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英文契約書によく出てくる表現のarising out ofとarising fromについて解説します。併せて、例文をとりあげ対訳をつけました。例文中の他の基本表現に注記しました。
1.解説:
1)arising out ofとarising fromとは
・arising out ofは、
~に起因する、~から生じる
という意味です。
・arising fromも、同じく、
~に起因する、~から生じる
という意味です。
2)接続による表現
arising out of(~に起因する、~から生じる)を例にとると、そのあとに、
in connection with(~に関連して)などがよく接続されます。
これは、英文契約書では、
arising out of(~に起因する、~から生じる)に
in connection with(~に関連して)
などを接続させることにより、
その対象とする範囲を広く捉えるようにするためです。
以下が接続させた、いくつかの表現です。
・arising out of or in connection with:
~に起因または関連する
・arising out of or in relation to:
~に起因または関連する
・arising out of or relating to:
~に起因または関連する
・arising out of or related to:
~に起因または関連する
3)arising out ofとarising fromの使い方
arising out of(~に起因する、~から生じる)を例にとると、以下のように、さまざまな場面で、使用されます。(青文字部分)
・Limitation of Liability (責任制限条項)で:
本契約に基づく行為や不履行に起因する(arising out of)間接的損害については、賠償責任は負わない。(英文契約書の例文①をご覧ください)
本契約に起因する(arising out of)一切の請求は、日本法に準拠とし、それに従って解釈される。(英文契約書の例文②をご覧ください)
本契約に起因する(arising out of)紛争は、国際商工会議所の仲裁規則に基づき解決される。(英文契約書の例文③をご覧ください)
売主は、商品が保証に適合しないことに起因する(arising out of)損失等から、買主を補償する。(英文契約書の例文④をご覧ください)
4)arising out ofとarising fromの実務上の重要点と交渉の視点
arising out ofやarising fromといった「~に起因する」を意味する表現は、ある事象と、それによって生じた結果(損害、紛争など)との因果関係を定義する上で不可欠なフレーズです。
このフレーズは、特に責任制限、補償、紛争解決条項において、その条項が適用される範囲を定める上で極めて重要な役割を果たします。
ア.因果関係の範囲を規定する言葉
「arising out of」は、「原因」と「結果」の間に直接的な因果関係があることを示唆する言葉として解釈されることが多いです。
一方、「arising in connection with」は、より緩やかな関連性、つまり「間接的な原因」も含む広範な関係性を示す傾向があります。
責任範囲の拡大:
多くの英文契約書では、例文②や例文④にあるように「arising out of or in connection with」や「arising out of or relating to」といった形で、複数の表現を組み合わせて使います。
これは、責任や補償、紛争解決の対象となる事象の範囲を最大限に広げ、抜け穴がないようにするための定型的なドラフティング手法です。
法的解釈の違い:
ただし、各国の法域や裁判所の解釈によっては、これらの表現が厳密に区別される場合と、ほとんど同じ意味で解釈される場合があります。
例えば、米国の一部の州では「arising out of」が「but for」(~がなければ~もなかった)テスト(事象がなければ結果もなかったという強い因果関係)で解釈されることがありますが、他の州ではより広範な解釈がなされることもあります。
(補足):
「but for」テストは、アメリカのコモンロー(判例法)において、因果関係(causation)を判断するための基本的な考え方として使われます。
イ.条項ごとの実務上の重要点と交渉の視点
この表現がどの条項で使われているかによって、交渉の重要度が変わってきます。
Limitation of Liability(責任制限)条項:
自社が提供する製品やサービスに起因する(arising out of)損害について、「いかなる間接損害も責任を負わない」と規定することで、リスクを管理します。
しかし、相手方は、例えば「gross negligence(重大な過失)」や「willful misconduct(故意の不正行為)」に起因する損害は責任制限の対象外とするよう求めることが一般的です。
Indemnification(補償)条項:
この条項では、「arising out of」以下の事象が、補償義務のトリガーとなります。
補償する側(例:売主)は、補償範囲を限定するために、この表現の後の記述をできるだけ狭く定義しようとします。
一方、補償される側(例:買主)は、補償範囲を広くするため、複数の事象や「or in connection with」を追加するよう求めることが多いです。
Governing Law(準拠法)およびArbitration(仲裁)条項:
これらの条項では、契約自体の解釈だけでなく、それに起因する紛争や請求(不法行為、不正競争など)も特定の準拠法や仲裁規則で解決されるようにするために、「arising out of or in connection with」が使われます。
これにより、契約に関する全ての法的問題を一貫したルールで解決できるというメリットがあります。
ウ.交渉における注意点
用語の統一:
契約書全体で「arising out of」と「arising from」を同じ意味で使う場合は、どちらか一方に統一するか、Definitions(定義)条項で「arising out of と arising from は同じ意味である」と明記することが望ましいです。
リスクとベネフィットのバランス:
責任制限条項では責任を限定したい(原因の範囲を狭くしたい)、一方で補償や権利の条項では権利を広くしたい(原因の範囲を広くしたい)というように、arising out ofが使われる文脈によって、交渉の目的は真逆になります。
契約書全体を俯瞰し、自社の立場に有利なように、各条項でのこの表現の適用範囲を慎重に検討することが重要です。
arising out ofやarising fromは、契約における法的責任の境界線を引く重要な言葉です。
その背後にある因果関係の範囲を理解し、交渉の各フェーズで自社の利益を最大化できるよう、これらの表現を戦略的に活用することが求められます。
2.例文と基本表現:
(注):上記で解説したarising out ofは青文字で示し、他の基本表現をハイライトしています。
1)arising out of(~に起因する、~から生じる)– 例文①
Limitation of Liability (責任制限条項)からです。本契約に基づく行為や不履行に起因する間接的損害については、賠償責任を負いません。
Neither party to this Agreement shall be liable for any consequential, indirect, special or incidental damages under any provision of this Agreement or for any consequential, indirect, penal, special or incidental damages arising out of any act or failure to act hereunder even if that party has been advised of or has foreseen the possibility of such damages.
(訳):
本契約のいずれの当事者も、本契約の条項に基づく結果的、間接的、特別もしくは付随的な損害、または本契約に基づく行為または不履行に起因する結果的、間接的、刑事的、特別もしくは付随的な損害について、当該当事者が、そのような損害の可能性について通知されているか、予測していたとしても、責任を負わないものとする。
(注):
*consequential, indirect, special or incidental damagesは、結果的、間接的、特別もしくは付随的な損害という意味です。
*arising out of any act or failure to actは、arising out of(に起因する)とany act or failure to act(行為または不履行)で、行為または不履行に起因するという意味です。
*been advised of or has foreseenは、been advised of(通知されている)とhas foreseen(予測していた)で、通知されているか、予測していたという意味です。
2)arising out of(~に起因する、~から生じる– 例文②
Governing Law(準拠法条項)からです。本契約に起因又は関連する請求は、日本法に準拠し、日本法に従って解釈されます。
This Agreement as well as all claims arising out of or in connection with this Agreement or the transactions contemplated by this Agreement (including all tort and other non-contract claims) shall be governed by and construed in accordance with the substantive laws of Japan, without regard to any conflict of law principles, as if both Parties were Japan entities and this Agreement was to be performed entirely in Japan.
(訳):
本契約及び本契約に起因若しくは関連する一切の請求又は本契約が意図する取引(不法行為及び契約に基づかない一切の請求を含む)は、両当事者が日本法人であり、且つ本契約が日本で履行されるものとして、法の抵触の原則に関わらず、日本法に準拠とし、それに従って解釈されるものとする。
(注):
*all claims arising out of or in connection with this Agreementは、本契約に起因若しくは関連する一切の請求という意味です。
*the transactions contemplated by this Agreementは、本契約が意図する取引という意味です。
*tortは、不法行為という意味です。くわしくは、tortの意味と例文をご覧ください。
*without regard to any conflict of law principlesは、法の抵触の原則に関わらずという意味です。
3)arising out of(~に起因する、~から生じる)– 例文③
Arbitration(仲裁条項)からです。本契約に起因又は関連する紛争は、国際商工会議所の仲裁規則に基づき解決されます。
Any disputes, controversy or claim arising out of or in relation to this Agreement, including the validity, invalidity, breach or termination thereof, shall be finally settled under the Rules of Arbitration of the International Chambers of Commerce by three arbitrators appointed in accordance with the said Rules.
(訳):
有効性、無効性、違反又は解除を含み、本契約に起因又は関連する紛争、論争又は請求は、国際商工会議所の仲裁規則に基づき、当該仲裁規則に従って任命された3名の仲裁人により最終的に解決されるものとする。
(注):
*the International Chambers of Commerceは、国際商工会議所のことです。国際的な仲裁機関のひとつです。
4)arising out of(~に起因する、~から生じる– 例文④
Indemnification (補償条項)からです。売主は、商品が保証に適合しないことに起因または関連する損失等から、買主を補償します。
Seller shall indemnify, defend, and hold harmless Buyer from and against any and all claims, liabilities, damages, losses, costs and expenses (including reasonable attorney’s fees and costs) (collectively, “a Loss”) arising out of or relating to the failure of the Goods to conform to any warranty, Seller’s failure to comply with its obligations under this Agreement, or any act or omission by Seller except when a Loss results from the sole negligence of Buyer.
(訳):
売主は、商品が保証に適合しなかったこと、売主が本契約に基づく義務を遵守しなかったこと、または売主に作為もしくは不作為があったことに起因または関連する、一切の請求、責任、損害、損失および費用(合理的な弁護士費用を含む)(総称して「損失」という)から、買主の単独の過失により損失が生じた場合を除き、買主を補償し、防御し、免責するものとする。
(注):
*indemnify, defend, and hold harmless ~ from and against ~は、から~を補償し、防御し、免責するという意味です。 くわしくは、indemnify and hold harmlessの意味と例文をご参考にしてください。
*costs and expensesは、費用という意味です。類語を並べた強調表現です。
*collectivelyは、総称して~というという意味です。くわしくは、collectivelyの意味と例文をご覧ください。
*conform to any warrantyは、保証に適合するという意味です。
*act or omissionは、作為もしくは不作為という意味です。
*the sole negligenceは、単独の過失という意味です。
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