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英文契約書で選択を表す表現であるat its optionとその他関連表現ついて、とりあげます。 併せて、例文をとりあげ対訳をつけました。例文中の他の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)at its optionとは
at its optionは、英文契約書で、
対象とするものやことがらを選択するときに使われる表現です。
at its optionは、
その選択で、随意に
と訳されます。(下記の例文①をご覧ください)
2)at its option(その選択で、随意に)の関連表現
関連表現として、以下のようなものがあります。
・at its discretion:
その裁量でという意味です。(下記の例文②をご覧ください)
・in its sole discretion:
その単独の裁量でという意味です。(下記の例文③をご覧ください)
3)契約レビューの重要ポイント:at its optionと
at its discretion条項の効果的な活用
at its option と at its discretion は、いずれかの当事者に特定の行動の選択権や判断権を与える点で共通していますが、そのニュアンスと法的な意味合いには重要な違いがあります。
これらの表現が契約書のどの条項で、誰に与えられているかを理解することは、契約当事者の権利と義務、そして将来のリスクを評価する上で不可欠です。
契約レビュー時には、以下の点を周到に検討し、自社の利益を最大限に保護しましょう。
ア.at its option:選択肢と権利の明確化
なぜ重要か?:
at its optionは、複数の具体的な選択肢の中から、権利を有する当事者がいずれかを選ぶことができるという「選択の自由」を強調します。
例文①のように、保証違反があった場合に「払い戻し返品」と「不良品の是正・交換」という明確な選択肢が与えられています。
確認すべきポイント:
選択肢の網羅性:
当事者に与えられた選択肢が、すべての可能性を網羅しているか、または自社の求める救済や行動が含まれているかを確認しましょう。
選択肢が限定的すぎると、将来的な対応の柔軟性が失われる可能性があります。
選択権を行使する条件:
選択権を行使するための条件(例:保証違反の発生、一定期間内の通知)が明確に規定されているかを確認しましょう。
他の権利の放棄の有無:
例文①のwithout waiving its right to damages(損害賠償の権利を放棄することなく)のように、選択権の行使が他の法的権利を放棄することにならないかを明確にすることが重要です。これにより、選択肢を行使しつつも、さらなる損害賠償請求の権利を留保できます。
相手方の義務:
選択権が行使された場合に、相手方(例:売主)が具体的にどのような義務を負うのか(例:速やかな是正、返金手配)が明確であるかを確認しましょう。
イ.at its discretion / in its sole discretion:裁量権の範囲と限界
なぜ重要か?:
at its discretion(その裁量で)および in its sole discretion(その単独の裁量で)は、特定の行動を実行するか否か、またはその方法について、当該当事者が広範な判断権を持つことを意味します。
特にin its sole discretionは、他の当事者の同意や合理性の検証を必要とせず、単独で判断できるという非常に強い権限を示すため、慎重な検討が必要です。
確認すべきポイント:
裁量権を与えられる当事者:
誰が、どのような行動について裁量権を持つのかを明確に理解しましょう。
自社が裁量権を持つ側であれば有利ですが、相手方が持つ場合は注意が必要です。
裁量権の行使条件:
裁量権を行使できる状況や条件が規定されているかを確認しましょう。
ただし、in its sole discretionの場合、条件が極めて限定的であるか、全くない場合があります。
裁量権の濫用に対する制限:
at its discretionであっても、「誠実かつ公正な行為(good faith and fair dealing)」の義務や、「合理性(reasonableness)」の基準によって、裁量権の行使が制限される場合があります(例文③のis reasonably necessaryのように)。
in its sole discretionであっても、全く無制限ではなく、法律上の制限(例:差別禁止)や、契約の目的・趣旨に反しない範囲での行使が求められることがあります。
相手方への影響:
相手方が裁量権を行使した場合に、自社がどのような影響を受ける可能性があるかを予測し、リスクを評価しましょう。
例えば、例文③のように、ウェブサイトのアクセス停止がin its sole discretionで行われる場合、ユーザー側は不利益を被る可能性があります。
自社が裁量権を与えられる側であれば、この表現を用いることでビジネス上の柔軟性を確保できますが、相手方に与える場合は、その行使が自社に不利益をもたらさないよう、範囲の限定や通知義務などの制限を交渉すべきです。
ウ.交渉の進め方
自社に有利な表現の活用:
自社が特定の状況で選択権や柔軟性を持ちたい場合は、at its optionやat its discretionを積極的に使用しましょう。
相手方の裁量権への制限:
相手方に強力な裁量権が与えられている場合、その範囲を限定する文言(例:「合理的に(reasonably)」「誠実に行動する(in good faith)」)を追加するよう交渉することが重要です。
また、相手方が裁量権を行使する際に、事前に通知する義務や、自社の同意を得る義務を課すことも検討できます。
明確性の追求:
いずれの表現を使用する場合でも、それが適用される具体的な状況、行使される行動、およびその結果が契約書上で明確に定義されていることを確認し、曖昧さを排除しましょう。
これらの表現は、契約当事者間の権力バランスを反映し、将来のビジネス上の意思決定に大きな影響を与えるため、その意味合いを深く理解し、契約交渉において効果的に活用することが不可欠です。
2.例文と基本表現:
(注):at its optionは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。
1)at its option(その選択で、随意に) – 例文①
保証違反が生じた場合、買主は、その選択で、払い戻し返品、または不良品の是正や交換を要求できます。
In the event of breach of warranty, Buyer may, at its option without waiving its right to damages, either return for credit or require prompt correction or replacement of the defective or nonconforming goods or services on terms satisfactory to Buyer.
(訳):
保証違反があった場合、買主は、損害賠償の権利を放棄することなく、その選択で、払い戻し返品ができ、又は買主の満足のいく条件で不良、不適合の製品・サービスの迅速な是正若しくは交換を要求できる。
(注):
*waiving its right~ は、~の権利を放棄するという意味です。
*return for creditは、払い戻し返品するという意味です。
2)at its discretion(その裁量で)- 例文②
一定以上の不良が見つかった場合、買主は、その裁量で、売主に対し、出荷全体またはロットの修理や交換を要求できます。
In the event that defective or non-complying Goods are found at a rate of 6% or more in a representative sample of a single shipment or lot of Goods received by the Buyer, the Buyer may at it’s discretion require the Seller to repair or replace the entire shipment or lot in accordance with the conditions outlined above.
(訳):
買主が受領した単一の出荷品若しくはロットの代表的なサンプルで不良品又は不適合品が6%以上の割合で見つかった場合、買主は、その裁量で、売主に対し、上記の条件に従って出荷全体又はロットの修理若しくは交換を要求することができる。
(注):
*a representative sample of a single shipment or lot of Goodsは、a representative sample(代表的なサンプル)とa single shipment or lot of Goods(単一の出荷品若しくはロット)で、単一の出荷品若しくはロットの代表的なサンプルという意味です。
*in accordance with the conditions outlined aboveは、上記の条件に従ってという意味です。
3)in its sole discretion(その単独の裁量で)- 例文③
会社は、必要な場合、その単独の裁量で、いつでもウェブサイトの停止または終了ができます。
The Company may temporarily suspend or terminate User’s access at any time if, in its sole discretion, such suspension or termination is reasonably necessary to protect the Website’s security or continued effective operation.
(訳):
会社は、ウェブサイトのセキュリティ又はその継続的且つ効果的な運用を保護するため、ユーザーのアクセスの一時的な停止又は終了が合理的に必要な場合、その単独の裁量で、いつでも当該停止又は終了を行うことができる。
(注):
*is reasonably necessaryは、合理的に必要なという意味です。くわしくは、reasonably necessary の意味と例文をご覧ください。
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