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英文契約書で損害賠償に関する表現であるconsequential damagesとpunitive damagesについて解説します。例文に要点と対訳と語注をつけました。
1.解説:
1)consequential damageとは
当事者に契約上の義務違反があった場合に、損害を受けた当事者が受けることのできる救済策としての損害の賠償請求は、まずは、direct damages(直接損害賠償)の範囲です。
しかし、direct damages (直接損害賠償) を超えた損害が発生し、その損害の発生を証明できる場合、損害の賠償額が高額になる可能性があります。
・consequential damages:
consequential damagesとは、direct damages (直接損害賠償) を超えた損害賠償のことをいい、結果的損害賠償とか派生的損害賠償と呼ばれます。
なお、damageは単数形で損害ですが、
damagesで複数形になると損害賠償のことを意味します。
2)direct damages(直接損害賠償)を超える損害
direct damages(直接損害賠償)を超える損害賠償として、consequential damages(結果的損害賠償、派生的損害賠償)と並んで、以下のようなものがあります。
・indirect damages:
間接損害賠償と呼ばれます。
・special damages:
特別損害賠償と呼ばれます。
・incidental damages:
付随損害賠償と呼ばれます。
これらの損害については、損害の賠償請求が高額になることを防ぐため、Limitation of Liability(責任制限条項)において、
consequential damages(結果的損害賠償、派生的損害賠償)とともに排除されることが多くなります。
なお、Limitation of Liability(責任制限条項)とは、
契約違反がおきた場合に、高額な賠償請求に備えるため、当事者が直面する賠償責任を制限する
ことについて合意した契約条項です。
3)punitive damagesについて
懲罰的損害賠償のある米国で、下記に解説するpunitive damagesが裁判所から言い渡されることがあり、損害の賠償額が非常に高額になる可能性があります。
なお、懲罰的損害賠償とは、
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、裁判所の判断により、悪質な加害者の行為に対して、再発防止と懲罰の観点から実際に生じた損害に加えて制裁金を加算して損害賠償請求をする
ことをいいます。
・punitive damages:
懲罰的損害賠償と訳されます。exemplary damagesとも呼ばれます。
(ご参考):
下記の例文③の Limitation of Liability (責任制限条項) をご覧ください。 punitive damages(懲罰的損害賠償)も排除しています。
4)consequential damagesの使い方
これらconsequential damages等の損害賠償の表現は、上記2)で解説した
Limitation of Liability(責任制限条項)
で使われます。(以下の例文①から例文③をご参照ください)
5)損害賠償責任の範囲に関する実務上の注意点
consequential damagesやpunitive damagesは、契約違反が起きた際の経済的リスクを劇的に増大させる可能性があるため、Limitation of Liability(責任制限条項)においてその責任を免除・制限することが、実務上極めて重要です。
この条項の有無は、予期せぬ巨額の賠償請求から自社を守るための生命線となります。
ア. consequential damages の具体的な例とリスク
consequential damagesは、契約違反が「原因」となり、その結果として「派生的に」生じた損害です。
これは、契約書に明記されている履行義務そのものに直接関係しない、二次的・間接的な損害を指します。
具体的な例:
逸失利益(lost profits):
製品の供給遅延により、販売機会を失ったことによる利益の損失。
事業中断(business interruption):
システムの不具合により、顧客サービスが停止したことによる損失。
風評被害(loss of business reputation):
情報漏洩により、会社のブランド価値が損なわれたことによる損失。
これらの損害は、direct damages(直接損害)と比較して算定が困難であり、しばしば数百万、数千万ドルといった高額な賠償額となる可能性があります。
そのため、例文のようにlost profitsやbusiness interruptionといった具体的な項目を列挙し、責任範囲から除外することが一般的です。
イ. punitive damages の法的・実務的意味
punitive damages(懲罰的損害賠償)は、意図的、悪質な行為があった場合に裁判所の裁量で科されるものです。
その目的は、加害者への懲罰と、同様の行為の再発防止にあります。
日本法との違い:
日本法にはpunitive damagesの概念はなく、不法行為や債務不履行によって生じた実際の損害のみが賠償の対象となります。
米国法との関連:
米国法では、契約違反が不法行為に該当する場合(例:詐欺など)、punitive damagesが認められる可能性があります。
そのため、米国企業との取引においては、この項目を責任制限条項に含めることが不可欠です。
ウ.契約交渉におけるポイント
責任制限の明確化:
consequential damagesやpunitive damagesといった特定の損害項目を責任制限の対象として明確に列挙します。
これにより、解釈の余地をなくし、当事者の意図を法的に強固なものにします。
免責の対象と例外:
多くの場合、consequential damages等の免責は、「悪意や重大な過失、または秘密保持義務違反など、特定の重大な違反には適用されない」という例外が設けられます。
自社の交渉力に応じて、この例外の範囲を慎重に検討する必要があります。
Limitation of Liability条項は、契約で定めた義務を守れなかった場合の「保険」のような役割を果たします。
consequential damagesやpunitive damagesという用語を正しく理解し、自社のビジネスリスクに応じた適切な制限を設けることが、契約書作成・レビューの最も重要な作業の一つです。
2.例文と基本表現:
(注):consequential damages等は、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。
1)consequential damages(結果的損害、派生的損害) の例文 ①
Limitation of Liability (責任制限条項)からです。consequential damages等の損害賠償については、責任を負いません。
Neither party to this Agreement shall be liable for any consequential, indirect, special or incidental damages under any provision of this Agreement or for any consequential, indirect, penal, special or incidental damages arising out of any act or failure to act hereunder even if that party has been advised of or has foreseen the possibility of such damages.
(訳):
本契約のいずれの当事者も、本契約の条項に基づく結果的、間接的、特別もしくは付随的な損害賠償、または本契約に基づく作為または不作為に起因する結果的、間接的、刑事的、特別もしくは付随的な損害賠償について、当該当事者が、そのような損害賠償の可能性について通知されているか、予測していたとしても、責任を負わないものとする。
(注):
*liable forは、責任を負うという意味です。詳しくは、liable forの意味と例文をご覧ください。
*arising out of any act or failure to actは、arising out of(に起因する)とany act or failure to act(作為または不作為)で、作為または不作為に起因するという意味です。
*been advised of or has foreseenは、been advised of(通知されている)とhas foreseen(予測していた)で、通知されているか、予測していたという意味です。
2)consequential damages(結果的損害、派生的損害) の例文 ②
Limitation of Liability (責任制限条項)からです。consequential damages等の損害賠償については、責任を負いません。
NEITHER PARTY WILL BE LIABLE FOR ANY LOSS, INDIRECT, SPECIAL, CONSEQUENTIAL or INCIDENTAL DAMAGES OF ANY KIND (INCLUDING LOST PROFITS) REGARDLESS OF FORM OR THEORY OF LAW OR OTHERWISE EVEN IF IT HAS BEEN ADVISED OF THE POSSIBILITY.
(訳):
いずれの当事者も、法の形式または理論またはその他の形に関係なく、あらゆる種類の損失、間接損害賠償、特別損害賠償、結果損害賠償または付随的損害賠償(逸失利益を含む)について、その可能性が通知されている場合でも、責任を負わない。
(注):
*LOST PROFITSは、逸失利益という意味です。
*FORM OR THEORY OF LAWは、法の形式または理論という意味です。
*OR OTHERWISEは、またはその他の形(やり方)という意味です。詳しくは、or otherwiseの意味と例文をご覧ください。
3)consequential damages(結果的損害、派生的損害) の例文 ③
Limitation of Liability (責任制限条項)からです。consequential damages等に加え、punitive damage(懲罰的損害賠償)も責任を負いません。
The parties hereto expressly acknowledge and agree that no party hereto shall have any liability under any provision of this Agreement for any punitive, incidental, consequential, special or indirect damages, including business interruption, loss of future revenue, profits or income, or loss of business reputation or opportunity relating to the breach or alleged breach of this Agreement.
(訳):
本契約の当事者は、本契約の違反もしくは違反の申し立てに関連して、事業の中断、将来の収益、利益もしくは収入の損失、またはビジネス上の評判もしくは機会の損失を含む、懲罰的、付随的、結果的、特別または間接的な損害賠償賠償については、本契約の条項に基づく責任を負わないことを明示的に認識し合意する。
(注):
*expressly acknowledge and agreeは、明示的に認識し合意するという意味です。
*the breach or alleged breachは、違反もしくは違反の申し立てという意味です。 allegedについては、詳しくは、allegeの意味と例文をご覧ください。
■ 損害の範囲を制限する「責任制限条項」の実務解説
結果的損害(Consequential Damages)などの賠償リスクをどのように制限し、契約上の責任をコントロールするかについては、以下の詳細記事を参照してください。
解説記事:
責任制限条項(Limitation of Liability)のリスク管理
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