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英文契約書で、関連会社と子会社を表す用語であるaffiliateとsubsidiaryについて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳と語注をつけました。
(目次)
1.解説:
1)affiliateとsubsidiaryとは
2)affiliateとsubsidiaryと定義条項
3)affiliateとsubsidiaryの使い方
4)affiliateとsubsidiary使用上の注意点とリスク
2.例文と基本表現:
1)affiliateとsubsidiary– 定義条項からの例文①
2)affiliateとsubsidiary– 定義条項からの例文②
3)affiliateとsubsidiary– 秘密保持条項からの例文③
1)affiliateとsubsidiaryとは
・affiliateとaffiliated company:
英文契約書では、affiliateとaffiliated companyは、通常、
関連会社の意味で使われます。
なお、affiliateは、法人でなく
個人の関係者を意味することもあります。
・subsidiary:
2)affiliateとsubsidiaryと定義条項
関連会社と子会社の定義・意味は、日本では会社法で定められています。
一方、英文契約書で使われるaffiliateとsubsidiaryの意味は、日本の会社法の関連会社と子会社の意味と必ずしも一致しません。
affiliateとsubsidiaryの定義は、その国の法律や会計基準等により異なります。
そのため、英文契約書では、affiliateとsubsidiaryの意味については、定義条項で明確にするのが一般的です。
(下記の英文契約書の例文①と例文②をご覧ください)
3)affiliateとsubsidiaryの使い方
affiliateとsubsidiaryの用語は、定義条項で意味を明確にした上で、さまざまな場面で広く使われます。
どのように使われているかについて、以下をご覧ください。
『』内がそれぞれの場面(契約条項)での使われ方です。分かりやすくするため、affiliateとsubsidiaryを青文字の関連会社で示しています。
(ご参考):
契約条項の下線をクリックすると、その条項の解説に飛びます。
『秘密情報の開示範囲は、知る必要のある当事者とその関連会社等に限定される。』(下記の英文契約書の例文③をご覧ください)
『当事者とその関連会社等の名前を公開してはならない。』
『合併等による関連会社等への譲渡を除き、権利の譲渡は禁止する。』
・No Third Party Beneficiary(第三者利益条項)で:
『契約上の権利や利益は当事者間のみが対象であり、関連会社を含めた第三者への利益の付与を意図しない。』
『従業員は、雇用期間中とその後の1年間、競合会社とその関連会社等のメンバーとして行動してはならない。』
・Limitation of Liability(責任制限条項)で:
『当事者とその関連会社は、間接損害の責任を負わない。』
『一方当事者は、契約違反により損失を生じさせた場合、相手方当事者と関連会社を補償する義務を負う。』
4)affiliateとsubsidiary使用上の注意点とリスク
上記で見てきたように、affiliateとsubsidiaryは、契約当事者の権利や義務に直接影響する重要な場面で幅広く使用されます。
そのため、affiliateとsubsidiaryの用語を使用する際には、その定義と適用範囲について、特に注意を払う必要があります。
(1)定義の曖昧さによるリスク
最も重要な注意点は、契約書内でこれらの用語の定義を明確にしないことによるリスクです。
定義が不明確な場合、以下のような問題が生じる可能性があります。
責任範囲の拡大・縮小:
予期せぬ範囲の関連会社や子会社が、契約上の義務や責任の対象となる、または対象外となる可能性があります。
例えば、ある義務が「当事者とそのaffiliate」に課される場合、そのaffiliateの定義が広範であれば、意図せず多くの企業がその義務を負うことになり、管理コストやリスクが増大します。
逆に、affiliateの定義が狭すぎると、本来責任を負わせたかった企業が対象外となり、損害が発生しても責任追及が難しくなることがあります。
秘密情報の不適切な開示:
秘密保持条項において、開示を許可するaffiliateの範囲が曖昧だと、意図しない企業に秘密情報が共有されてしまい、情報漏洩のリスクが高まる可能性があります。
契約違反のリスク:
競業避止条項や譲渡制限条項などでこれらの用語が使われる場合、自社のaffiliateの定義を誤って理解していると、知らず知らずのうちに契約に違反してしまう恐れがあります。
(2)異なる法域・会計基準とのずれ
affiliateやsubsidiaryの定義は、国によって会社法や会計基準、税法上の取り扱いが異なります。
例えば、ある国では50%超の議決権保有が「子会社」の基準となる一方、別の国では議決権の割合に関わらず「実質的な支配」があれば「子会社」と見なされることがあります。
この違いを認識せずに契約を締結すると、国際取引においては特に、法的な解釈のずれが生じ、予期せぬ法的・税務上の問題に発展するリスクがあります。
契約書における定義が、関連する国内外の法規制や自社のグループガバナンスと整合しているかを確認することが重要です。
(3)企業グループの変動への対応
企業グループは、合併、買収、会社分割などにより常に変化する可能性があります。
契約締結後にaffiliateやsubsidiaryの状況が変わった場合、契約の定義がその変化に対応できるかを確認する必要があります。
例えば、契約期間中に新たに設立された子会社や買収された関連会社が、既存の契約の対象に含まれるのか、明確にしておくことが望ましいです。
定義の仕方によっては、将来の組織再編が契約義務に与える影響も変わってきます。
これらの注意点を踏まえ、affiliateとsubsidiaryの定義は、契約の他の条項に与える影響を十分に考慮し、自社のビジネスの実態とリスク許容度に合わせて慎重に定める必要があります。
(ご参考):
よろしければ、以下の関連記事もご参考にしてください。
wholly-owned subsidiaryの意味と例文
*完全子会社について解説しています。
entityとpersonの意味と例文
*契約当事者としての法人と個人について解説しています。
2.例文と基本表現:
(注):上記で解説したaffiliateとsubsidiaryは青文字で示しています。
1)affiliateとsubsidiary– 例文①
定義条項からです。関連会社とは、①対象の法人を支配する会社、②対象の法人に支配されている会社、③共通の支配下にある会社、を意味します。
“Affiliate” means any entity that directly or indirectly controls, is controlled by, or is under common control with the subject entity. “Control,” for purposes of this definition, means direct or indirect ownership or control of more than 50% of the voting interests of the subject entity.
(訳):
「関連会社」とは、対象の法人を直接間接を問わず支配し、支配され、または共通の支配下にある法人を意味する。 本定義において、「支配」とは、対象の法人の議決権の50%を超える直接的もしくは間接的な所有または支配を意味する。
(注):
*entityは、法人という意味です。 くわしくは、entityとpersonの意味と例文をご覧ください。
*directly or indirectlyは、直接間接を問わず、直接的又は間接的にという意味です。対象範囲を広くとらえる場合、英文契約書でよく使われる表現のひとつです。directly or indirectlyは次の例文②でも登場します。
*the subject entityは、対象の法人という意味です。
*for purposes of this definitionは、直訳すると、for purposes of(~の目的のために)とthis definition(本定義)の組み合わせですが、ここでは本定義においてと訳しています。
*ownershipは、所有という意味です。
*the voting interestsは、議決権という意味です。
2)affiliateとsubsidiary– 例文②
定義条項からです。関連会社とは、当事者の子会社と持株会社、持株会社の子会社を意味します。子会社とは、株式の50%以上を当事者または当事者の持株会社が保有する会社を意味します。
“Affiliate” means only the subsidiaries and any holding companies of the Contracting Party, and the subsidiaries of such holding companies. For the purposes of this definition, a subsidiary means a company in which more than 50% of the issued share capital is owned directly or indirectly by the Contracting Party (or any holding company of the Contracting Party, as applicable) and over which it exercises effective control. For the purpose of this definition, a holding company means a company that owns directly or indirectly more than 50% of the issued share capital in the Contracting Party and exercises effective control over the Contracting Party.
(注):
「関連会社」とは、契約当事者の子会社および持株会社、ならびに当該持株会社の子会社のみを意味する。 本定義において、子会社とは、発行済株式資本の50%以上を契約当事者(該当する場合は、契約当事者の持株会社)が、直接間接を問わず、所有し、有効に支配している会社を意味する。 本定義において、持株会社とは、直接間接を問わず、契約当事者の発行済み株式資本の50%以上を所有し、契約当事者を有効に支配している会社を意味する。
(注):
*holding companiesは、持株会社、親会社という意味です。
*For the purposes of this definitionは、本定義においてと訳しています。
*the issued share capitalは、発行済株式資本という意味です。
*as applicableは、該当する場合はという意味です。
*exercises effective controlは、有効に支配するという意味です。
3)affiliateとsubsidiary– 例文③
秘密保持条項からです。秘密情報の開示範囲は、知る必要があり、目的に絶対に必要な範囲の当事者の関連会社、子会社等に限定されます。
The Parties shall disclose the Information to their employees, affiliates, subsidiaries, external experts and/or consultants only on a need to know basis and only to the extent absolutely necessary for the Purpose.
(訳):
両当事者は、その情報を、従業員、関連会社、子会社、外部の専門家又はコンサルタントに対し、知る必要性に基づいてのみ且つ本目的に絶対に必要な範囲でのみ、開示するものとする。
(注):
*The Partiesは、両当事者という意味です。
*on a need to know basisは、知る必要性に基づいて、知る必要のあるという意味です。くわしくは、need to knowの意味と例文をご覧ください。
*to the extent absolutely necessaryは、絶対に必要な範囲での意味です。くわしくは、to the extent thatの意味と例文をご覧ください。
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