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英文契約書の条件に関する表現である subject to について解説します。 いくつかの例文をとりあげ訳をつけました。例文中の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1) subject toとは
subject to~は、契約に条件を付ける表現です。
~を条件として、~に従ってという意味です。
この表現が英文契約書で使われるときは、subject toの次に続いて記載される条件の部分が主題の前提や制約となるため、それが何なのか注意してみていく必要があります。
2) subject to ~を使った表現
subject to ~( ~を条件として、~に従って )は、以下のような表現形式で使われます:
・shall be subject to~:
~に従うという意味です。(下記の例文①をご覧ください)
・subject to the conditions that ~:
~を条件としてという意味です。(下記の例文②をご覧ください)
・subject to the terms and conditions of ~:
~の条件に従ってという意味です。(下記の例文③をご覧ください)
・subject to the provisions of ~:
~の規定に従うことを条件としてという意味です。
(下記の例文④をご覧ください)
・subject to the approval by (of)~:
~による承認を条件としてという意味です。
(下記の例文⑤をご覧ください)
・subject to the jurisdiction of ~:
~の裁判管轄権に服するという意味です。なお、裁判管轄権とは、紛争や訴訟について特定の裁判所が裁判をおこなうことのできる権限のことをいいます。(下記の例文⑥をご覧ください)
(ご参考):
英文契約書で条件を付ける表現は、他にも以下のようなものがあります。
・contingent upon~:
~を条件とする、~の条件付きという意味です。
例文については、contingent uponの意味と例文の記事をご覧ください。
・on the condition that~:
~を条件としてという意味です。
・on condition that~:
~という条件で、~を条件にという意味です。
on the condition thatとon condition thatの上記二つの表現の例文については、下記の記事をご覧ください。
on the condition thatとon condition thatの意味と例文
3)subject toが規定する「契約の優先順位」と
「リスク管理」
subject toという表現は、英文契約書において単に「~を条件として」という意味合いに留まらず、契約における条項間の「優先順位付け」や「適用範囲の限定」、そして「特定の条件が満たされない場合のリスク管理」 を行うための非常に強力な手段です。
この表現の有無や対象は、契約当事者の権利と義務、そして将来の法的紛争における責任の所在に直接影響します。
条項間の優先順位付けと適用範囲の限定:
「Subject to the provisions of this Agreement, …」(本契約の規定に従って、…)という形式(例文④)は、その後に続く記載が「本契約全体の他の規定によって制約される」ことを明確に示します。
これは、ある特定の条項の内容が、契約全体の原則や他の重要な条項に劣後する、あるいはそれらの影響を受けることを意味します。
例えば、秘密保持義務に関する条項が「本契約の規定に従って」と書かれている場合、その秘密保持義務は、契約全体の有効期間や解除条項などの影響を受けることになります。
これにより、条項間の矛盾を解消し、契約全体として整合性があるものにすることができます。
特定の事象を「条件」とするリスク管理:
「subject to the approval by Seller of Buyer’s financial condition」(買主の財務状況について売主による承認を条件とする、例文⑤)
のように、将来の特定の事象(承認、履行、確認など)を条件とすることで、その事象が満たされなければ、契約上の義務が発生しない、あるいは契約そのものが発効しないというリスク管理が可能です。
これは、特に取引の相手方の信用力や、第三者の許認可、あるいは特定の技術的要件の達成などが不確実な場合に、自身の義務を限定し、予期せぬリスクを回避するために用いられます。
契約当事者は、この条件がいつ、どのように満たされるのかを明確に理解しておく必要があります。
準拠法・管轄の明確化:
「This Agreement shall be subject to and construed in accordance with the laws of the State of California.」(本契約は、カリフォルニア州法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする、例文①)や
「shall be subject to the exclusive jurisdiction of the courts located within the State of New York.」(ニューヨーク州内の裁判所の専属管轄権に服することに同意する、例文⑥)
のように、準拠法や裁判管轄を規定する際に用いられるのは、契約の法的安定性を確保する上で最も基本的な使用例です。
これにより、契約の解釈や紛争解決の際に適用される法体系と裁判所が明確になり、国際取引における法的な予測可能性を高めます。
「責任の限定」と「義務の明確化」:
subject to の後に続く条件は、当事者が負う義務の範囲を限定したり、特定の免責事項を導入したりするためにも使われます。
例えば、提供される情報が特定の「条件」(例: 秘密保持、目的外利用禁止)に服する場合(例文②)、その条件が守られなければ、情報提供側の責任が免除されたり、情報受領側に義務違反の責任が生じたりします。
つまり、subject to は、契約当事者間の責任と義務の境界線を明確に引く役割を果たします。
ご覧いただいたように、subject to は、単なる修飾語ではなく、契約書全体の構造、当事者の権利義務、リスクの分配、そして紛争解決の仕組みに深く関わる、極めて戦略的な意味合いを持つ表現です。
契約を解釈する際や作成する際には、subject to の後に続く「条件」が何であるかを正確に把握し、それが全体に与える影響を慎重に評価することが極めて重要です。
2.例文と基本表現:
(注):subject to ~の関連表現は、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。
1)subject to – 例文①
shall be subject to~(~に従う)の例文です。
This Agreement shall be subject to and construed in accordance with the laws of the State of California.
(訳):
本契約は、カリフォルニア州法に準拠し、同法に従って解釈されるものとする。
(注):
*in accordance with the lawsは、~法に準拠してという意味です。
2)subject to – 例文②
subject to the conditions that ~(~を条件として)の例文です。
This report is made subject to the conditions that it is confidential and may not be disclosed in whole or in part to others without the written consent of the Company.
(訳):
本報告書は秘密情報であることを条件として作成されており、会社の書面による同意なしに、その全体又は一部を他者に開示することはできない。
(注):
*in whole or in partは、その全体又は一部という意味です。
3)subject to – 例文③
subject to the terms and conditions of ~(~の条件に従って)の例文です。
Subject to the terms and conditions of this Agreement the Licensor hereby grants to the Licensee and the Licensee hereby accepts an non-exclusive license to use the Inventions in connection with the Business in the Territory with effect from the date of this Agreement.
(訳):
本契約の条件に従って、本地域での事業に関連して発明を使用する非独占的なライセンスを、本契約の日付を以って、ライセンサーはライセンシーにここに付与し、ライセンシーはここにこれに同意する。
(注):
*herebyは、ここに(本契約により)という意味です。くわしくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
*grants to~an non-exclusive licenseは、非独占的なライセンスを~に付与するという意味です。
*in connection with the Businessは、事業に関連してという意味です
*with effect fromは、から有効なという意味ですが、意訳(を以って)しています。
4)subject to – 例文④
subject to the provisions of ~(~の規定に従うことを条件として)の例文です。
Subject to the provisions of this Agreement, neither Party shall directly or indirectly, use, publish, disseminate or otherwise disclose any Information obtained in connection with this Agreement without the prior written consent of the other Party.
(訳):
本契約の規定に従って、いずれの当事者も、他方当事者の事前の書面による同意なしに、本契約に関連して取得した情報を直接的又は間接的に使用、公開、配布、又はその他の方法で開示することはできない。
(注):
*disseminateは、配布するという意味です。
*or otherwiseは、又はその他の方法でという意味です。くわしくは、or otherwiseの意味と例文をご覧ください。
*without the prior written consentは、事前の書面による同意なしにという意味です。
5)subject to – 例文⑤
subject to the approval by (of)~(~による承認を条件として)の例文です。
This Agreement and all shipments made hereunder shall at all times be subject to the approval by Seller of Buyer’s financial condition.
(訳):
本契約及び本契約に基づき行われる出荷は、買主の財務状況について、常に売主による承認を条件とする。
(注):
6)subject to – 例文⑥
subject to the jurisdiction of ~(~の裁判管轄権に服する)の例文です。
The parties hereto agree that any matter or issues arising hereunder or any dispute hereunder shall be subject to the exclusive jurisdiction of the courts located within the State of New York.
(訳):
本契約の当事者は、本契約に基づき生じる事柄若しくは問題又は本契約に基づく紛争については、ニューヨーク州内の裁判所の専属管轄権に服することに同意する。
(注):
*any matter or issuesは、事柄若しくは問題という意味です
*arising hereunderは、本契約に基づき生じるという意味です。hereunderについては、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
*exclusive jurisdiction は、専属裁判管轄権を意味します。Jurisdiction(裁判管轄条項)をご参考にしてください。
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