1.条項の目的
この条項は、売買契約などで商品の所有権の売主から買主への移転時期について定めるものです。
2.所有権とは
所有権とは、物を全面的に支配する権利です。その物を法令の範囲内で、自由に利用(使用、収益、処分)することのできる権利を意味します。(民法206条)
3.所有権の移転時期
所有権の移転時期については、民法の規定によれば、当事者の意思表示によって移転することを明らかにしています。(民法176条)
売主の「 売ります 」という意思表示と、買主の「買います」という意思表示の合致があれば、売主から買主に所有権が移転するのが原則です。すなわち、民法の規定によれば、売買契約を結んだ時点で、商品の所有権が買主に移転することになります。
そのため、売買契約書では、民法によらず、所有権の移転時期を明らかにする規定を入れているのが普通です。 民法の規定に従うと不都合が生じかねなので、きちんと契約で決めておくことをお勧めします。
所有権の移転時期については、一般的に、①引渡時、②検査合格時、③売買代金完済時があります。
売主に有利な所有権の移転時期は、売買代金完済時、検査合格時、引渡時の順となります。逆に買主に有利な順は、引渡し時、検査合格時、売買代金完済時となります。
3.条項の書き方
1)一般的なケース
一般的には、買主が検査を行って、合意した目的物に所有の意思を示した時、つまり検査合格時が妥当と思われます。
「 第○条 (所有権)
本件物品の所有権は、本件物品の乙の検査合格時に、甲から乙に移転する。 」
2)売主に有利にするためには
売主としては、できる限り遅い段階まで商品の所有権を持っていた方が有利となります。
以下の例では、売買代金完済時に所有権移転が行われるとしており、売主に有利な条項となります。
「第○条 (所有権)
本件物品の所有権は、本件物品の乙の売買代金完済時に、甲から乙に移転する。」
3)買主に有利にするためには
買主としては、できる限り早い段階で商品の所有権を取得した方が有利です。
「第○条 (所有権)
本件物品の所有権は、本件物品の乙への引渡時に、甲から乙に移転する。」