英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)
英文契約書で使われる用語のadverseとadverselyについて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳をつけました。例文中の基本表現に語注をつけました。
1.解説:
1)adverseとadverselyとは
adverseは、英文契約書では、通常、
(効果が)反対の、不利な
という意味で用いられます。
そして、adverselyは、
(効果が)反対に、不利に
という意味で使用されます。
2)adverseとadverselyを使った表現
以下は、英文契約書でよく使われるadverseとadverselyを使った表現です。
・adverse effect:悪影響
・material adverse effect:重大な悪影響*
・reflect adversely on:~に悪影響を及ぼす
*上記のmaterial adverse effect(重大な悪影響)は、Termination (契約解除条項)でよく用いられる表現です。
これら表現の使い方は、次の3)のadverseとadverselyの使い方で解説しています。
3)adverseとadverselyの使い方
以下のように使われます。(青字部分)
・Indemnification (補償条項)から
『売主は、買主の所有権に不利な(adverse)請求から、買主を補償する』(下記の例文②をご覧ください)
なお、Indemnification (補償条項)とは、
補償の対象となる当事者が損失を被った場合に、補償する側の当事者が損失に対する補償を約束することを定めた条文
のことをいいます。
・ライセンス契約から
『ライセンシーは、ライセンサーのビジネスに悪影響を及ぼす(reflect adversely on)方法でライセンス名を使用してはならない』
(下記の例文③をご覧ください)
なお、ライセンス契約とは、
特許発明、意匠、商標、ノウハウ、トレードシークレットなど、知的財産の利用を相手方に許諾する契約
のことをいいます。
・Termination (契約解除条項)から
『機密情報の違反で重大な悪影響(material adverse effect)があり是正されない場合、当事者に通知し、契約は直ちに終了する』
(下記の例文①をご覧ください)
なお、Termination(契約解除条項)とは、
契約上の重大な違反がある場合に、どのような条件があるときに、当事者間の契約関係を終了できるかについての手続きを定めた条文
のことをいいます。
4)Material Adverse Effect(MAE)の法的機能とM&A
における重要性
Material Adverse Effect(MAE)、すなわち「重大な悪影響」は、契約の「重大な違反」を判断する際の基準として極めて重要です。
単なるadverse effect(悪影響)ではなく、「material(重大な)」という修飾語が付くことで、法的に契約の維持が困難になるほどの深刻さを定義します。
ア. MAEの法的機能:契約継続の境界線
MAE条項の主な機能は、M&Aや長期契約の締結後、完了までの間に予期せぬ重大なリスクが発生した場合の「契約解除権」を定めることです。
重大性の基準:
裁判所では、MAEの発生を認定するために、「短期的な悪影響」ではなく、対象となる会社の財務状態、事業、または将来の見通しに「長期間にわたり重大な影響を及ぼす」事象である必要があると判断される傾向があります。
交渉上の役割:
買収契約(M&A)においては、MAEの定義は、買主(買い手)がクロージング前に取引を撤回できる最終的な防御線となります。
逆に、売主(売り手)は、このMAEの定義に「除外事由」(例:経済全体の悪化、特定の業界の悪化など)を加えて、契約解除のリスクを軽減しようとします。
イ. MAEが使われる主な場面
MAEは、当事者が予期せぬリスクから身を守るために、以下の条項で頻繁に使用されます。
Termination(契約解除条項):
MAEが発生した場合に、相手方に契約解除権を与える。(例文①)
Representations and Warranties(表明保証条項):
特定の事実(例:財務状況)が、MAEを引き起こす事象を伴っていないことを保証する。
Closing Conditions(クロージング条件):
クロージング(取引実行)までにMAEが発生していないことが、取引実行の前提条件とされる。
2.例文と基本表現:
(注):上記で解説したadverse、adverselyとその関連表現は青文字で示しています。
1)adverseとadversely – 例文①
Termination (契約解除条項)からです。当事者に重大違反があると、相手から書面通知後30日、機密情報の違反で重大な悪影響があるときは14日以内に是正されないと、契約は、当事者に通知し直ちに終了します。
This Agreement may be terminated by either Party immediately upon notice to the other Party if such other Party commits a material breach of any of the material provisions of this Agreement, and such breach is not cured within thirty (30) days after written notice of such breach is received from the non-breaching Party, except that the time period shall be fourteen (14) days for breaches in respect of Confidential Information that result or are reasonably likely to result in a material adverse effect on the non-breaching Party.
(訳):
本契約は、他の当事者が本契約のいずれかの重要な条項につき重大な違反を犯した場合、非違反当事者から当該違反の書面通知を受領してから30日以内に是正されない場合、機密情報に関する違反により非違反当事者に重大な悪影響を及ぼす又は合理的にその可能性が高いときは14日間とする場合を除き、他の当事者への通知により直ちに終了する。
(注):
*immediately upon notice to the other Partyは、他の当事者への通知により直ちにという意味です。
*commits a material breachは、重大な違反を犯すという意味です。
*the material provisionsは、重要な条項という意味です。
*cureは、是正するという意味です。詳しくは、cureの意味と例文をご覧ください。
*the non-breaching Partyは、非違反当事者という意味です。
*in respect ofは、~に関するという意味です。in respect ofと同様の意味を持つ表現に、
・with respect to
・respecting
・with regard to
・regarding
・pertaining to
・concerning
・in relation to
があります。これらは便利な表現なのでよく使われます。
*result or are reasonably likely to result in a material adverse effectは、重大な悪影響を及ぼす又は合理的にその可能性が高いという意味です。
2)adverseとadversely – 例文②
Indemnification (補償条項)からです。売主は、買主の所有権に不利な請求から、買主を補償するものとします。
Seller will indemnify and defend Buyer against claims or liens adverse to Buyer’s ownership of Buyer’s Property except those that result from the acts or omissions of Buyer.
(訳):
売主は、買主の作為または不作為に起因するものを除き、買主の所有権に不利な請求または担保権から買主を補償し防御するものとする。
(注):
*indemnify and defend~against~は、~から~を補償し防御するという意味です。
*liensは、英米法の担保権という意味です。詳しくは、lienの意味と例文をご覧ください。
*ownershipは、所有権という意味です。他にも、所有権を表す契約用語として、
・title
・proprietary right
があります。
*result fromは、~に起因するという意味です。result fromと同様の意味を持つ契約表現である、
・arising from(~に起因する)
・arising out of(~に起因する)
もよく使われます。
*the acts or omissionsは、作為または不作為という意味です。詳しくは、act or omissionの意味と例文をご覧ください。
3)adverseとadversely – 例文③
ライセンス契約からです。ライセンシーは、ライセンサーのビジネスに悪影響を及ぼすような方法でライセンス名を使用できません。
The Licensee shall not by any act or omission use the Licensed Name in any manner that disparages or reflects adversely on Licensor or its business or reputation.
(訳):
ライセンシーは、作為若しくは不作為によって、ライセンサー又はライセンサーのビジネス若しくは評判に傷をつけたり又は悪影響を及ぼすいかなる方法でもライセンス名を使用してはならない。
(注):
*by any act or omissionは、作為若しくは不作為によってという意味です。
*in any mannerは、いかなる方法でもという意味です。英文契約書では、権利や義務の範囲に漏れがないようにする表現が使われます。前述のby any act or omission(作為若しくは不作為によって)もそうです。
*disparagesは、~に傷をつけるという意味です。
*reflects adversely onは、~に悪影響を及ぼすという意味です。
英文契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。迅速かつ低料金で対応いたします。
お問合せ、見積りはお気軽にご相談ください。
受付時間: 月~金 10:00~18:00
メールでのお問合せは、こちらから。
ホームページ:宇尾野行政書士事務所
