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Agency Agreement(代理店契約)とは、どのような契約なのか、Distribution Agreement(販売店契約)との違い、その基本となる一般条項と主要条項は何か、について解説します。
(目次)
1.Agency Agreement(代理店契約)とは
2.Distribution Agreement(販売店契約)との違い
3.Agency Agreement(代理店契約)の構成と要点
1)Recitals(前文)
2)Definitions(定義)
3)Appointment as Agent(代理店の選任)
4)Commissions(コミッション)
5)Payment(支払い)
6)Term and Termination(期間及び解除)
7)Vendor’s Marketing Support(ベンダーによる市場
開拓サポート)
8)Agent’s Translation Rights and Use of Vendor
Information(代理店の翻訳権及びベンダー情報
の利用)
9)Trademark License(商標のライセンス)
10)Confidential Information(秘密保持)
11)Exhibit(別紙)
4.Agency Agreementにおける実務上の重要点と
交渉の視点
1.Agency Agreement(代理店契約)とは
Agency Agreement(販売代理店契約)とは、
製造メーカー等の売主であるベンダーが、
ある地域における顧客に対して、製品を継続的に売り渡す契約を結ぶにあたり、
代理店が、
その製品の販売活動をベンダーのために行い、
売買が成立することについて手数料(コミッション)を得ることを内容とする契約
2.Distribution Agreement(販売店契約)との違い
Agency Agreement(代理店契約)については、Distribution Agreement(販売店契約)との区別がポイントです。
Agency Agreement(代理店契約):
・代理店は、本人たるベンダー(=売主)の代理人となります。
売買は、ベンダーと顧客との間で成立し、顧客がベンダーに製品の
代金を支払います。
・代理店は、自ら製品の在庫リスクを持つことなく、製品の販売活動
をベンダーのために行います。(=代理店がベンダーと顧客を仲介
します。)ベンダーと顧客との間で売買が成立することにより、
ベンダーから仲介手数料(コミッション)を得ます。
Distribution Agreement(販売店契約):
・販売店は、ベンダーから製品を買い取り、製品の在庫リスクをとり
ます。(売買は、ベンダーと販売店との間で成立し、販売店が
ベンダーに製品の代金を支払います。)
3.Agency Agreement(代理店契約)の構成と要点
Agency Agreement(販売代理店契約)において、基本となる一般条項と主要条項の構成は、以下の項目1)から項目11)のとおりです。
これら各項目は、英文契約書の契約条項に該当します。
(ご参考):
一般条項と主要条項については、くわしくは、
・英文契約書の構成(structure of contract )
・General Provisions(一般条項)とPrincipal provisions(主要条項)
をご覧ください。
1)Recitals(前文):
Recitalsとは、英文契約書に置かれる前文という意味です。
前文とは、契約の締結に至るまでの経緯、背景などを説明したの条文のことをいいます。
ここでは、製品の製造メーカーの売主たるベンダーと買主たる代理店が、
Agency Agreement(代理店契約)を締結するに至った経過
を記載します。
(ご参考):
前文については、くわしくは、
Recitals/Preamble/WITNESSETH/Whereas clauseの意味と例文
2)Definitions(定義):
Definitions(定義)とは、
当事者間で、用語の意味を正確に定義することにより、その解釈に食い違いがおきないようにする
ための条項です。
Agency Agreement(代理店契約)においては、
以下の用語がキーワードとなります:
・項目3)Appointment as Distributor(販売店の選任)
の製品のユーザーたるCustomer(顧客)
・別紙に記載するProduct(製品)
・項目3)Appointment as Distributor(販売店の選任)
の代理店が販売活動に従事できるTerritory(販売地域)
これらの用語の定義を行います。
(ご参考):
用語の定義については、くわしくは、
3)Appointment as Agent(代理店の選任)
Territory(販売地域)におけるCustomer(顧客)に対するProduct(製品)の販売活動を目的として、
ベンダーが代理店を選任することを取り決めます。
代理店の選任にあたっては、
・独占的代理店なのか、
・それとも非独占的代理店なのか
4)Commissions(コミッション)
代理店へのサービスの対価として、ベンダーは、
代理店から紹介された顧客に対して、
販売された製品の売買契約金額の〇%の手数料(コミッション)を支払う
5)Payment(支払い)
以下について、取り決めます:
①ベンダーは、代理店に対し、各月の期日までに、前の月のベンダーと顧客との間の製品の売買契約のコミッションを送金により支払うこと。
②ベンダーは、コミッションの金額計算が記載されたコミッション計算書を代理店に送付すること。
③支払期限までに支払いがない場合は、遅延損害金が発生すること。
④コミッションの支払いに課税される税金は、ベンダー負担とすること。
(ご参考):
支払いについては、
6)Term and Termination(期間及び解除)
以下について、取り決めます:
①契約の有効期間と自動更新の条件。
②いずれかの当事者に重大な債務不履行があり、是正の通知後も債務不履行が解消しない場合の契約解除。
③債務不履行による解除または債務不履行事由が生じた場合の期限の利益喪失。
④不可抗力が生じた場合の契約解除。
(ご参考):
契約の有効期間と自動更新については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
契約解除については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
期限の利益喪失については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
不可抗力については、くわしくは、
7)Vendor’s Marketing Support(ベンダーによる市場開拓サポート)
ベンダーは、代理店に対して、
無償で市場開拓のサポートを提供することを取り決めます。
(例):
・製品カタログや技術資料などの販売資料の提供
・質問に対する回答など。
8)Agent’s Translation Rights and Use of Vendor Information(代理店の翻訳権及びベンダー情報の利用)
以下について、取り決めます。
①代理店は、ベンダーから提供を受けた販売資料や技術資料をTerritory(販売地域)の顧客に対して頒布するため、日本語に翻訳できること。
②代理店は、ベンダーのホームページなどの情報を製品の販売資料等に利用できること。
9)Trademark License(商標のライセンス)
ベンダーが代理店に対して、代理店の販売活動のために、
ベンダーの商標の使用を非独占的に無償の条件にて許諾すること、
及びその他使用許諾条件
について取り決めます。
(ご参考):
商標のライセンスについては、くわしくは、
10)Confidential Information(秘密保持)
代理店が、ベンダーから受領した秘密情報について、
秘密に保持することや目的外利用の禁止
を取り決めます。
(ご参考):
秘密保持については、くわしくは、
Exhibit(別紙)
別紙にて、
項目2)Definitions(定義)で定義する
ベンダーが提供するProduct(製品)の詳細
を規定します。
(ご参考):
別紙については、
をご参考にしてください。
4.Agency Agreementにおける実務上の重要点と
交渉の視点
Agency Agreementは、ベンダーが海外市場に進出する際の重要な手段ですが、その性質上、法的リスクや実務上の課題も存在します。
主要条項の理解に加え、以下の点に留意することで、より効果的な代理店関係を構築し、紛争を未然に防ぐことができます。
ア.代理店の独立性維持と恒久的施設(Permanent Establishment)リスク
Agency AgreementとDistribution Agreementの最も大きな違いは、代理店が「代理人」としてベンダーのために活動し、売買契約がベンダーと顧客の間で成立する点です。
この構造は、特に税務上の「恒久的施設(Permanent Establishment: PE)」のリスクと深く関連します。
PEリスクの概念:
ベンダーが特定の国にPEを有すると認定されると、その国で事業を行っているとみなされ、現地の法人税やその他の税金を納める義務が生じる可能性があります。
これは、ベンダーが現地に子会社を持たない場合でも適用され得るため、国際代理店契約において非常に重要な考慮事項です。
代理店の独立性維持:
代理店契約では、代理店が「独立した事業者(independent contractor)」であり、ベンダーの単なる「代理人(agent)」ではないことを明確に規定することが一般的です。
具体的には、代理店が自身の裁量で販売活動を行い、顧客との交渉においてある程度の自由を持つこと、ベンダーの指示に過度に縛られないことなどを契約書で明確にします。
PEリスク軽減のための条項:
・代理店に契約締結権限を与えない(または厳しく制限する)。
・代理店が自己のリスクと費用で事業を行うことを明記する。
・代理店が複数のベンダーの製品を取り扱うことの許容。
・ベンダーが代理店の事業運営に過度に介入しないことを規定する。これにより、税務当局から代理店がベンダーのPEと見なされるリスクを軽減します。
イ.テリトリー(Territory)と独占性(Exclusivity)の交渉
「Appointment as Agent(代理店の選任)」条項におけるTerritory(販売地域)と独占性の設定は、ベンダーと代理店双方にとって極めて重要な交渉ポイントです。
独占的代理店(Exclusive Agent):
特定の地域や顧客セグメントにおいて、代理店以外の者(ベンダー自身も含む)が販売活動を行わないことを約束するものです。
代理店にとっては安定的な収益源となる一方で、ベンダーにとっては、代理店の販売実績が不振だった場合に市場機会を逸するリスクがあります。
非独占的代理店(Non-Exclusive Agent):
ベンダーが複数の代理店を置いたり、自身でも販売活動を行ったりすることを許容するものです。
ベンダーにとってはリスク分散と市場浸透の機会が増える一方で、代理店にとっては競争が激しく、コミッションが限定的になる可能性があります。
目標達成義務(Sales Target / Minimum Performance):
特に独占的代理店の場合、ベンダーは代理店に対し、最低販売目標(Minimum Sales Target)や最低購入義務(Minimum Purchase Obligation)を課すことが一般的です。
これを達成できない場合、ベンダーは独占権を非独占に切り替えたり、契約を解除したりする権利を持つことができます。
代理店にとっては、この目標設定が過度に厳しいと事業継続が困難になるため、慎重な交渉が必要です。
ウ.コミッション(Commissions)の計算と支払い条件
代理店契約の主要な収益源であるコミッションについては、以下の点を明確にすることが不可欠です。
コミッションの対象となる売上:
「販売された製品の売買契約金額」が具体的に何を指すのか(例:純売上高、請求額、回収額など)を明確にします。
返品や割引、税金、送料などを控除するかどうかを具体的に規定します。
支払いタイミングと通貨:
コミッションがいつ(例:契約成立時、代金回収時)、どの通貨で支払われるかを明確にします。
為替リスクの負担についても合意が必要です。
監査権と報告義務:
代理店がコミッション計算の基礎となる販売実績や関連記録を正確にベンダーに報告する義務(Reporting Obligation)と、ベンダーがその報告内容を監査する権利(Audit Rights)を詳細に規定します。
これにより、コミッションの透明性と正確性を確保します。
エ.契約終了後の精算と移行
「Term and Termination(期間及び解除)」条項に加え、契約終了時の処理についても明確に定めておく必要があります。
コミッションの精算:
契約期間中に成立した売買契約について、契約終了後にコミッションが発生した場合の支払い義務を明確にします。
例えば、契約終了後も一定期間はコミッションを支払う、または特定の条件を満たす場合にのみ支払うなどです。
顧客情報の返還:
代理店が取得した顧客情報や営業資料の返還・廃棄義務を定めます。
競業避止義務(Non-Competition):
契約終了後も、代理店がベンダーの競合製品を取り扱わない期間や地域を定めることがあります。
ただし、この条項は独占禁止法や競争法に抵触しないよう、期間や範囲を合理的に限定する必要があります。
紛争解決:
国際代理店契約では、紛争解決方法として、裁判所の管轄(Jurisdiction)や、仲裁(Arbitration)を選択することが一般的です。
特に仲裁は、非公開で行われるため企業の機密保持に適しており、国際的な強制執行も比較的容易というメリットがあります。
Agency Agreementは、ベンダーと代理店のパートナーシップを規定する重要な法的文書です。
これらの実務上の重要点と交渉の視点を踏まえることで、両当事者にとって公平で、かつ将来のトラブルを最小限に抑えることができる契約を締結できるでしょう。
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