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英文契約書で使われる表現のhold itself out asについて解説します。 例文をとりあげ、要点と対訳をつけ、例文中の基本表現に語注をつけました。
1.解説:
1)hold itself out asとは
hold itself out as ~は、
~として振る舞う
という意味です。
hold itself out(振る舞う)とas(として)を組み合わせた表現です。
hold itself out to be~という表現もありますが、も同じく、
~として振る舞う
という意味です。両者に意味上の大きな違いはありません。
2)hold itself out as ~の使われ方
hold itself out as ~(~として振る舞う)は、特に、英文契約書の
Relationship of the Parties(当事者の関係条項)
で多く使われます。そして、多くは、
shall not hold itself out as ~の形で用いられ、
~として振る舞ってはならない
という禁止の表現になります。
以下のような使い方です。(青字部分)
『契約の両当事者は、独立の当事者の関係にある。一方当事者が、他方当事者に対して、代理権やその他の権限を与えるものでなく、他方当事者はそのような権限を有すると振る舞ってはならない。』(下記の例文①、例文②、例文③をご覧ください)
3)契約レビューの重要ポイント:「振る舞い」を巡るリスクと注意点
hold itself out as という表現は、契約当事者間の法的関係の明確性、そして予期せぬ法的責任の発生防止において、極めて重要な役割を担います。
このフレーズを含む条項は、単なる形式的な文言ではなく、将来の法的紛争や損害賠償リスクを回避するための強力な防御壁となり得るため、契約レビュー時には以下の点を徹底的に精査することが不可欠です。
ア.「代理権」発生の防止と法的責任の遮断
なぜ問題になるのか?:
契約書に明確な規定がない場合や、実際の「振る舞い」が独立性を欠くと判断されると、たとえ契約書で代理関係を否定していても、「黙示の代理権」や「表見代理」といった法理に基づき、一方の当事者(例えば、販売代理店)が行った行為について、もう一方の当事者(例えば、メーカー)が法的責任を負わされる重大なリスクが生じます。
これは、相手方の債務不履行や不法行為が、自社の責任として追及されることを意味し、計り知れない損害につながる可能性があります。
確認すべきポイント:
契約当事者が「互いに独立した契約者であること」を明記した上で、「代理人」「従業員」「パートナー」「共同事業者」などとして「振る舞ってはならない」旨が明確に規定されているかを確認しましょう(例文①参照)。
これにより、外部への誤解を最大限に防ぎます。
特に、「いかなる義務を負わせる権限も有さず、またそのように振る舞ってはならない」という文言(例文②、例文③参照)は、相手方が自社の名のもとに第三者と契約を締結したり、自社に債務を負わせたりするリスクを厳格に排除するために不可欠です。
万が一、相手方がこの規定に違反して「振る舞った」場合に、その行為によって生じた損害は相手方が全て負担する旨の責任条項も併せて確認し、自社の責任が拡大しないよう強固な防御策を講じましょう。
イ.外部(第三者)への明確なメッセージング
なぜ重要なのか?:
この条項は、契約当事者間だけでなく、契約外の第三者に対しても、当事者間の関係性を明確に伝える効果を持ちます。
例えば、販売代理店が「あたかもメーカーの社員であるかのように」振る舞うと、顧客はメーカーが直接責任を負うと誤解する可能性があります。
確認すべきポイント:
契約の性質上、一方の当事者が特定の権限(例:販売代理権)を持つ場合でも、その権限の範囲が明確に定義されていること、そして定義された範囲外では「振る舞ってはならない」と規定されていることが極めて重要です。
実際のビジネス運営において、自社の担当者や、契約相手の担当者が、この契約条項の趣旨を理解し、対外的な「振る舞い」が契約内容に合致しているかを継続的に監督する体制を構築することも重要です。
契約書は完璧でも、実態が伴わなければ意味がありません。
ウ.税務・会計上の影響
なぜ重要なのか?:
法的に「代理関係」や「共同事業体」と見なされると、税務上の課税関係や会計処理が大きく変わる可能性があります。
意図しない関係性で処理されると、予期せぬ税金や罰則が発生する深刻なリスクに直面します。
確認すべきポイント:
契約書に記載された当事者関係の規定が、意図する税務・会計処理と整合性が取れているかを、契約締結前に必ず専門家(会計士、税理士)に相談して確認しましょう。
特に、国際取引においては、各国の税法が異なるため、この確認は絶対的に必要です。
hold itself out as は、契約当事者の「顔」や「立場」を定める重要なフレーズです。
この条項を軽視することは、予期せぬ法的責任の波にさらされることを意味します。
契約レビューにおいては、このフレーズが自社のリスクを適切に管理し、明確なビジネス関係を構築するために最大限に機能しているかを、戦略的な視点を持って確認することが、極めて重要となります。
2.例文と基本表現:
(注):hold itself out asは、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。
1)hold itself out as ~(~として振る舞う)- 例文①
Relationship of the Parties (当事者の関係条項)からです。買主も売主も、相手方の代理人として振る舞ってはなりません。
Purchaser and Seller acknowledge and agree that the relationship established between the parties pursuant to this Contract is only that of a seller and a purchaser of property. Neither Purchaser nor Seller is, nor shall either hold itself out to be, the agent, employee, joint venturer or partner of the other party.
(訳):
買主と売主は、本契約に従って当事者間に確立された関係が、資産についての売主と買主としての関係のみであることを確認し合意する。買主も売主も、相手方の代理人、従業員、合弁事業者又はパートナー組合員ではなく、かかる関係者として振る舞ってはならない。
(注):
*acknowledge and agreeは、確認し合意するという意味です。詳しくは、acknowledgeの意味と例文をご覧ください。
*the relationship established between the partiesは、当事者間に確立された関係という意味です。
2)hold itself out as ~(~として振る舞う)- 例文②
Relationship of the Parties (当事者の関係条項)からです。いずれの当事者も、他の当事者を拘束する権限を有するとして振る舞ってはなりません。
Notwithstanding anything herein to the contrary, each party hereto shall be and remain an independent contractor and nothing herein shall be deemed to constitute the parties as partners; neither party will have the authority or hold itself out as having the authority to bind the other.
(訳):
本契約の別段の定めにもかかわらず、本契約の各当事者は、引き続き独立した契約者であり、パートナーとしての当事者を構成するとはみなされない。 いずれの当事者も、他の当事者を拘束する権限を有しておらず、かかる権限を有するとして振る舞ってはならない。
(注):
*Notwithstanding anything herein to the contraryは、本契約の別段の定めにもかかわらずという意味です。詳しくは、notwithstandingの意味と例文をご覧ください。
*independent contractorは、独立した契約者という意味です。
*be deemed toは、~とみなされるという意味です。詳しくは、deemとconsiderの意味と例文をご覧ください。
3)hold itself out as ~(~として振る舞う)- 例文③
Relationship of the Parties (当事者の関係条項)からです。いずれの当事者も、相手方の名義で他の契約を締結する権限を有するとして振る舞ってはなりません。
Neither Party to this Agreement has, and shall not hold itself out as having, any authority to enter into any contract or create any obligation or liability on behalf of, in the name of, or binding upon the other Party to this Agreement.
(訳):
本契約のいずれの当事者も、本契約の相手方当事者に代わって、相手方当事者の名義で若しくは相手方当事者を拘束して、他の契約を締結する又は義務若しくは責任を生じさせる権限を有さず、かかる権限を有するとして振る舞ってはならない。
(注):
*enter intoは、(契約を)締結するという意味です。
*on behalf ofは、~に代わって、~の代理としてという意味です。くわしくは、on behalf ofの意味と例文をご覧ください。
*in the name ofは、~の名義でという意味です。
*binding uponは、~を拘束してという意味です。
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