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英文契約書で使われる担保権に関連する用語であるlienについて、とりあげます。 併せて、lienがどのような場面で使われるかについて、例文を用意しました。例文中の他の基本表現には注釈をしています。
1.解説:
1)lienとは
lienは、日常生活では聞きなれない言葉ですが、英文契約書ではよく登場します。
lienは、英米法の担保権に由来する用語です。
留置権、先取特権、担保権の三つの意味があります。
そして狭義と広義の意味に分かれます。
狭義には、留置権または先取特権を意味します。
留置権とは、
他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有する場合に、その弁済を受けるまでは、その物を留置することができる権利
のことをいいます。
先取特権とは、
債権者の財産から他の債権者に先立って、優先的に自己の債権の弁済を受けることができる権利
のことをいいます。
広義には、lienは担保権を意味します。
*前述のとおり、lienは英米法の担保権に由来する用語であり、日本の民法上の意味と必ずしも一致しません。ご注意ください。
lienの留置権、先取特権、担保権の使い分けについては、下記の2)の使い方と例文のパートをご覧ください。
2)lien(留置権、先取特権、担保権)の使い方
①lien(留置権)の意味での使い方:
lien(留置権)の意味では、英文契約書の
などで使われます。
そして、多くは、
security interest(担保権)やencumbrance(負担)とセット
で使われます。
英文契約書の Title and Risk(所有権・危険負担の移転条項) でよくみられるのは、
『売主は、製品の所有権をlien(留置権)、security interest(担保権)、encumbrance(負担)が付着しない状態で、買主に引渡しをすることを保証する』
という内容です。(下記の例文①をご覧ください)
②lien(担保権、先取特権)の意味での使い方:
製品の所有権に関連して、lien(担保権、先取特権)の意味でも使われます。下記の例文②と例文③をご覧ください。
3)契約レビューの重要ポイント:lien条項の戦略的理解と
リスク管理
lien は、英米法に由来する担保権を指す用語であり、日本の民法上の「留置権」「先取特権」「担保権」と厳密には一致しないものの、これらに類似する概念として契約書に頻繁に登場します。
特に、動産・不動産の売買、融資契約、製造委託契約など、物の所有権や債権の回収が関係する取引では、lien条項の理解が極めて重要です。
契約レビュー時には、以下の点を戦略的に検討し、自社の権利保護とリスク管理を徹底しましょう。
ア.買主・債務者としての視点:free from any lienの確認
なぜ重要か?:
製品や資産を購入・取得する側(買主)にとって、引き渡される物がlien(担保権、留置権、先取特権など)が付着していない状態であることは、取引の安全性を確保する上で最も重要です。
もしlienが付着している状態で取得してしまうと、将来的に第三者からその物を差し押さえられたり、売却されたりするリスクを負うことになります。
確認すべきポイント:
所有権の完全性:
契約書において、売主が引き渡す物の所有権が「good and marketable title(有効かつ譲渡可能な所有権)であり、かつ「free from any security interest or other lien or encumbrance」(担保権、その他留置権または負担が付着しない状態 – 例文①)であることを表明(represent)し、保証(warrant)しているかを必ず確認しましょう。
買主の対抗手段:
もし売主がこの保証に違反し、後からlienが発覚した場合に、買主がどのような救済措置(例:損害賠償請求、契約解除、indemnification(補償)- 例文②)を講じられるかを明確にしておきましょう。
特に、indemnify and defend Buyer against claims or liens(買主の所有権に不利となる請求または担保権から買主を補償し防御する – 例文②)といった条項は、後々の紛争から買主を守るために非常に有効です。
対抗要件:
登記や登録など、lienの対抗要件に関する記載がある場合は、その手続きが適切に行われることを確認しましょう。
イ.売主・債権者としての視点:lienの確保と放棄
なぜ重要か?:
売主や債権者にとっては、代金債権や貸付債権の回収を確実にするため、あるいは特定の状況下でlienを放棄する必要がある場合があります。
確認すべきポイント:
担保権の設定:
もし売主が代金回収を目的として、引き渡す製品に所有権留保(security interestの一種として)を設定したい場合、その旨を明確に規定し、lienとして買い主に通知されるようにします。
この場合、買主は代金完済まで完全な所有権を得られないことになります。
lienの放棄(waive any lien):
特定の取引(例:買主の設備内で作業を行うサービス提供契約など)においては、作業者が自らの作業に起因する資材や修理代金に対するlien(メカニックズ・リーエンなど)を主張する権利を放棄(waive – 例文③)することが求められる場合があります。
これは、買主が第三者のlienによって自社の資産が拘束されるリスクを避けるためです。
・To the extent permitted by law(法律で許されている範囲内で – 例文③)という表現は、法的に放棄が認められる範囲内でのみlienを放棄するという限定を設けるもので、売主側にとって重要です。
lienの優先順位:
複数の債権者がいる場合、それぞれのlienの優先順位がどのように決定されるか(例:登記順位、法律による定め)を確認することも重要です。
特に融資契約などでは、債権者間の優先順位が詳細に規定されます。
ウ.共通の注意点:適用法との整合性
なぜ重要か?:
lienの概念や効力は、準拠法(Governing Law)に大きく依存します。
英米法圏内でも、州によってその扱いは異なる場合があります。
確認すべきポイント:
準拠法の確認:
契約書の準拠法条項を必ず確認し、その法域におけるlienに関する法制度を理解しておくことが不可欠です。
日本の民法上の概念と混同しないよう注意が必要です。
専門家への相談:
lienに関する条項は、法域によって解釈や実務が大きく異なるため、不明な点があれば、必ずその準拠法の専門家に相談するようにしましょう。
lien 条項のレビューは、潜在的な紛争リスクを回避し、自社の資産や債権を確実に保護するために極めて重要です。
単に用語の意味を理解するだけでなく、契約全体の文脈の中でその条項がどのような影響を及ぼすかを戦略的に分析する視点を持つことが、英文契約書を読み解く鍵となります。
2.例文と基本表現:
(注):上記で解説したlienは青文字で示し、他の基本表現をハイライトしています。
1)lien(留置権)– 例文①
留置権の例です。売主は、商品の所有権を、security interest(担保権)、lien(留置権)、encumbrance(負担)の付着なしで、買主に引渡しすることを保証します。
Seller represents and warrants to Buyer that the title conveyed on all Goods produced pursuant to any Order will be good and marketable, its transfer rightful, and the Goods will be delivered free from any security interest or other lien or encumbrance.
(訳):
売主は、買主に対し、注文に基づいて生産されたすべての商品の所有権が有効かつ譲渡可能なものであり、かかる譲渡が正当であり、商品が担保権、その他留置権又は負担が付着しない状態で引渡しされることを表明し保証する。
(注):
*represents and warrantsは、表明し保証するという意味です。くわしくは、represent and warrantの意味と例文をご覧ください。
*the titleは、所有権という意味です。
*conveyedは、直訳はconvey(譲渡する)ですが、意訳(訳はしていない)しています。
*pursuant toは、に基づいてという意味です。
*good and marketableは、有効かつ譲渡可能なという意味です。
*rightfulは、正当なという意味です。
*free fromは、~がないという意味ですが、意訳(が付着しない状態で)しています。
2)lien(担保権)– 例文②
担保権の例です。売主は、買主の所有権に不利となるlien(担保権)から買主を補償します。
Seller will indemnify and defend Buyer against claims or liens adverse to Buyer’s ownership of Buyer’s Property except those that result from the acts or omissions of Buyer.
(訳):
売主は、買主の作為または不作為に起因するものを除き、買主の所有権に不利となる請求または担保権から買主を補償し防御するものとする。
(注):
*indemnify and defend~against~は、~から~を補償し防御するという意味です。
*claimsは、請求という意味です。
*adverse toは、に不利な、に不利となるという意味です。
*the acts or omissionsは、作為または不作為という意味です。くわしくは、act or omissionの意味と例文をご覧ください。
3)lien(先取特権)– 例文③
先取特権の例です。売主は、買主の財産について、lien(先取特権)を放棄します。
To the extent permitted by law, Seller waives any lien or similar right it may have with respect to Buyer’s Property.
(訳):
法律で許されている範囲内で、売主は、買主の財産に関して先取特権または同様の権利を放棄する。
(注):
*To the extent permitted by lawは、法律で許されている範囲内でという意味です。
*waivesは、放棄するという意味です。
*with respect toは、に関してという意味です。
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