indemnify and hold harmlessの意味と例文

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英文契約書の補償条項で使われる基本表現であるindemnify and hold harmlessについて解説します。いくつかの例文に要点と対訳と語注をつけました。

1.解説:

1)indemnify and hold harmlessの意味と法的機能

indemnify and hold harmlessの表現は、

indemnify and hold harmless A from Bの形式で使われ、

(一方当事者に契約違反や義務違反があり、相手方当事者に損害を生じさせた場合に)

BからAを補償し免責する

という意味になります。

補償し免責するとは、

損害を補ってその損害の責任を負わせない、つまり損害を与えない

ということです。

indemnify and hold harmless A from B(BからAを補償し免責する)は、

以下のように表現されることもありますが、意味は同じです。

    • indemnify and hold harmless A against B
    • indemnify and hold harmless A from and against B

そして

Aに、補償を受け免責される相手方当事者

Bに、補償の対象となる損害

がそれぞれ入ります。

実務上、この2つの用語はセット(Doublet)で使われますが、厳密には以下のような法的機能の違いがあります。

    • Indemnify(補償する):
      相手方が被った金銭的損失を「払い戻す・補填する」という補償の義務を指します。

    • Hold harmless(免責する/害が及ばないようにする):
      相手方が責任を追及されないようにする、あるいは相手方に対する請求権を放棄するという、より広い「防御・免責」のニュアンスを含みます。

用語 主なニュアンスと法的機能
Indemnify 相手方が被った金銭的な損失を「補填する(払い戻す)」義務。主に「お金を払うこと」に焦点を当てた表現。
Hold harmless 相手方に損害が及ばないようにする(責任を免れさせる)義務。相手方に対する請求権の放棄や、防御を含む広い「解放」を指す。

【核心】
英米法の裁判例によっては、”Indemnify”は「金銭を支払う義務」のみを指し、”Hold harmless”は「そもそも責任が発生しない状態にする(将来的な請求を遮断する)」という意味を持つと解釈されることがあります。

そのため、補償を受ける側としては、両方を併記することで「支払」と「責任免除」の両面で保護を固めるのが通例です。

2)indemnify and hold harmless(補償し免責する)が使われる場面

indemnify and hold harmless(補償し免責する)は、英文契約書のIndemnification (補償条項)で使われます。

Indemnification (補償条項)とは、

一方当事者に契約違反や義務違反があり、

相手方当事者が損害を被った場合に、一方当事者相手方当事者に損害を補うことを約束する、

つまり損害が生じた場合のリスクを一方当事者から相手方当事者に移転させる

ことを目的とした契約条項です。

【実務対応】
補償条項は、通常の損害賠償(Damages)とは異なり、「因果関係の証明」のハードルが低いことが特徴です。

通常の損害賠償では「予見可能性」などが争点になりますが、補償条項(Indemnification)では「対象の事由が発生したか否か」で支払義務が生じるよう設計されることが多いため、補償する側にとっては非常に重い義務となります。

※「損害(damage/damages)」という用語自体の法的機能の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
👉英文契約のdamageとdamagesの違いとは?単数・複数の法的意味と例文を解説

英文契約の補償条項を象徴する、弓を引く像のイメージ
補償条項は、相手方からの請求や訴訟という『矢』から自社を守り、必要に応じて防御を担う役割を持ちます。

3)注意点と対応:範囲の画定

ここで注意したい点があります。

前の項目1)で述べた、

A補償を受け免責される当事者と、B補償の対象となる損害

のそれぞれの範囲がどこまで及ぶのかということです。

A補償を受け免責される当事者は、

『契約の相手方当事者』だけのこともあれば、

その範囲が『その従業員や役員、関連会社、株主、代理人、コンサルタント』

などにまで及ぶこともあります。

B補償の対象となる損害も、

文字通り『損害』だけのこともあれば、

『契約違反から生じる第三者からの訴訟を含めたあらゆる請求、責任、損害、損失、弁護士費用』

などと範囲を広げて規定されることもあります。

A補償を受け免責される当事者と、B補償の対象となる損害

のそれぞれの範囲が広い場合、

自社が補償を受ける当事者Aの立場であればよいのですが、

もし補償する側の当事者であれば、その責任の負担が大きくなり不利となります。

この場合は、以下の二通りの対応が考えられます。

①ひとつは、Aは相手方当事者のみ、Bは直接の損害のみ

にとどめるなどして、補償する範囲・責任をできるだけ限定するやり方があります。

②もうひとつは、自社のみが補償する義務を負う契約書になっている場合は、契約違反の結果生じた損害について、

双方の当事者が相手方を補償する内容に変更できないかを検討します。

Aの補償対象者と、Bの損害範囲の画定は、契約交渉における最大の焦点です。

    • A:補償対象者(Indemnitees)の範囲
      相手方が「関連会社、役員、従業員、代理人」まで広げてきた場合、自社(補償側)は「直接の契約当事者」のみに絞る交渉が必要です。

    • B:対象損害の範囲(Scope of Claims)
      特に「弁護士費用(Attorneys’ fees)」が含まれているか確認してください。英米法では原則として弁護士費用は自己負担ですが、補償条項に明記されると、相手方の弁護士費用まで全額負担するリスクが生じます。

2.例文と基本表現:

(注):indemnify and hold harmlessは、青文字で示しています。

(注):他の基本表現をハイライトし語注をつけています。

1) indemnify and hold harmless の例文①:

ライセンサーは、第三者の訴訟等で被るライセンシーの損害から、ライセンシーを補償します。

【核心:Defend(防御する)の役割】

この例文には “defend” が含まれています。これは、単にお金を払う(Indemnify)だけでなく、「訴訟そのものを引き取り、ライセンサー側の費用と責任で弁護士を雇って裁判を戦う」という義務を意味します。

実務上のリスク:
第三者から訴えられた際、自分たちで防御の主導権を握れないのは危険です。補償側(ライセンサー)は “defend” を条文に入れることで、自ら訴訟のコントロール権(弁護士の選定や和解の判断など)を確保しようとします。

Licensor will indemnify, defend, and hold harmless Licensee from and against any and all losses incurred by Licensee arising from any third-party action, suit, or claim that alleges the Licensed Software, or any use of the Licensed Software infringes any Intellectual Property Rights.

(訳):

ライセンサーは、ライセンスソフトウェアを主張する第三者の訴訟もしくは申し立てまたはライセンスソフトウェアの使用による知的財産権の侵害から生じて被るライセンシーのすべての損害から、ライセンシーを補償し防御し免責する。

(注):

この例文では、indemnify and hold harmlessdefend(防御する)の組み合わせになっています。

*any and allは、すべての、一切のという意味です。 

*arising fromは、から生じてという意味です。詳しくは、arising out ofとarising fromの意味と例文をご覧ください。

*action, suit,は、訴訟という意味です。類義語を並べた強調表現です。

*allegesは、~を主張するという意味です。詳しくは、allegeの意味と例文をご覧ください。

2) indemnify and hold harmless の例文②:

売主は、売主の表明・誓約の違反に起因した請求等から、買主を補償します。

【核心:表明保証違反との連動】

この条項は、Representations and Covenants(表明および誓約)の違反とリンクしています。つまり、「内容が正しいと約束したこと(表明)」が嘘だった場合に、この補償条項が発動します。

リスク管理: 表明保証の内容が広すぎると、意図せずこの重い補償義務を負うことになるため、表明保証自体の範囲を限定することが不可欠です。

Seller agrees to indemnify and hold Buyer harmless from any and all claims, damages and liabilities arising from Seller’s breach of its representations and/or covenants set forth herein.

(訳):

売主は、本契約に規定する売主の表明または誓約の違反に起因したすべての請求、損害および責任から、買主を補償し免責することに合意する。

(注):

*Seller’s breach of its representations and/or covenantsは、売主の表明または誓約の違反という意味です。

*set forth hereinは、本契約に規定するという意味です。

3) indemnify and hold harmless の例文③:

ベンダーは、第三者の知的財産権を侵害する旨の訴訟から、販売店を補償します。

Vendor will indemnify and hold Distributor harmless against any claim or legal action brought by a third party alleging that Distributor’s use or sale of the Products infringes the intellectual property or other proprietary rights of the third party.

(訳):

ベンダーは、販売店による製品の使用もしくは販売が、第三者の知的財産権もしくはその他財産権を侵害する、と主張する第三者による申し立てまたは法的措置から、販売店を補償し免責する。

(注):

*allegingは、~と主張するという意味です。

*intellectual property or other proprietary rightsは、知的財産権もしくはその他財産権という意味です。

 

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