Language(言語条項)

英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)

英文契約書の一般条項として設けられることのあるLanguage(言語条項)について、とりあげます。 併せて、Language(言語条項)のいくつかの例文をとりあげ、訳をつけました。例文中の基本表現には注記を入れました。

1.解説:

1)Language(言語条項)とは?

英文契約書では、英語版以外にも、現地語の翻訳版が作成されて調印されることがあります。

その場合、英語版と翻訳版との間で内容の不一致があった場合に、どちらの言語版を優先させるかという問題が生じます。

Language(言語条項)とは、

作成・調印済みの英文契約書の英語版と翻訳版との間で、内容の不一致が見つかった場合に、どちらの言語版を優先させるかという問題についての取扱い

を定めた契約条項です。

英文契約書においては、Language(言語条項)は、翻訳版よりも英語版の契約書が優先されるとする条文が一般的です。(次のパートの例文①~例文③をご覧ください)

しかし、現地語版の契約書が優先するという規定も当事者の合意があれば可能です。

2)契約レビューの重要ポイント:Language条項のリスクと交渉の進め方

Language(言語条項)は、国際取引において複数の言語版の契約書が存在する場合に、法的な解釈の統一性を確保するために不可欠な条項です。

この条項の設計を誤ると、意図しない解釈の相違が生じ、将来的に重大な紛争に発展するリスクがあります。

特に、英語が主要言語ではない国との取引においては、この条項は慎重に検討されるべきです。

ア.法的優先順位の明確化

なぜ重要か?:

複数の言語版が存在する場合、どの言語版が法的拘束力を持つ「正本」であるかを明確にしなければ、解釈の不一致が致命的な問題につながります。

確認すべきポイント:

「英語版優先」原則の確認:

ほとんどの英文契約書では、例文①例文②例文③のように「英語版が優先する(English language version shall be controlling / prevail)」という規定が置かれます。

これは、英語が国際ビジネスの共通語であり、多くの法務専門家が英語での契約書作成・審査に慣れているためです。

自社が英語を母国語としない場合でも、国際取引の慣習上、英語版優先が受け入れられることが多いです。

「不一致の場合(inconsistencies / conflict / discrepancies)」の規定:

翻訳版との間に「不一致」「矛盾」「食い違い」があった場合にのみ、英語版が優先する旨が明確にされているかを確認します。

これにより、形式的な文言の違いではなく、実質的な解釈の相違に焦点を当てることができます。

イ.翻訳版の法的位置づけと実務上の注意点

なぜ重要か?:

翻訳版が「公式な参考資料」なのか、それとも「法的拘束力を持つ副本」なのかによって、その取り扱いが変わります。

特に、現地法や現地のビジネス慣習によっては、現地語版の重要性が増す場合があります。

確認すべきポイント:

翻訳版の作成と共有:

契約書が複数の言語で作成される場合、各当事者が「等しく有効なコピーを保持する(Each Party shall have one equally valid copy of the Agreement in each language)」(例文③)と定めることがあります。

これは、両当事者が自国語で内容を理解するための配慮です。

「両方の言語が等しく有効(Both languages shall be equally effective)」の文言:

例文③のように、一度は「両方の言語が等しく有効」としながら、「不一致がある場合は英語版が優先する」という二段構えの表現を用いることがあります。

これは、翻訳版の利便性を認めつつ、最終的な法的権威は英語版に帰属させるというバランスを取るためのものです。

翻訳の品質管理:

翻訳版を作成する際は、専門家による正確な翻訳が不可欠です。

誤訳は、後の法的紛争の引き金となる可能性があるため、安易な翻訳ツールの使用は避け、信頼できる翻訳者に依頼すべきです。

ウ.現地法と強制規定の考慮

なぜ重要か?:

一部の国では、現地の消費者保護法言語に関する強制規定により、現地語版の契約書に特定の法的効力が付与される場合があります。

確認すべきポイント:

準拠法との関係:

契約の準拠法(Governing Law)が、言語条項の効力にどのように影響するかを確認しましょう。

例えば、一部の国では、特定の消費者契約について現地語版の効力を義務付ける場合があります。

現地での契約履行と紛争解決:

契約を履行する場所や、紛争が発生した場合の裁判所・仲裁地(Jurisdiction / Arbitration)が非英語圏である場合、現地の法務担当者や裁判官が英語版を十分に理解できないリスクも考慮する必要があります。

このため、実務上は、たとえ英語版が優先されても、現地語版の理解と運用が極めて重要になります。

エ.交渉におけるアプローチ

英語版優先を原則とする:

国際取引においては、英語版優先が最も一般的かつリスクが少ないアプローチです。

自社が英語版を十分に理解できる体制であれば、この原則を主張すべきです。

相手方の要求への対応:

相手方(特に非英語圏の企業)が現地語版の優先を強く求める場合、その理由を深く理解し、以下の代替策を検討します。

第三者による認証翻訳の義務付け:

両言語版がともに「正本」とされる場合、信頼できる第三者機関による認証翻訳(certified translation)を義務付けることで、翻訳の正確性を担保します。

特定の文言の現地語版優:

契約の特定のごく一部(例:重要な定義や金額など)のみ現地語版を優先させることを検討する。

ただし、これは複雑性を増すため、あまり推奨されません。

紛争解決条項との連携:

万が一、言語間の解釈の不一致が紛争に発展した場合に備え、紛争解決条項(Dispute Resolution)を明確に定め、どの言語で紛争が解決されるか(例:The language of the arbitration shall be English.)を規定することも重要です。

Language条項は、単なる形式的な文言ではなく、契約書全体の法的安定性に関わる重要な条項です。

複数の言語版が存在する場合には、そのリスクを十分に認識し、実務的な運用も考慮に入れた上で、最適な規定を設けることが、国際ビジネスにおける成功の鍵となります。

実務上の視点:

言語条項(Language)は、国際取引において契約書が複数の言語で作成・翻訳される場合に、どの言語で書かれた文面を最終的な正本とするかをあらかじめ合意しておく一般条項という条項タイプ(clause type)であり、万が一の解釈対立時において「言語間の微妙なニュアンスの違いや誤訳による解釈の不一致を排除し、法的解釈の拠り所を常に1つの言語に統一して契約全体の法的安定性を維持する機能(specific function)」を担っています。

リーガルチェックの際は、この条項が自社に「どのような解釈上の防衛権や手続き上の確実性という権利(rights of use)」を付与しているかを精査します。

具体的には、自社が契約の審査や運用を慣れ親しんだ英語ベースで一本化し、翻訳の不備による予期せぬリスクを完全に排除したい立場であれば、解釈の主導権を確実に握るために「いかなる翻訳版との間に矛盾や食い違いが生じた場合であっても、現地語版などの他言語版の効力を一切認めず、一貫して英語版のみを唯一の支配的な解釈基準として優先させる権利(rights of use)」(例文1例文2)を確保することが、多言語が交錯する国際ビジネスにおいて法的な予測可能性を最大化するための必須の防衛線となります。

言語条項(Language)と「準拠法・裁判管轄」の比較・連携:

言語条項(Language)と密接に連動する他の一般条項、特に準拠法条項(Governing Law)や裁判管轄条項(Jurisdiction)との機能的な違いと実務的な連携を正しく整理しておくことは非常に重要です。

本条項である「言語条項(Language)」は、契約の解釈の拠り所となる『言葉(テキストそのもの)』を確定させるために存在します。

これに対し、「準拠法条項(Governing Law)」はその言葉を解釈する際の『法律(ルール)』を決め、「裁判管轄条項(Jurisdiction)」は実際に紛争を処理する『裁判所(場所)』を確定させます。

いくら言語条項で「英語版が優先する」と合意できても、裁判管轄が非英語圏の外国裁判所になり、準拠法もその国の法律になってしまえば、現地の裁判官や弁護士が「優先されるはずの英語版契約書」を現地の法律に基づいて、現地語に再翻訳しながら審理を進めるという、極めて歪でリスクの高い状況に陥ります。

この「優先言語(言葉)」「適用法(ルール)」「管轄裁判所(場所)」という3つの要素が、互いに矛盾なく、実務上最も機能しやすい組み合わせで設計されているかを見極めることこそが、国際取引における究極のリスク管理となります。

2.例文と基本表現:

(注):基本表現をハイライトしています。

1)Language(言語条項)- 例文①

The English language version of this Agreement shall be controlling in all respects and shall prevail in case of any inconsistencies with translated versions, if any.

(訳):

本契約の英語版はあらゆる点で優先し、翻訳版との不一致がある場合には、英語版が優先するものとする。

(注):

*controllingは、支配するという意味ですが、優先すると意訳しています。

*in all respectsは、あらゆる点でという意味です。

*prevailは、優先するという意味です。詳しくは、prevail、supersede、overrideの意味と例文をご覧ください。

*inconsistenciesは、不一致という意味です。

2)Language(言語条項)- 例文②

This Agreement has been executed in the English language which is the official language of this Agreement. In the event of any conflict of interpretation between any foreign language translation and this English language version, this English language version shall prevail.

(訳):

本契約は、本契約の公用語である英語で締結されている。 外国語の翻訳と本英語版の間に解釈矛盾がある場合、本英語版が優先するものとする。

(注):

has been executedは、(本契約が)締結されているという意味です。

*any conflictは、矛盾という意味です。

*interpretationは、解釈という意味です。

3)Language(言語条項)- 例文③

This Agreement shall be written in English and Japanese. Each Party shall have one equally valid copy of the Agreement in each language. Both languages shall be equally effective. In case of any discrepancies between the two languages, the English version shall prevail.

(訳):

本契約は英語と日本語で作成されるものとするす。 各当事者は、各言語にて、本契約の等しく有効なコピーを1部保持する。 両方の言語は等しく有効とする2つの言語に矛盾がある場合は英語版が優先される

(注):

*validは、有効なという意味です。

*effectiveも、同じく、有効なという意味です。

*any discrepanciesは、矛盾という意味です。

 

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