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英文契約書で使われるin the absence ofの表現について解説します。例文に要点と対訳をつけ、例文中の他の基本表現に語注をつけました。
1.解説:
1)in the absence of とは
in the absence ofは、~がない場合、~がなければという意味です。
英文契約書の重要な場面で使われることが多い表現です。
通常、in the absence ofの後に、もし対象とする事柄がない場合に、当事者に
・どのような結果が生じるのか、あるいは、
・どのようなリスクを負うことになるのか、
などの内容が続きます。
たとえば、以下のようにです。(ハイライト部)
・代金支払い条件で:
『買主は、請求書の支払い条件に従って代金を支払う。 請求書に支払い条件の記載がない場合(in the absence of)、支払いの期限は、請求書の日付から20日以内とする』 (英文契約書の例文①をご覧ください)
・サービス会社の努力義務と免責で:
『サービス会社は、サービスの提供について最善の努力義務を負う。サービス会社に重大な過失がない場合(in the absence of)、サービス会社は責任を負わず、ベンダーは、サービスの提供に関わる一切の請求からサービス会社を免責する』(英文契約書の例文②をご覧ください)
このように、英文契約書にin the absence of~の表現が使われていた場合は、当事者の責任や義務に直接関わってくるので、注意して見ていく必要があります。
2)契約レビューの重要ポイント:「~がない場合」の解釈とリスク
in the absence of というフレーズは、特定の条件が満たされない場合のデフォルトのルールや例外的な状況を定める際に用いられ、契約におけるリスクの所在や義務の範囲に直接影響を与えます。
この表現を含む条項をレビューする際には、以下の点を細心の注意を払って確認することが不可欠です。
ア.「~がない場合」の対象の具体性と網羅性
なぜ問題になるのか?:
「何がない場合」に特定のルールが適用されるのかが不明確だと、意図しない解釈を招き、予期せぬ義務を負ったり、権利を失ったりするリスクがあります。
特に、in the absence of の後に続く事柄が、その契約において極めて重要なものである場合、その影響は甚大です。
確認すべきポイント:
対象の明確化:
例えば、「支払い条件」がない場合(例文①)や「不正または重大な過失」がない場合(例文②)のように、in the absence of の後に続く事柄が具体的かつ曖昧さなく定義されているかを確認しましょう。
「ない」ことの証明責任:
ある事柄が「ない」ことを主張する側(通常は、その事柄が「ない」場合に利益を得る側)に、その証明責任が課される可能性があります。
その際、「ないことの証明」は非常に困難な場合があるため、そのリスクも考慮に入れる必要があります。
イ.代替規定(Default Rule)の適切性
なぜ問題になるのか?:
in the absence of の後に続く代替規定(デフォルトのルール)が、自社の利益を適切に保護しているか、または不当な負担を課していないかを確認しないと、予期せぬ不利益を被る可能性があります。
確認すべきポイント:
支払い条件の場合(例文①):
「請求書に支払い条件の記載がない場合、支払いの期限は請求書の日付から20日以内とする」というデフォルトのルールが、自社のビジネス慣行やキャッシュフローと整合しているかを確認しましょう。
もし20日では短すぎる場合、in the absence of の後の期間を「30日以内」や「60日以内」など、自社にとってより有利な条件に修正交渉することを検討すべきです。
免責の場合(例文②):
「サービス会社に不正または重大な過失がない場合、サービス会社は責任を負わない」という規定は、サービス提供者側にとっては非常に有利な免責条項です。
サービスを受ける側(ベンダー)の場合、この「不正または重大な過失」という基準が妥当か、あるいは、より広い範囲での責任をサービス提供者に負わせるべきではないか(例:軽過失も含むか、特定の不具合に対する保証責任など)を検討する必要があります。
また、免責の対象となる請求や費用の範囲(any and all claims or charges)も確認し、自社の受ける保護が十分であるかを評価しましょう。
ウ.リスク配分への影響
なぜ問題になるのか?:
in the absence of を含む条項は、特定の状況下におけるリスクの配分を決定します。
その配分が自社にとって公平でない場合、将来的に不利益を被る可能性があります。
確認すべきポイント:
自社がリスクを負うケースの明確化:
in the absence of の条件が満たされない場合に、自社がどのような追加的な義務を負うのか、またはどのような権利を失うのかを具体的に理解しましょう。
交渉の機会:
もし、in the absence of の後の代替規定が自社にとって不利である場合、そのデフォルトルールを交渉によって変更できないかを検討すべきです。
例えば、特定の書類がない場合に罰則が科せられるのであれば、その書類を提出するための猶予期間を設ける、といった交渉が考えられます。
in the absence of は、契約書の「もし~でなければ」という条件分岐を明確にする重要なツールです。
この表現が使われている条項は、単なる補足規定ではなく、当事者の権利義務を根本的に左右する可能性があるため、その解釈と影響を慎重かつ戦略的に分析することが、契約リスク管理の鍵となります。
2.例文と基本表現:
(注):上記で解説したin the absence ofは青文字で示し、他の基本表現をハイライトしています。
1)in the absence of – 例文①
代金支払い条件からです。請求書に支払い条件の記載がない場合、支払い期限は、請求書の日付から20日以内です。
The Buyer shall pay all invoices in accordance with the payment conditions shown in the invoice. In the absence of such conditions, payment will be due within 20 days of the invoice date. The Buyer shall pay all amounts due under the purchase agreement in full and the Buyer shall not assert any credit, set-off or counterclaim on any grounds whatsoever and such amounts shall be paid in full through a transfer to the Seller’s bank or giro account.
(訳):
買主は、請求書に示された支払い条件に従ってすべての請求書を支払うものとする。 請求書に支払い条件の記載がない場合、支払いの期限は請求書の日付から20日以内とする。 買主は、購入契約に基づく金額を全額支払うものとし、買主は、いかなる理由であっても、払い戻し、相殺または反対請求を主張することはなく、当該金額を売主の銀行口座または郵便振替口座への送金により、全額支払うものとする。
(注):
*in accordance withは、に従ってという意味です。
*the payment conditionsは、支払い条件という意味です。
*dueは、(支払い)期限が到来するという意味です。詳しくは、due(支払い期限が到来する)の解説と例文をご覧ください。
*pay all amounts dueは、(支払い金額を)全額支払うという意味です。
*assert は、主張するという意味です。
*any credit, set-off or counterclaimは、払い戻し、相殺または反対請求という意味です。
*on any grounds whatsoeverは、いかなる理由であってもという意味です。whatsoever(いかなる~もない)で強調しています。whatsoever(いかなる~もない)については、詳しくは、whatsoeverの意味と例文をご覧ください。
2)in the absence of – 例文②
サービス会社の努力義務と免責の規定からです。サービス会社に重大な過失がない場合、サービス会社は責任を負わず、ベンダーは、サービスの提供に関する請求からサービス会社を免責します。
The Service Provider will use its best efforts, skill and experience in rendering the Services described in Section 4. However, in the absence of fraud or gross negligence on the part of the Service Provider or any of its officers or employees, neither the Service Provider nor any of its officers or employees shall be responsible for, and the Vendor will hold the Service Provider and such persons harmless against, any and all claims or charges relating to the performance of the Services hereunder.
(訳):
サービス会社は、第4条に記載されているサービスを提供するために最善の努力、技量および経験を行使するものとする。ただし、サービス会社、その役員または従業員に不正行為または重大な過失がない場合、サービス会社、その役員または従業員は責任を負わないものとし、ベンダーは、本契約に基づくサービスの履行に関連した一切の請求または費用から、サービス会社およびこれらの者を免責するものとする。
(注):
*use its best effortsは、最善の努力をを行使するという意味です。
*rendering the Servicesは、サービスを提供するという意味です。詳しくは、renderの意味と例文をご覧ください。
*officersは、役員という意味です。
*fraud or gross negligenceは、不正行為または重大な過失という意味です。
*hold~harmless against~は、~から~を免責するという意味です。
*any and allは、すべての、一切のという意味です。
*relating to the performance of the Servicesは、relating to(~に関連する)とthe performance of the Services(サービスの履行)の組み合わせで、サービスの履行に関連したという意味です。
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