Delivery Terms(引渡し条項)

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英文契約書の販売店契約などで、引渡し条件の条項として置かれるDelivery Termsについて解説します。Delivery Termsの例文をとりあげ、要点と対訳をつけて基本表現に注釈を入れました。

1.解説:

1)Delivery Termsとは

Delivery Termsとは、英文契約書において、

製品の引渡し条件などを定めた引渡し条項

のことを意味します。

Delivery Terms(引渡し条項) は、製品の販売や引渡しを目的とする英文契約書である:

Sales Agreement(売買契約)

Master Sales Agreement(売買取引基本契約)

Distribution Agreement(販売店契約)

Manufacturing Agreement(製造委託契約)

などの主要条項として置かれます。

2)Delivery Terms(引渡し条項)で規定される内容

Delivery Terms(引渡し条項)で規定される内容は、たとえば、以下のような事柄があげられます。

①売主または製造者は、引渡し期限までに指定の引渡し場所にて、買主指定の運送人に製品を引き渡すこと。

製品の引渡しについて、遅延が発生する場合は、事前に売主は買主に通知すること。

③買主が請求書の支払期限を徒過している場合は、売主または製造者は、製品の引渡し義務を負わない。

④買主が運送人を指定しなかったり、製品の受領を拒絶する場合は、重大な債務不履行となる。

3)契約レビューの重要ポイント:Delivery Termsの交渉とリスクマネジメント

Delivery Terms(引渡し条項)は、売買契約、販売店契約、製造委託契約など、物品の移動が伴うあらゆる英文契約において、当事者間のリスクと費用の分担を決定する非常に重要な条項です。

この条項の理解が不十分だと、予期せぬ費用負担や紛争の原因となる可能性があります。

特に国際取引においては、Incoterms(インコタームズ)を正しく理解し、契約に反映させることが不可欠です。

ア.危険負担(Risk of Loss)と所有権(Title)の移転時点の明確化

なぜ重要か?:

「危険負担」とは、製品が損害を受けたり、滅失したりした場合に、その損害をどちらの当事者が負うか、というリスクの所在を指します。

「所有権」は、製品に対する法的な権利を指し、通常は所有権移転後に製品を自由に処分できます。

これらの移転時点が曖昧だと、輸送中の事故や製品の紛失が発生した際に、どちらの当事者が責任を負うかで大きな紛争に発展します。

確認すべきポイント:

同時移転が原則:

例文にあるように、risk of loss and title will pass to Distributor at which time(この時点で危険負担と所有権が販売店に移転する)と、危険負担と所有権は同時に移転するのが一般的です。

Incotermsの活用:

国際売買では、Incoterms(International Commercial Terms)を用いるのが最も明確で推奨されます。

Incotermsは、貨物の引渡し地点、危険負担の移転地点、費用分担、輸出入通関の義務などを明確に定義した国際ルールです。例えば、

FOB(Free On Board):

売主は指定された船積港で本船に貨物を積み込むまで、費用と危険を負担します。

貨物が本船の舷側を越えた時点で、危険負担と費用が買主に移転します。

例文のFOBは、米国国内取引における地点渡しを指しますが、国際取引ではこの「本船渡し」が一般的です。

EXW(Ex Works):

売主は工場や倉庫で製品を買主に引き渡すだけで、その後のすべての費用と危険は買主が負担します。

買主にとって最も負担が大きい条件です。

DDP(Delivered Duty Paid):

売主は指定された仕向地まで製品を運び、輸入通関手続きと関税を含むすべての費用と危険を負担します。

売主にとって最も負担が大きい条件です。

具体的地点の明記:

Incotermsを使用する場合でも、「FOB [都市名/港名]」のように、具体的な地点を必ず明記しましょう。これにより、解釈の余地をなくします。

所有権の留保(Reservation of Title / Retention of Title):

代金が全額支払われるまで所有権が売主に留保される旨を規定することもあります。

特に、代金支払前に製品が引き渡される場合に、売主の保護のために検討されます。

例文の「the transfer price shall be paid in full prior to release to the carrier」は、所有権移転前に支払いを行うことで、売主のリスクを低減する条項の一例です。

イ.納期(Delivery Date)と遅延時の対応

なぜ重要か?:

納期は、製品がビジネスに組み込まれる時期を決定し、プロジェクトの進行や販売計画に直結します。

納期遅延は、買主の事業に大きな損害を与える可能性があります。

確認すべきポイント:

明確な納期設定:

具体的な日付、または「注文受領後X日以内」のように明確な基準で納期を規定しましょう。

遅延通知義務:

売主(製造者)に遅延が発生した場合の買主への速やかな通知義務を課しましょう。

遅延損害金(Liquidated Damages for Delay):

納期遅延が発生した場合に、遅延日数に応じて買主が請求できる損害賠償額(通常は、製品価格の一定割合)を事前に規定することを検討しましょう。

これにより、損害額の立証の困難さを回避し、迅速な解決を図れます。

解除権:

一定期間以上の遅延が発生した場合に、買主が契約を解除できる権利を規定することも重要です。

ウ.運送手配と費用(Freight, Insurance and Shipping Expenses)の分担

なぜ重要か?:

運送にかかる費用(運賃、保険料、通関費用など)は高額になることがあり、どちらの当事者が負担するかは、製品の最終コストに直接影響します。

確認すべきポイント:

Incotermsとの連動:

費用分担はIncotermsの定義と密接に関連しています。

選択したIncotermsの条件に基づき、費用分担が明確に規定されているかを確認しましょう。

例文の「All freight, insurance and other shipping expenses from the F.O.B. point, will be paid by Distributor.」は、FOB条件に基づく費用分担を明確にしています。

保険:

輸送中の貨物に対する保険をどちらの当事者が手配し、費用を負担するのかを明確にしましょう。

通常、危険負担を負う側が保険を手配します。

梱包(Packing):

製品の適切な梱包義務(suitably packed for shipment – 例文)や、梱包費用の負担についても規定しましょう。

エ.引渡し後の検査(Inspection)と受領拒否

なぜ重要か?:

引渡し後、買主は製品が契約に適合しているかを確認する必要があります。

製品に不適合があった場合の対応を明確にすることは、紛争防止に繋がります。

確認すべきポイント:

検査期間と方法:

買主が製品を受領後、何日以内にどのような方法で検査を行うべきか(例:within X business days)を規定しましょう。

不適合通知義務(Notice of Non-Conformity):

検査で不適合が発見された場合、買主が売主に速やかに通知する義務を規定しましょう。

通知が遅れた場合、買主が不適合を主張できなくなる(waiver)リスクがあります。

受領拒否の条件:

買主が製品の受領を拒否できる具体的な条件(例:重大な不適合、数量不足)を明確にし、拒否された場合の売主の対応義務(例:交換、修理、返金)を規定しましょう。

Delivery Termsは、物流とリスク管理の根幹をなす条項であり、契約交渉の中でも特に周到な検討が求められます。

当事者双方にとって、費用、リスク、義務のバランスが適切であるかを、Incotermsの知見も踏まえながら慎重に確認することが、円滑な国際取引を実現するための鍵となります。

 

2.例文と基本表現:

(注):基本表現をハイライトし注釈をいれています。

Delivery Terms(引渡し条項)– 例文

Distribution Agreement(販売店契約)からです。①運送人引渡し前の代金全額支払い、②FOBベンダーの指定地渡し(注記参照)と危険負担・所有権の販売店への移転、③FOB地点からの費用の販売店負担、が規定されています。

Delivery Terms

All Products delivered pursuant to the terms of this Agreement shall be suitably packed for shipment, and marked for shipment to Customer’s destination specified in the applicable purchase order. Unless otherwise agreed in writing by Vendor, the transfer price shall be paid in full prior to release to the carrier or forwarding agent. Shipment will be F.O.B. the factory or final assembly plant of Vendor’s subcontractor, at which time risk of loss and title will pass to Distributor. All freight, insurance and other shipping expenses from the F.O.B. point, will be paid by Distributor.

(訳):

引渡し条項

本契約の条件に従って引渡しされるすべての製品は、出荷用に適切に梱包され、該当の注文書に指定された顧客の配送先が出荷用に表示される。 ベンダーが別途書面にて合意する場合を除き、運送人に引渡しする前に製品代金全額支払われるものとする。 出荷条件は、F.O.B. にてベンダーの下請事業者の工場または最終組立工場の渡しとする。この時点で危険負担と所有権が販売店に移転するF.O.B.地点からの貨物、保険、その他の運送費は、すべて、販売店の負担とする。

(注):

deliveredは、引渡しされるという意味です。

pursuant to the terms of this Agreementは、pursuant to(~に従ってthe terms of this Agreement(本契約の条件の組み合わせで、本契約の条件に従ってという意味です。

shipmentという用語が、数か所で使われていますが出荷という意味です。最後のshipmentは文脈より出荷条件と訳しています。

*the applicable purchase orderは、該当の注文書という意味です。 

*Unless otherwise agreed in writingは、別途書面にて合意する場合を除きという意味です。 詳しくは、unless otherwise の関連表現と例文をご覧ください。

the transfer priceは、直訳すると移転価格ですが、意訳(製品代金)しています。

paid in fullは、全額支払われるという意味です。

*prior to release to the carrier or forwarding agentは、prior to release to(に引渡しする前にthe carrier or forwarding(運送人の組み合わせで、運送人に引渡しする前にという意味です。release(放出)は、意訳(引渡し)しています。the carrier or forwarding agent運送人は、類語を並べた強調表現です。 

この例文のF.O.B. は、米国内取引のため、本船渡しでなく、ベンダーの指定地点渡しとなります。

*subcontractorは、下請事業者という意味です。 

*at which timeは、この(=F.O.B. the factory or final assembly plant of Vendor’s subcontractor)時点でという意味です。

*risk of loss and titleは、危険負担と所有権という意味です。

*pass toは、~に移転するという意味です。

 

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