基づいて履行の請求がされた場合に、その第三者は履行の請求をする権利がないことを契約当事者が主張できない可能性

があります。

*第三者(=Third Partyについて、くわしくは、third party(第三者)の解説と例文をご覧ください。

2)No Third Party Beneficiary(第三者利益条項)の内容

No Third Party Beneficiary(第三者利益条項)で定められる内容には、いくつかのパターンがあります。

以下は、その一例です。

第三者のための利益付与はないことのみを明らかにしたもの。(次のパートの例文①をご覧ください )

利益を受けない第三者とは誰なのかを明らかにしたもの。(例文②をご覧ください)

利益を受ける第三者とは誰なのか明らかにしたもの。(例文③をご覧ください)

3.No Third Party Beneficiaryにおける実務上の重要点と交渉の視点

No Third Party Beneficiary(第三者利益条項)は、英文契約書の「一般条項」としてしばしば見過ごされがちですが、契約の法的安定性当事者間のリスク管理において非常に重要な役割を果たします。

この条項の有無や表現方法によっては、予期せぬ第三者からのクレームや訴訟に巻き込まれるリスクが生じる可能性があります。

ア.条項の目的と重要性

この条項の主な目的は、契約の「プライバシー(privity of contract)」原則を明確に再確認することにあります。

契約は、それを締結した当事者間でのみ効力を持ち、原則として第三者に対して直接的な権利や義務を生じさせないという考え方です。

予期せぬ請求の防止:

契約書に特定の第三者への言及がある場合、その第三者が「自分は契約から利益を受けるべきだ」と主張し、直接契約当事者に対して履行を請求したり、損害賠償を求めたりする可能性があります。

No Third Party Beneficiary条項は、このような予期せぬ法的請求から契約当事者を保護するために不可欠です。

例えば、下請け契約において、元請けと下請けが締結した契約書に発注者の名前が記載されていたとしても、この条項があれば、発注者が直接下請けに契約上の履行を請求することはできません。

請求は元請けを通じて行われることになります。

訴訟リスクの軽減:

第三者からの請求リスクを排除することで、潜在的な紛争の範囲を限定し、契約当事者が法的防御に費やす時間とコストを削減することに貢献します。

契約関係の明確化:

誰が契約上の義務を負い、誰が契約上の権利を持つのかを明確にすることで、契約関係の混乱を防ぎます。

イ.例外と意図された第三者受益者

「No Third Party Beneficiary」条項は一般原則を定めるものですが、意図的に第三者に利益を付与したいケースも存在します。

その場合、この条項は適切に修正されるか、例外が明記される必要があります。

明示的な例外規定:

例えば、M&A契約における買収後の特定の人々(例:買収対象会社の取締役や従業員)に対する補償義務や、関連会社(affiliates)への利益付与など、特定の第三者に契約上の権利や利益を意図的に与える場合は、その第三者の氏名またはグループを具体的に記載し、「本条(第三者利益条項)の定めにかかわらず」といった形で明確な例外を設ける必要があります(例文③参照)。

「successors and permitted assigns(承継人および認められた譲受人)」:

例文③にあるように、契約当事者の「承継人(successors)」や「認められた譲受人(permitted assigns)」は、通常、第三者受益者の範囲からは除外されます。

これは、契約関係が引き継がれる当事者として位置づけられるためです。

保険契約:

第三者利益条項の例外として最も典型的な例の一つは保険契約です。

生命保険や損害保険では、契約者と保険会社の間で締結される契約であっても、受取人(Beneficiary)として指定された第三者が直接保険金請求権を持つことが意図されています。

ウ.実務上の確認ポイントと交渉の視点

契約交渉においては、自社がどのような立場にあるか(契約当事者として保護されたいか、特定の第三者に利益を与えたいか)によって、この条項へのアプローチが変わります。

自社が契約当事者の場合(第三者からの請求を避けたい):

一般的なNo Third Party Beneficiary条項を必ず含めるようにします(例文①のようなシンプルなものでも効果があります)。

契約書中に、特定の第三者に関する記述がある場合(例:「ABC社は、XYZ社に本製品を販売することができる」など)、その記述が第三者に直接的な権利を与えるものではないことを明確にするため、第三者利益条項の文言をより詳細にする(例文②のような具体例を列挙するなど)ことを検討します。

自社が第三者として契約から利益を受けたい場合:

No Third Party Beneficiary条項が契約書に含まれている場合、その条項が適用されないよう、自社を明示的な例外として追加するよう交渉します。

例えば、「本契約の第X条に定めるDEF社は、本契約の目的のために、第三者受益者とみなされるものとする」といった文言を盛り込むことを検討します。これは、契約当事者間の合意によってのみ可能です。

不明確な記述を避ける:

契約書中で、特定の第三者に対して「義務を負う」「便益を提供する」といった曖昧な表現がある場合、No Third Party Beneficiary条項があったとしても、解釈によっては第三者受益とみなされるリスクが残ります。

そのため、そのような表現は避け、契約上の義務・権利はあくまで契約当事者間にのみ発生することを明確にする文言を用いるべきです。

No Third Party Beneficiary条項は、契約の基本原則を守り、不必要な法的リスクから当事者を守るための防波堤となるものです。

その意味と、例外が生じうる状況を理解し、適切な文言で契約書に盛り込むことが、法的安定性を確保する上で極めて重要です。

2.例文と基本表現:

(注):No Third Party Beneficiaryの関連表現は青文字で示し、その他の基本表現をハイライトしています。

1) No Third Party Beneficiary(第三者利益条項) の例文①

第三者の利益の創設を意図しないことを規定しています。シンプルな条文です。

No provision in this Agreement is intended or shall create any rights with respect to the subject matter of this Agreement in any third party. 

(訳):

本契約の規定は、本契約の主題に関する第三者に対する権利を意図し創設するものではない。

(注):

the subject matterは、主題という意味です。くわしくは、subject matterの意味と例文をご覧ください。

2) No Third Party Beneficiary(第三者利益条項) の例文②

利益を享受しない第三者とは誰なのかを具体的に列挙しています。

No provisions of this Agreement are intended, nor will be interpreted, to provide or create any third party beneficiary rights or other rights of any kind in any client, customer, affiliate, stockholder, member, or partner of any Party hereto or any other person or entity unless specifically provided otherwise herein, and, except as so provided, all provisions hereof will be personal solely between the Parties hereto. 

(訳):

本契約の条項は、本契約において別段の定めがない限り、および別段の定めがある場合を除き本契約のいかなる当事者のいかなる依頼人、顧客、関連会社、株主、メンバー、パートナー、または他の個人または法人に対し、一切の第三者受益権またはその他一切の権利を提供または創出すると意図され、または解釈されるものではなく、本契約のすべての規定は、本契約の当事者間でのみを対象とする。

(注):

*person or entity は、個人または法人という意味です。 くわしくは、entityとpersonの意味と例文をご覧ください。

unless specifically provided otherwise hereinは、本契約において別段の定めがない限りという意味です。

except as so providedは、別段の定めがある場合を除きという意味です。except as(~する場合を除いて)so provided(別段の定めがある)の組み合わせです。関連記事のexcept asとexcept as provided inの意味と例文をご参考にしてください。

be personal solely between the Parties heretoは、本契約の当事者間でのみを対象にという意味です。 

3) No Third Party Beneficiary(第三者利益条項) の例文③

契約の利益を享受する対象は誰なのかを挙げています。

The provisions of this Agreement are for the sole benefit of the Parties and their successors and permitted assigns, and they will not be construed as conferring any rights to any Third Party (including any third party beneficiary rights). 

(訳):

本契約の規定は、当事者、当事者の承継人および認められた譲受人に対する利益のみを対象としており、第三者第三者の受益者の権利を含む)に権利を付与するものとは解釈されない。

(注):

*for the sole benefit ofは、~に対する利益のみを対象としてという意味です。

their successorsは、当事者の承継人という意味です。

permitted assignsは、認められた譲受人という意味です。

conferring any rightsは、権利を付与するという意味です。

4) No Third Party Beneficiary(第三者利益条項) の例文④

No person not a party to this Agreement shall have or enjoy any rights hereunder and all third-party beneficiary rights are expressly negated. Without limiting the generality of the foregoing, no one other than Borrower shall have any rights to obtain or compel a disbursement of proceeds of the Loan hereunder. 

(訳):

本契約の当事者ではない者は、本契約に基づく権利を有したり享受したりすることはなく、第三者の受益者の権利はすべて明示的に無効となる上記の一般原則を制限することなく、借主以外の誰も、本契約に基づく貸付金の収益の支払いを取得または強制する権利を有しないものとする。

(注):

enjoyは、享受するという意味です。

negatedは、無効となるという意味です。

Without limiting the generality of the foregoingは、上記の一般原則を制限することなくという意味です。

*other thanは、以外のという意味です。

disbursementは、支払いという意味です。

 

 

英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。

納品後1年間は、契約締結が完了するまで、追加費用なしで、サポートいたします。

お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。

ホームページ