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英文契約書において法令遵守の条項として設けられるCompliance with Lawsついて解説します。 例文をとりあげ、要点と対訳をつけ基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)Compliance with Lawsとは
Compliance with Lawsは、法令遵守という意味です。
英文契約書においてCompliance with Law(法令遵守)を条項として設けることにより、当事者が従事するビジネスの業種に応じて、さまざまな内容の関連法令をとりあげて、その遵守義務を規定していることがあります。
Compliance with Law(法令遵守)については:
・両当事者が遵守すると規定するもの。(下記の例文①をご覧ください)
・一方当事者にのみ義務を負わせているもの。(下記の例文②と例文③をご覧ください)
があります。
しかし、英文契約書で一方当事者にのみ、Compliance with Law(法令遵守)の義務を負わせていても、法令上は、両当事者が同様の義務を負うことに変わりはありません。
2)Compliance with Law(法令遵守)とAnti-Bribery(贈収賄禁止)
国際ビジネスを展開する上で特に重要となる
をCompliance with Law(法令遵守)の条項の中でセットで規定しているケース
も多くあります。(下記の例文①と例文②をご覧ください)
3)契約レビューの重要ポイント:法令遵守条項の強化と
国際的な潮流
Compliance with Laws(法令遵守条項)は、一見すると形式的な一般条項に見えるかもしれませんが、企業の社会的な評価、法的責任、そして事業継続性に直接影響を与える極めて重要な条項です。
特に国際的なビジネスにおいては、自国のみならず、相手国や関係する第三国の法令遵守義務が課されるため、その内容は多岐にわたります。
契約レビュー時には、以下の点を周到に検討し、自社の事業リスクを管理することが求められます。
ア.適用される法令の範囲と具体性
なぜ重要か?:
「すべての適用法令」という一般的な文言だけでは、将来的にどのような法令の遵守が求められるか不明確になる可能性があります。
特に、法改正や新たな規制の導入は常に発生するため、その適用範囲を明確にすることは重要です。
確認すべきポイント:
「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」の活用:
例文①にあるように、applicable laws and regulations (including but not limited to the anti-bribery related laws and regulations) という表現は、具体的な法令(例:贈収賄関連法)を例示しつつも、それらに限定されないことを明確にします。
これにより、将来的な法改正や新たな規制にも対応しやすくなります。
特定の法令の明示:
事業の性質上、特に遵守が必須となる特定の法令(例:データプライバシー法、競争法、環境法、輸出管理法規など)がある場合は、それを具体的に列挙することを検討しましょう。
指令・ガイダンスの遵守:
例文①のinstructions and guidance of the competent authorities のように、法的拘束力があるとは限らないが、当局の指示や指導も遵守対象とすることで、より広範なコンプライアンス体制を構築できます。
イ.当事者の義務の範囲と責任分担
なぜ重要か?:
法令遵守義務は、当事者の一方にのみ課される場合と、両当事者に課される場合があります。
契約上の義務の範囲を明確にすることは、責任分担の基盤となります。
確認すべきポイント:
「双方」の義務か「一方」の義務か:
例文①のようにEach Party shall comply with… と両当事者に課すのが一般的ですが、例文②や例文③のようにSupplier represents and warrants that it has complied and shall comply with… と、サプライヤーなど一方の当事者に特化した義務を課すこともあります。
自社のビジネスモデルにおいて、どちらの当事者が、どの法令に対する主要な責任を負うべきかを明確にしましょう。
表明保証(Representations and Warranties)としての組み込み:
例文②のように、represents and warrants(表明し、保証する)として法令遵守を記載することは、その時点での法令遵守状況を約束し、違反があった場合の責任追及を可能にします。
これは、単なる義務規定よりも強い効力を持ちます。
子会社・関連会社への適用:
例文③のSeller and its Subsidiaries のように、契約当事者だけでなく、その子会社や関連会社にも法令遵守義務を課すことは、サプライチェーン全体でのコンプライアンスを確保する上で重要です。
ウ.国際的な贈収賄防止(Anti-Bribery / Anti-Corruption)の強化
なぜ重要か?:
米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)や英国贈収賄法(UK Bribery Act)など、国際的な贈収賄防止に関する法規制は近年厳格化しており、域外適用されるケースも多いため、国際取引では特に注意が必要です。
確認すべきポイント:
具体的な禁止行為の明示:
贈賄行為の禁止に加え、利益供与、不当な便宜供与など、具体的に禁止される行為を詳細に記述することを検討しましょう。
第三者(代理店、コンサルタントなど)への適用:
契約の相手方だけでなく、その代理人、従業員、または下請け業者など、契約履行に関わる第三者による贈賄行為についても責任を負う旨を明確に規定しましょう。
これは、第三者を通じた間接的な贈賄を防止するために不可欠です。
企業ポリシーへの言及:
例文②のSupplier agrees at all times to act consistently with the Company’s global anti-corruption policy. のように、自社の社内規程やポリシーへの準拠を義務付けることで、契約相手方にも自社のコンプライアンス基準を適用させることができます。
監査権(Audit Rights):
贈収賄防止義務の遵守状況を確認するために、契約相手方に対して監査権を付与する条項を設けることも有効な手段です。
違反時の契約解除(Termination):
贈収賄防止条項に違反した場合、即座に契約を解除できる権利(immediate termination right)を規定することは、その重要性を示すとともに、違反行為を抑止する効果があります。
エ.違反時の効果(Consequences of Non-Compliance)
なぜ重要か?:
法令遵守義務に違反した場合の具体的な法的効果を明記することで、契約の抑止力が高まり、万一の際に迅速な対応が可能になります。
確認すべきポイント:
補償義務(Indemnification):
法令遵守義務違反によって他方当事者が損害を被った場合、違反当事者がその損害を補償する義務を明確に規定しましょう。
契約解除権:
重大な法令違反があった場合に、一方当事者が契約を解除できる権利を規定しましょう。これは、企業の信用リスクを回避するためにも重要です。
Compliance with Laws条項は、単なる法的要件の羅列ではなく、企業がグローバルな舞台で健全かつ持続可能なビジネスを行うための基盤となるものです。
契約書作成・レビュー時には、形式的なチェックに留まらず、実務的なリスクを想定した上で、その内容を精査し、必要に応じて強化する全体的な視点が求められます。
2.例文と基本表現:
(注):英文契約書によく出る基本表現をハイライトし語注をつけています。
1)Compliance with Law(法令遵守)– 例文①
両当事者にCompliance with Law(法令遵守)の義務を定めています。下線部にanti-bribery(公務員に対する贈賄禁止)が入っています。
Compliance with Law
Each Party shall comply with all applicable laws and regulations (including but not limited to the anti-bribery related laws and regulations), instructions and guidance of the competent authorities throughout the term of this Agreement.
(訳):
法令遵守
各当事者は、本契約の有効期間中、すべての関係法令(贈収賄防止に関連する法令を含むがそれらに限らない)、管轄当局の指示及び指導を遵守するものとする。
(注):
*comply withは、~を遵守するという意味です。他にabide by、adhere toなども同様の意味を持つ表現であり、よく使われます。
*applicable laws and regulationsは、直訳すると適用法令及び規制ですが、関係法令と訳しています。applicable lawsについては、詳しくは、applicable lawの意味と例文をご覧ください。
*including but not limited toは、~を含むがそれらに限らないという意味です。詳しくは、including, but not limited to/including, without limitationの意味と例文をご覧ください。
*the competent authoritiesは、管轄当局という意味です。
*throughout the term of this Agreementは、本契約の有効期間中という意味です。
2)Compliance with Law(法令遵守)– 例文②
一方当事者のみにCompliance with Law(法令遵守)の義務を定めています。 下線部にanti-bribery(公務員に対する贈賄禁止)が入っています。
Compliance with Law.
Supplier represents and warrants that it has complied and shall comply with all applicable laws, regulations and other governmental requirements in effect at the time of manufacture of each of the Products. Supplier shall comply with the Company’s materials requirements as provided to Supplier from time to time, and reviewed and agreed to by Supplier, and shall undertake testing sufficient to validate compliance with such requirements. Supplier agrees at all times to act consistently with the Company’s global anti-corruption policy.
(訳):
法令遵守
サプライヤーは、各製品の製造時に適用となる一切の関係法令及び政府の要件をこれまで遵守しており、今後も遵守することを表明し、保証する。 サプライヤーは、サプライヤーに随時提供され、サプライヤーがレビューし、及び合意した当社の材料要件を遵守し、当該要件の遵守を検証するのに十分なテストを実施するものとする。 サプライヤーは、当社のグローバル汚職防止ポリシーに常に準拠することに同意する。
(注):
*represents and warrantsは、 表明し、保証するという意味です。詳しくは、represent and warrantの意味と例文をご覧ください。
*comply withは、遵守するという意味です。詳しくは、comply withの意味と例文をご覧ください。
*in effectは、有効である、効力を有するという意味ですが、意訳(適用となる)しています。
*from time to timeは、随時という意味です。
*undertakeは、~を実施するという意味です。
*validateは、~を検証するという意味です。
*compliance withは、~の遵守という意味です。
*at all timesは、常にという意味です。
*anti-corruption(汚職防止)は、anti-bribery(公務員に対する贈賄禁止)と同じ意味です。
3)Compliance with Law(法令遵守)– 例文③
一方当事者のみに、Compliance with Law(法令遵守)の義務を定めています。
Compliance with Law.
Seller and its Subsidiaries have all material franchises, permits, licenses, consents and other governmental or regulatory authorizations and approvals necessary for the conduct of their respective business as now being conducted by it unless the failure to possess such franchises, permits, licenses, consents and other governmental or regulatory authorizations and approvals, individually or in the aggregate, could not reasonably be expected to have a Material Adverse Effect.
(訳):
法令遵守
売主とその子会社は、フランチャイズ権、許可、ライセンス、同意並びに政府又は規制当局の認可及び承認を所持しないことが、個別に若しくは全体として、重大な悪影響を与えると合理的に想定できない場合を除き、すべての重要なフランチャイズ権、許可、ライセンス、同意並びに現在行っている各事業の遂行に必要な政府又は規制当局の認可及び承認を有している。
(注):
*Subsidiariesは、子会社という意味です。affiliate(関連会社)との区別に注意しましょう。
*materialは、重要な、重大なという意味です。代表的な契約用語です。
*governmental or regulatory authorizations and approvalsは、政府又は規制当局の認可及び承認という意味です。
*the conduct of their respective businessは、(売主とその子会社の)各事業の遂行という意味です。
*the failure to possessは、~を所持しないという意味です。failureについて、詳しくはfailureの意味と例文をご覧ください。
*individually or in the aggregateは、個別に若しくは全体としてという意味です。
*could not reasonably be expectedは、合理的に想定できないという意味です。
*Material Adverse Effectは、重大な悪影響という意味です。詳しくは、material breachの意味と例文をご覧ください。
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