Distribution Agreement(販売店契約)の解説と要点

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Distribution Agreement(販売店契約)とはどのような契約なのか、Agency Agreement(代理店契約)との違い、その一般条項主要条項の要点は何か、について解説します。

(目次)
1.Distribution Agreement(販売店契約)とは
2.Agency Agreement(代理店契約)との違い
3.Distribution Agreement(販売店契約)の構成と要点
 1)Recitals(前文)
 2)Definitions(定義)
 3)Appointment as Distributor(販売店の選任)
 4)Orders(注文)
 5)Prices(価格)
 6)Delivery and Inspections(引渡しと検査)
 7)Payment(支払い)
 8)Term and Termination(期間及び解除)
 9)Vendor’s Pre-Sales and Post-Sales Support
   (ベンダの販売前及び販売後のサポート)
 10)Distributor’s Translation Rights and Use of Vendor
   Information(販売店の翻訳権及びベンダーの情報の
   利用)
 11)Trademark License(商標のライセンス)
 12)Warranty and Limitation of Liability(保証と責任
   制限)
 13)Intellectual Property Infringement(知的財産権の
   侵害)
 14)Exhibit(別紙)
4.契約レビューの重要ポイント:販売店契約の交渉における
      戦略的視点

1.Distribution Agreement(販売店契約)とは

Distribution Agreement(販売店契約)とは、

製品の売主であるベンダーが、ある地域における買主である販売店に対して、製品を継続的に売り渡す契約

のことをいいます。

ある地域で1社だけを販売店として契約することもあります。そのような契約は独占的販売店契約と呼ばれます。

Distribution Agreement(販売店契約)は、継続的な売買契約である基本契約をその中心的な内容とする契約です。

具体的な売買契約は、

販売店とベンダーとの間の注文書と注文請書の授受

によって成立します。

2.Agency Agreement(代理店契約)との違い

Distribution Agreement(販売店契約)は、Agency Agreement(代理店契約) との区別がポイントです。

Distribution Agreement(販売店契約):

買主の販売店は、売主であるベンダーから製品を買い取り、その在庫リスクをとります。(=売買は、ベンダーと販売店との間で成立し、販売店がベンダーに製品の代金を支払います)

販売店は、製品を顧客に再販売して利益を得ます。

Agency Agreement(代理店契約):

代理店は、本人たるベンダーの代理人となります。売買は、ベンダーと顧客との間で成立し顧客がベンダーに製品の代金を支払います。

代理店は、自ら製品の在庫リスクを持つことなく、製品の販売活動をベンダーのために行います。(=代理店がベンダーと顧客を仲介します) 顧客との間で売買が成立することにより、ベンダーから仲介手数料を得ます。

3.Distribution Agreement(販売店契約)の構成と要点

Distribution Agreement(販売店契約)において、基本となる一般条項主要条項の構成は、以下の項目1)から項目14)のとおりです。

これら各項目は、英文契約書の契約条項に該当します。

(ご参考):

一般条項主要条項については、くわしくは、

英文契約書の構成(structure of contract )

General Provisions(一般条項)とPrincipal provisions(主要条項)

をご覧ください。

以下に、各条項についての解説が続きます。

1)Recitals(前文):

Recitals(前文)とは、契約の締結に至るまでの経緯、背景などを説明した条文のことです。

ここでは、売主たるベンダー買主たる販売店が、

Distribution Agreement(販売店契約)を締結するに至った経過

を記載します。

(ご参考):

前文については、くわしくは、

RecitalsとWITNESSETHとWhereas clauseの意味と例文

をご覧ください。

2)Definitions(定義):

Definitions(定義)とは、

当事者間で、用語の意味を正確に定義することにより、その解釈に食い違いがおきないようにする

ための条項です。

Distribution Agreement(販売店契約)においては、以下の用語がキーワードとなります。

項目3)Appointment as Distributor(販売店の選任)に定める
製品のユーザーたるCustomer(顧客)

項目6)Delivery and Inspections(引渡しと検査)に定めるDelivery Date(引渡し日)

別紙に記載するProduct(製品)

項目3)Appointment as Distributor(販売店の選任)に定めるTerritory(販売地域)

これらの用語の定義を行います。

(ご参考):

用語の定義については、くわしくは、

Definitions(定義条項)

をご覧ください(例文あり)。

3)Appointment as Distributor(販売店の選任)

Territory(販売地域)におけるCustomer(顧客)に対するProduct(製品)販売活動を目的として、

ベンダーが販売店を選任する

ことを取り決めます。

販売店の選任にあたっては、

独占的販売店なのか、それとも

非独占的販売店なのか

が区別されます。

4)Orders(注文)

販売店が発行する注文書とベンダーが発行する注文請書の授受により、

両当事者間に個別の製品の売買契約が成立する

ことを取り決めます。

5)Prices(価格)

販売店に対する製品の価格の貿易取引条件を定めます。

たとえば、インコタームズ2010のEXW(倉庫引渡し)などです。

(ご参考):

貿易取引条件については、

Incoterms(インコタームズ)の解説と例文

をご参考にしてください。

6)Delivery and Inspections(引渡しと検査)

以下について、取り決めます。

①ベンダーは、約定の引渡し日までに販売店に製品を引き渡すこと。

②販売店は、製品の受領後、速やかに受入れ検査を実施し、指定日以内に、受入れ検査の結果をベンダーに通知すること。

(ご参考):

製品の引渡しについては、くわしくは、

Delivery Terms(引渡し条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

受入れ検査については、くわしくは、

Inspection(検査条項)

をご覧ください(例文あり)。

7)Payment(支払い)

以下について、取り決めます。

①ベンダーは、販売店に対し、注文の請求書を送付すること。

②販売店は、請求書の受領後、指定日までに送金により代金を支払うこと。

③支払期限までに支払いがない場合は、遅延損害金が発生すること

④製品の税金は販売店負担とすること。

(ご参考):

代金の支払いについては、

Payment Terms(代金支払条件の条項)

をご参考にしてください(例文あり)。

8)Term and Termination(期間及び解除)

以下について、取り決めます。

①契約の有効期間自動更新の条件。

②いずれかの当事者に重大な債務不履行があり、是正の通知後も債務不履行が解消しない場合契約解除

③債務不履行による解除または債務不履行事由が生じた場合の期限の利益喪失

不可抗力が生じた場合の契約解除

(ご参考):

契約の有効期間自動更新については、くわしくは、

Term/Duration(契約期間条項)

term and renewal(契約期間の更新条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

重大な債務不履行については、くわしくは、

material breachの意味と例文

をご覧ください。

(ご参考):

契約解除については、くわしくは、

Termination(契約解除条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

期限の利益喪失については、くわしくは、

Acceleration(期限の利益喪失条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

不可抗力については、くわしくは、

Force Majeure(不可抗力条項)

をご覧ください(例文あり)。

9)Vendor’s Pre-Sales and Post-Sales Support(ベンダーの販売前及び販売後のサポート)

ベンダーは、販売店に対して、

無償で販売前と販売後のサポートを提供する
(例):
 ・カタログや技術資料などの販売資料の提供
 ・質問に対する回答、など

ことを取り決めます。

10)Distributor’s Translation Rights and Use of Vendor Information(販売店の翻訳権及びベンダーの情報の利用)

以下について、取り決めます。

①販売店は、ベンダーから提供を受けた販売資料や技術資料Territory(販売地域)の顧客に対して頒布するため、日本語に翻訳できること

ベンダーのホームページなどの情報を、製品の販売資料等に利用できること。

11)Trademark License(商標のライセンス)

ベンダーが販売店に対して、

販売店の販売活動のために、ベンダーの商標の使用を、非独占的に無償の条件にて、許諾すること、及びその他使用許諾条件

について取り決めます。

(ご参考):

商標のライセンスについては、くわしくは、

Trademark License(商標ライセンス条項)

をご覧ください(例文あり)。

12)Warranty and Limitation of Liability(保証と責任制限)

以下について、取り決めます:

①Warranty(保証):

ベンダーは、販売店又は顧客が製品を受領後、一定期間、製品がカタログの仕様に合致することを保証するが、それ以外の明示・黙示の保証は排除すること。

②Limitation of Liabilities(責任制限):

ベンダーの重要な契約違反を除き、販売店がベンダーの債務不履行により被った損害賠償の制限

(ご参考):

明示・黙示の保証の排除については、くわしくは、

implied warrantyとexpress warrantyの意味と例文

Warranty Disclaimer(保証の排除・免責条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

責任制限については、くわしくは、

Limitation of Liability(責任制限条項)

をご覧ください(例文あり)。

13)Intellectual Property Infringement(知的財産権の侵害)

販売店の製品の利用又は販売について、

第三者の知的財産権を侵害すると第三者から請求や訴訟があった場合は、ベンダーが防御し補償する

ことを取り決めます。

(ご参考):

知的財産権については、

Intellectual Property Rights(知的財産権条項

をご参考にしてください(例文あり)。

14)Exhibit(別紙)

別紙にて、

項目2)Definitions(定義)で定義する

ベンダーが提供するProduct(製品)の詳細

を規定します。

(ご参考):

別紙については、

exhibitとappendixの意味と例文

をご参考にしてください。

4.契約レビューの重要ポイント:販売店契約の交渉における戦略的視点

Distribution Agreement(販売店契約)は、企業が海外市場へ進出する際や、自社製品の流通チャネルを確立する上で不可欠な契約です。

ベンダー(製品供給者)と販売店(製品販売者)の双方にとって、自社のビジネスモデルとリスク許容度に応じて、各条項を戦略的に交渉することが成功の鍵となります。

以下に、契約レビュー時に特に注意すべき重要ポイントと交渉の視点を挙げます。

ア.独占性(Exclusivity)の有無とその影響

なぜ重要か?:

販売店契約が「独占的」か「非独占的」かは、両当事者の事業戦略とリスクに大きく影響します。

独占的販売店契約(Exclusive Distribution Agreement):

特定の地域(Territory)において、ベンダーがその製品を販売店以外の第三者に販売することを制限する契約です。

販売店は市場での競争が少なくなるため、投資インセンティブが高まります。

非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution Agreement):

ベンダーが同じ地域で複数の販売店を置くことができる契約です。

ベンダーはより広範な販売機会を得られますが、販売店にとっては競争が激しくなります。

確認すべきポイント:

範囲の明確化:

独占性を定める場合、その範囲(製品、地域、顧客タイプなど)を極めて明確に定義しましょう。

例外規定:

ベンダーが独占性を与える場合でも、特定の顧客(例:グローバルアカウント)や販売チャネル(例:オンライン直販)については例外的に自社で販売できる権利を留保する条項(Reservation of Rights)を設けることが多いです。

販売店側は、これらの例外が自社の事業に過度に影響しないかを確認しましょう。

独占性の維持条件:

販売店に一定の販売目標(Sales Quotas)達成義務や、マーケティング活動への投資義務などを課し、これらの条件を満たさない場合は独占性を解除できる旨を規定することが一般的です。

ベンダー側は、これらの条件が十分に厳格であるか、販売店側は現実的に達成可能であるかを検討しましょう。

イ.販売店への義務(Distributor’s Obligations)の具体性

なぜ重要か?:

販売店がベンダーの製品を効果的に販売するためには、具体的な活動義務を負うことが不可欠です。

これらの義務が不明確だと、期待通りの販売成果が得られないリスクがあります。

確認すべきポイント:

販売促進活動:

販売店がどのようなマーケティング活動(例:展示会出展、広告宣伝、ウェブサイト運営)を行うか、その費用負担、年間マーケティング計画の提出義務などを明確にしましょう。

最低購入数量(Minimum Purchase/Sales Quantity):

ベンダー側は、販売店に年間または四半期ごとの最低購入数量を設定し、これを達成しない場合は契約解除や独占性の解除ができる条項を設けることが多いです。

販売店側は、この数量が市場環境や自社の能力に見合っているか慎重に検討しましょう。

在庫管理:

販売店が適切な在庫水準を維持する義務、またはベンダーが在庫管理について指導できる権利などを規定する場合があります。

報告義務:

販売実績、市場情報、競合情報など、ベンダーへの定期的な報告義務を明確にしましょう。

ウ.知的財産権(Intellectual Property Rights)の保護

なぜ重要か?:

製品の商標、著作権、特許などの知的財産権はベンダーの最も重要な資産です。

販売活動を通じてこれらの権利が侵害されないよう、適切な保護措置を講じることが不可欠です。

確認すべきポイント:

商標の使用許諾(Trademark License):

販売店がベンダーの商標を使用できる範囲(製品の販売促進のみか、企業名への使用は可能かなど)、期間、地域、使用方法(ガイドライン遵守義務)を明確にしましょう。

通常は「非独占的(non-exclusive)」かつ「無償(royalty-free)」の許諾となります。

第三者による侵害への対応(Intellectual Property Infringement):

第三者による知的財産権侵害が発生した場合の対応(通知義務、ベンダーによる防御・補償 – 項目13)、費用負担、訴訟対応の役割分担を明確に規定しましょう。

逆コンパイル等の禁止:

販売店が製品をリバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルすることを明確に禁止する条項を含めることが一般的です。

エ.契約期間と終了(Term and Termination)後の措置

なぜ重要か?:

契約の期間設定や終了事由、そして終了後の措置は、予期せぬビジネスの中断やリスクを回避するために重要です。

確認すべきポイント:

契約期間と更新:

初期契約期間が適切か、自動更新の条件(Term and Termination – 項目8)が自社に有利かを確認しましょう。

通常の解除事由:

重大な債務不履行(material breach)、破産など、一般的な解除事由とその是正期間(cure period)を明確にしましょう。

都合による解除(Termination for Convenience):

一方または双方が理由を問わず契約を解除できる条項です。

これはベンダー側に柔軟性を与えますが、販売店側は突然の契約終了による損失(在庫、未償却の投資など)を補償する規定(Termination Feeなど)を求めるべきです。

契約終了後の措置:

在庫の買い戻し(Buy-Back Option/Obligation):

約終了時にベンダーが販売店の残存在庫を買い取る義務または選択権を規定することは、販売店のリスク軽減に繋がります。

顧客情報の引継ぎ:

契約終了後、ベンダーが既存顧客情報を引き継ぎ、サポートを継続できるよう、販売店に顧客情報の提供義務を課すことがあります。

秘密保持義務の存続:

契約終了後も秘密保持義務が存続する旨を明確にしましょう(Survival条項)。

オ.準拠法と紛争解決(Governing Law and Dispute Resolution)

なぜ重要か?:

紛争が発生した場合の解決プロセスに直接影響します。

確認すべきポイント:

準拠法(Governing Law):

どの国の法律が契約に適用されるか。

ベンダーは自国法を、販売店は自国法を主張することが多いため、交渉が必要です。

紛争解決方法:

訴訟(Litigation)か、仲裁(Arbitration)か。

仲裁の場合、仲裁機関、仲裁地、言語などを明確にしましょう。

これらのポイントは、販売店契約が単なる売買の継続ではなく、ベンダーと販売店間の長期的なパートナーシップを形成するものであることを示しています。

各条項の意味を理解するだけでなく、その背景にあるビジネスリスクと機会を捉え、自社の利益を最大限に守るための交渉戦略を練ることが、契約成功への鍵となります。

 

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