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英文契約書で使われる特有の表現であるin and toについて解説します。例文もとりあげています。
1.解説:
1)in and toとは:
英文契約書では、通常、in and toは、
~に関する
~に関して
という意味で使われます。
in and toは、英文契約書に特有の表現です。
日常的な場面では、ほとんど使用されません。
2)in and toのニュアンス:
in and toは、特許、著作権、商標などの知的財産権に関する契約でよく見られます。
対象となる権利の全てについて、その所属や移転を強調する狙いがあります。
すなわち、in and toは、
~に関する一切の
~に関するすべての
という意味合いがあります。
in(~の中に)とto(~に)という二つの前置詞を組み合わせることで、権利の範囲を明確にします。
in and toの次にくる権利の対象については、
有形・無形のあらゆる資産となります。
例えば、不動産、特許、著作権、商標、契約、債権、株式などです。
3)in and toとよく似た表現:
in and toとよく似た表現に、
with respect to
in relation to
pertaining to
など、いくつかあります。
これらの表現も、通常、
~に関して
~に関する
と訳され、英文契約書で広く使用されます。
しかし、
in and toのように、とくに権利の所属や移転を強調する意味合いはありません。
4)in and toは重複的な表現:
以下の例文の解説をご参照ください。
5)In and Toが補完する知的財産権譲渡の厳格性
in and toは、「all rights, title, and interest」(一切の権利、権原、および利益)とセットで用いられることで、権利の譲渡の確実性を最大限に高める役割を果たします。
これは、コモンロー(英米法)における権利移転の厳格性を反映したものです。
ア. 前置詞による権利の包括性の確保
権利譲渡の文脈で、inとtoの二つの前置詞を組み合わせるのには、それぞれの前置詞が持つニュアンスで、権利の包括性を補完し合う目的があります。
in(~の中に):
権利の「所有」や「内部」に焦点を当て、権利そのもの(例:ソフトウェアに含まれる権利)の譲渡を指します。
to(~に):
権利の「対象」や「帰属先」に焦点を当て、権利の対象物(例:特許技術への権利)の譲渡を指します。
この二つを併用することで、譲渡対象物が持つ全ての権利を、形式的にも実質的にも、譲受人に残らず移転するという厳格な意思を示します。
イ. 知的財産権譲渡における法的狙い
知的財産権(IP)は無形であり、その権利範囲の曖昧さが紛争の種になりやすいため、譲渡の際は「将来、譲渡人(元の権利者)が何らかの権利を留保していると主張する余地を一切残さない」ことが極めて重要です。
重複のメリット:
all(全て)という形容詞ですでに包括性は示されていますが、in and toを重ねて使うことで、譲渡の意思表示を二重に、かつ法的形式に則って強調し、将来の紛争を防ぐ「保険」としての役割を果たします。
実務上の確認点:
このフレーズを見たら、譲渡される側(買い主やライセンシー)は、「in and toの後に続く対象物(例:the Software)に関する全ての権利が、本当に自分に移転されている」と理解して間違いありません。
以下の三つの例文から分かるように、
in and toは、主に知的財産権に関する契約で使われます。
1)例文①
Customer acknowledge and agree that the Company shall retain all rights, titles and interests in and to the Software and the Copyrighted Assets including all Intellectual Property Rights.
訳:
顧客は、会社が、知的財産権を含み、ソフトウェア及び著作権を有する資産に関する一切の権利、権原及び利益を保持することを確認して合意する。
2)例文②
The Seller hereby assigns all rights, title, and interest in and to the patented technology to the Buyer.
訳:
売主は、本発明に関する全ての権利、権原、および利益を買い主に譲渡する。
3)例文③
All right, title, and interest in and to the copyright of this book shall be transferred to the publisher.
訳:
本書の著作権に関する全ての権利、権原、および利益は、出版社に移転される。
解説:
in and toは、
以下のような理由により重複的な表現と言えます。
これら三つの例文では、
all rights, title, and interest (全ての権利、権原、および利益)
とあり、次に
in and to the patented technology(本発明に関する全ての)
がくるので、全ての、の意味が重複しているといえます。
*rights, title, and interest については、こちらをご覧ください。
これは、知的財産権に関する契約では、
権利の移転において、可能な限りのすべての権利を譲渡することを明確にして、
権利の包括性を強調したいという狙いがあるためです。
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