英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)
英文契約書でよく使われる法的拘束力を示す用語である bindingとenforceable について、とりあげます。 併せて、使い方について、いくつかの例文をとりあげて訳をつけました。例文中の他の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
bindingとenforceableは、ともに、契約の法的拘束力を表す用語です。
1) binding について
・binding:
拘束力を有するという意味です。
binding(拘束力を有する)は、このままの語句でも、使われます(例文①をご覧ください)。
また、以下の表現でも、よく使われます。
・legally binding:
法的拘束力のあるという意味です。(例文②をご覧ください)
・not legally binding:
法的拘束力のないという意味です。(例文③をご覧ください)
2) enforceable について
・enforceable:
法的強制力がある、執行力のあるという意味です。英文契約書でよく使われます。(下記の例文④をご覧ください)
・unenforceable:
法的強制力がない、執行力のないという意味です。これもよく使われます。(下記の例文⑤をご覧ください)
3) bindingとenforceableの使い分けと法的意味合いの
理解
bindingとenforceableは、どちらも契約の「法的拘束力」を示す言葉ですが、そのニュアンスと法的な焦点には重要な違いがあります。
この違いを理解することは、契約書の意図を正確に把握し、法的なリスクを適切に評価するために不可欠です。
ア.binding(拘束力)の法的意味合い
bindingという言葉が指すのは、主に「当事者が契約の条項に合意し、それによって法的な義務を負うこと」、つまり契約が有効に成立している状態です。
「合意の拘束力」:
契約は、当事者間の有効な申込み(offer)、承諾(acceptance)、および約因(consideration)といった成立要件を満たすことで「binding」となります。
この状態では、当事者は契約上の義務を遵守する法的責任を負います。
契約成立の段階:
bindingという概念は、契約が法的に有効な形で成立したかどうか、という点に焦点を当てます。
例えば、覚書(Memorandum of Understanding)や意向表明書(Letter of Intent)において「not legally binding」と明記されるのは、その文書自体が法的拘束力を持つ契約ではないことを明確にするためです。
これは、当事者が今後の交渉に向けての意向を示すものであり、直ちに法的義務を負うものではないことを意味します。
違反時の「breach(債務不履行)」:
bindingな契約の義務に違反すると、それは「breach of contract(契約違反/債務不履行)」となり、損害賠償請求の対象となります。
イ.enforceable(法的強制力/執行力)の法的意味合い
enforceableという言葉は、bindingであることに加えて、「その契約が裁判所やその他の法的機関によって強制的に履行させられること、または、違反した場合に法的な救済(remedy)が与えられること」を意味します。
つまり、契約が有効に成立している(bindingである)にもかかわらず、特定の理由によりenforceableではない、という状況があり得ます。
強制執行の可能性:
enforceableであるとは、契約上の義務が履行されない場合に、裁判所を通じて金銭の支払いを強制したり、特定の行為(specific performance)を命じたりするなどの法的な手続きを通じて権利を実現できる状態を指します。
法的な障害:
契約がbindingであっても、以下のような理由でunenforceableとなることがあります。
公序良俗違反(contrary to public policy):
違法行為を伴う契約や、社会の基本的な規範に反する契約は、たとえ当事者が合意していても、裁判所は強制しません。
法律による要件不備:
特定の契約(例:不動産の売買契約)は、書面(in writing)であることや、署名(signature)があることなど、法律で定められた厳格な形式要件を満たさないとunenforceableとされます(日本の民法における保証契約の書面性など)。
特定の条項の無効性:
たとえ契約全体がbindingであっても、その一部の条項が、不明確(vague)であったり、過度に一方的(unconscionable)であったり、競争を不当に制限する(restraint of trade)ものであったりするなどの理由でunenforceableとされることがあります(例文⑤がこの典型例です)。
詐欺(fraud)や錯誤(mistake):
契約締結に至る過程で詐欺や重大な錯誤があった場合、契約はbindingではあっても、被害者側が契約を取り消したり、unenforceableと主張したりできる場合があります。
ウ.「valid, binding and enforceable」という表現の意味
例文④のように、契約書で「This Agreement is valid, binding and enforceable」という表現が頻繁に使われるのは、これら三つの言葉がそれぞれ異なる法的側面を強調しているからです。
Valid(有効):
契約が法的な要件をすべて満たし、正しく成立していることを意味します。
これには、当事者の行為能力、合法的な目的、真正な意思表示などが含まれます。
Binding(拘束力がある):
前述の通り、当事者がその契約に合意し、その条件によって法的な義務を負っていることを意味します。
Enforceable(強制力がある/執行力がある):
前述の通り、契約上の義務が履行されない場合に、裁判所を通じて法的な救済が得られることを意味します。
これらの言葉は重複しているように見えるかもしれませんが、それぞれが契約の異なる段階や側面における法的確実性を保証する重要な役割を果たしています。
契約交渉やレビューの際には、これらの言葉が単なる定型句ではなく、それぞれが持つ具体的な法的意味合いを理解した上で、自社の利益が適切に保護されているかを確認することが不可欠です。
2.例文と基本表現:
(注):bindingとenforceableは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。
1)binding(拘束力を有する) – 例文①
No supplement, modification, or amendment of this Agreement shall be binding unless executed in writing by all the parties.
(訳):
本契約の補足又は変更は、すべての当事者によって書面で署名されない限り、拘束力を有しない。
(注):
*modification, or amendmentは、変更という意味です。同義語による強調表現です。
2)legally binding(法的拘束力のある)- 例文②
The parties agree that this Agreement shall be legally binding upon the electronic transmission, including by facsimile or email, by each party of a signed signature page to this Agreement to the other party.
(訳):
両当事者は、各当事者が本契約の署名済みページを相手方に対しファクシミリ又は電子メールを含み電子送信することを以って、本契約が法的拘束力を有することに合意する。
(注):
*a signed signature pageは、署名済みページという意味です。
3)not legally binding(法的拘束力のない)- 例文③
This memorandum is not a legally-binding document and is not for execution.
(訳):
本覚書は、法的拘束力のある文書ではなく、署名するためのものでもない。
(注):
*is not for executionは、署名するためのものではないという意味です。
4)enforceable(法的強制力がある、執行力のある)- 例文④
This Agreement is valid, binding and enforceable against Debtor in accordance with its terms.
(訳):
本契約は、本契約の条件に従って、債務者に対して有効で、拘束力があり、執行力を有する。
(注):
5)unenforceable(法的強制力がない、執行力のない) – 例文⑤
If any part of this Agreement is invalid or unenforceable, the other provisions of this Agreement shall not be affected thereby and shall remain in full force and effect.
(訳):
本契約のいずれかの部分が無効又は執行力がない場合でも、本契約の他の条項は影響を受けず、引き続き有効とする。
(注):
*therebyは、by that(それによって)の意味で、that(それ)がIf any part of this Agreement is invalid or unenforceableを指しますが、意訳しています。詳しくは、thereto, thereof, thereafter, thereby, thereinの意味と例文をご覧ください。
*remain in full force and effectは、引き続き有効なという意味です。詳しくは、in forceとin effectの意味と例文をご覧ください。
英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。リーズナブルな料金・費用で承ります。
お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。
受付時間: 月~金 10:00~18:00
メールでのお問合せは、こちらから。
ホームページ:宇尾野行政書士事務所
