Survival(存続条項)

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英文契約書の 一般条項である Survival(存続条項)について、とりあげます。 いくつかの例文をとりあげて対訳と要点をつけました。例文中の基本表現に注記を入れました。

1.解説:

1) Survival(存続条項)とは

契約は終了した時点で、契約の条項はすべて効力がなくなるのが原則です。

しかし、契約が終了した後も、秘密保持義務などその効力を残しておいた方がよい条項があります。

これを規定するのが、Survival(存続条項)です。

すなわち、 Survival(存続条項)とは、

契約のどの条項が、契約の終了後や解除後も、効力を残しておくのかを明らかにする

ための契約条項です。

2) Survival(存続条項) の対象となる条項

Survival(存続条項) の対象となる条項は、代表的なものとして、以下のものがあります。

秘密保持義務(Confidentiality)

競業避止義務(Non-competition)
 同じ分野での競争行為を禁止することです。

勧誘の禁止(Non-solicitation)
 従業員の引き抜き禁止などです。

保証(Warranty)
 製品やサービスの保証期間が契約終了後も続く場合など。

補償義務(Indemnification): 
 契約期間中に発生した事由に関する賠償責任など。

責任制限(Limitation of Liability)
 補償義務や損害賠償額の上限設定など。

準拠法(Governing Law)
 契約解釈や紛争解決に適用される法律。

紛争解決(Dispute Resolution)
 訴訟管轄、仲裁条項など。

解除後の措置(Effect of Termination)
 たとえば、在庫品の処分、貸与品の返還、データ消去義務などです。

権利放棄の非効力(No Waiver)
 権利を行使しなかったことによる権利喪失の否定。

完全合意条項(Entire Agreement)
 契約書に記載された内容のみが有効な合意であることを確認。

3.Survival(存続条項)における実務上の留意点と重要な意義

Survival(存続条項)は、契約の「出口戦略」を規定する上で極めて重要な条項です。

この条項を適切に設計することは、契約終了後も企業が予期せぬ法的リスクに直面しないために不可欠であり、将来の紛争防止に大きく貢献します。

ア.なぜSurvival条項が必要なのか?

契約の終了と法的義務の継続:

原則として、契約が終了すれば、その契約に基づくすべての権利義務も消滅します。

しかし、ビジネスの実態を考えると、契約終了後も一定の義務や権利が継続しないと、一方の当事者が不利益を被ったり、秘密情報が漏洩したり、過去の行為に関する責任が追及できなくなったりするなど、看過できない問題が生じます。

Survival条項は、この「原則」の例外を明確に規定することで、契約終了後の法的安定性を確保します。

リスクヘッジの最後の砦:

特に、秘密保持義務、保証義務、補償義務、責任制限などは、契約期間中に発生した事象や交換された情報に関する将来のリスクを管理する上で不可欠です。

これらの条項が存続しない場合、契約終了後に発生した問題について、企業が無防備な状態に置かれることになります。

Survival条項は、これらのリスクに対する最後のセーフティネットとしての役割を担います。

イ.Survival条項の設計と交渉のポイント

存続させる条項の選択:
上記「2) Survival(存続条項)の対象となる条項」で挙げられた各条項は、その性質上、契約終了後も存続させるべき一般的なものです。

しかし、個々の契約の性質や当事者のビジネスモデルに応じて、存続させるべき条項を慎重に選択することが重要です。

例えば、共同開発契約であれば知的財産権の帰属に関する条項が特に重要になりますし、データ処理契約であればデータ消去や返還に関する条項が不可欠です。

存続期間の明確化:

存続させる条項ごとに具体的な存続期間(survival period)を明記することが不可欠です。

秘密保持義務:

情報の性質やライフサイクルに応じて、3年間、5年間、あるいは無期限とすることがあります。

特に営業秘密など、保護の必要性が高い情報は無期限とするよう交渉すべきです。

保証・補償義務:

通常、製品のライフサイクルやサービスの提供期間を考慮して設定されます。

製造物責任(product liability)などのリスクを考慮し、適切な期間を設定することが重要です。

その他:

準拠法や紛争解決条項などは、紛争が発生する可能性がなくなるまで、事実上無期限に存続させることが一般的です。

例文⑤のように、特定の請求に関する通知期限を設けることもあります。

表現のバリエーションと法的効果:

例文に見られるように、shall survive(存続する)という直接的な表現以外にも、shall expire X years after expiration(期間満了X年後に失効する)といった形で、存続期間を逆に「失効期限」として表現することもあります。

いずれの表現も、法的効果としては「契約終了後も当該条項が有効である」ことを示すものです。

競合する条項との整合性:

契約書全体において、Survival条項と矛盾するような他の終了関連条項(Effect of Terminationなど)がないか、整合性を確認する必要があります。

例えば、ある条項では「契約終了後すべての義務が消滅する」とあり、Survival条項では「秘密保持義務は存続する」とある場合、後者が優先される旨を明確にするなど、明示的な優先順位を定めることが望ましいです。

ウ.紛争回避のための周到な活用

「終わりの始まり」を明確に:

Survival条項は、契約関係の終わりが、必ずしも法的な関係の終わりではないことを明確にします。

これにより、契約終了後の当事者間の予期せぬ期待のずれや紛争を防ぐことができます。

潜在的リスクの可視化:

契約締結時にSurvival条項を検討することは、将来的にどのようなリスクが残り得るかを当事者双方が認識し、そのリスクをどのように管理するかを事前に合意する機会となります。

これは、デューデリジェンスの一部としても機能します。

Survival条項は、単なる形式的な文言ではなく、契約がその目的を終えた後も、企業が法的・ビジネス的な保護を受け続けるための重要な法的ツールです。

この条項の細部にまで目を配り、自社の利益とリスクを適切に反映させることで、予期せぬ損失を防ぎ、将来の法的安定性を確保することができます。

2.例文と基本表現:

(注):基本表現をハイライトしています。

1) Survival(存続条項)の例文①

秘密保持条項を3年間存続させています。

All covenants of confidentiality herein shall survive the term of this agreement by three (3) additional years counting from the date of termination of this Agreement.

(訳):

本契約のすべての守秘義務条項は、本契約の終了日からさらに3年間存続するものとする。

(注):

*covenantsは、(契約の)条項を意味します。

*surviveは、存続するという意味です。

terminationは、(契約の)終了という意味です

2) Survival(存続条項)の例文②

秘密情報の秘密保持、不開示、不使用を5年間存続させています。

All obligations of confidentiality, non-disclosure and non-use imposed upon the Parties under this Agreement shall expire five (5) years after the expirationof this Agreement.  

(訳):

本契約に基づき当事者に課せられた機密保持、非開示および不使用のすべての義務は、本契約の期間満了5年で失効するものとする。

(注):

*non-disclosureは、非開示という意味です。

*non-useは、不使用という意味です。

expirationは、(契約の)期間満了という意味です。

3) Survival(存続条項)の例文③

秘密保持義務、競業避止義務、契約解除後の措置を存続させています。

The parties’ obligations under section 6 [CONFIDENTIALITY OBLIGATIONS], section 9 [NON-COMPETITION OBLIGATION], and section 12 [EFFECT OF TERMINATION] will survive the EXPIRATION of this agreement.

(訳):

第6条 [守秘義務]、第9条 [競業避止義務]、および第12条 [契約終了の効果]に基づく当事者の義務は、本契約の期間満了後も存続する。

(注):

*NON-COMPETITION OBLIGATIONは、競業避止義務という意味です。詳しくは、Non-Competition(競業避止条項)|英文契約書の一般条項をご覧ください。

*EFFECT OF TERMINATIONは、契約終了の効果という意味です。詳しくは、Effects of Termination(契約終了の効果の条項)|英文契約書の一般条項をご覧ください。

4) Survival(存続条項)の例文④

競業避止義務のみを存続させています。

The non-compete provisions set forth in Section 6 shall survive termination of this Agreement.

(訳):

第6条に規定されている競業避止義務の規定は、本契約の終了後も存続するものとする。

(注):

*The non-compete provisionsは、競業避止義務の規定という意味です。

5) Survival(存続条項)の例文⑤

indemnification obligations(補償義務)を存続させています。    

The parties’ indemnification obligations under section 6 [INDEMNIFICATION ] will survive section 9 [TERMINATION] of this agreement with respect to any claims the indemnified party has notified the indemnifying party of before the termination of the survival period listed above.

(訳):

上記の存続期間の終了前に被補償当事者補償当事者に通知した請求に関して、第6条[補償]に基づく当事者の補償義務は、本契約の第9条[解除]の後も存続する。

(注):

*indemnification(補償)の詳細については、こちらをご覧ください。 英文契約書の一般条項と例文 - Indemnification(補償条項)

*the indemnified partyは、被補償当事者(補償される側)という意味です。

*the indemnifying partyは、補償当事者(補償する側)という意味です。


■ 存続対象として重要な「完全合意条項」の役割:

契約終了後も、過去の合意内容に縛られない(書面化された合意のみが有効である)状態を維持するために、存続対象に含まれる「完全合意条項」の基本を確認しましょう。

解説記事:
Entire Agreement Clause(完全合意条項)の基本と注意点


 

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