License Agreement(ライセンス契約)の解説と要点

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License Agreement(ライセンス契約)とは、どのような契約なのか、その基本となる一般条項主要条項の要点は何かについて、解説します。

(目次)
1.License Agreement(ライセンス契約)とは
2.License Agreement(ライセンス契約)の構成と要点
 1)Recitals(前文)
 2)Definitions(定義)
 3)Grant of License(許諾)
 4)Royalties(ロイヤリティ)
 5)Term and Termination(期間及び解除)
 6)Licensee’s Record-Keeping Obligations
   (ライセンシーの記録保存義務)
 7)Licensor’s Audit Rights(ライセンサーによる監査権)
 8)Technical Training or Assistance by Licensor
   (ライセンサーによる技術訓練又は支援)
 9)Confidential Information(秘密保持)
 10)Government Approvals(政府の許可)
 11)Warranty Disclaimer and Limitation of Liability
   (非保証及び責任制限)
 12)Intellectual Property-Related Liability(知的財産権
   に関する責任)
 13)Exhibit A(別紙 A)
 14)Exhibit B(別紙 B)
 15)Exhibit C(別紙 C)
3.License Agreementにおける実務上の重要点と交渉
  の視点

1.License Agreement(ライセンス契約)とは

License Agreement(ライセンス契約)とは、

知的財産の利用を相手方に許諾する契約

のことを意味します。そして、

知的財産の利用を許諾する側が

 Licensor(ライセンサー、実施許諾者)

知的財産の利用の許諾を受ける側が

 Licensee(ライセンシー、実施権者)

と呼ばれます。

License Agreement(ライセンス契約)において、ライセンサーライセンシーに利用を許諾する対象は、

特許発明、考案、意匠、商標やサービスマークなど、

知的財産法で保護されているものだけではありません。

知的財産法の保護が及ばないものである:

ノウハウ、トレードシークレット、データーベースなど

も、License Agreement(ライセンス契約)の対象となります。

2.License Agreement(ライセンス契約)の構成と要点

License Agreement(ライセンス契約)において、基本となる一般条項と 主要条項の構成、以下の項目1)から項目13)のとおりです。

これら各項目は、英文契約書の契約条項に該当します。

(ご参考):

一般条項主要条項については、くわしくは、

英文契約書の構成(structure of contract )

General Provisions(一般条項)とPrincipal provisions (主要条項)

をご覧ください。

以下に、各条項の要点についての解説が続きます。

なお、ここでは、ライセンサーの技術を、ライセンシーに利用許諾するケースを前提としています。

1)Recitals(前文):

Recitalsは、英文契約書に置かれる前文という意味です。

前文とは、契約の締結に至るまでの経緯、背景などを説明した条文のことをいいます。

ここでは、ライセンサーライセンシーが、

License Agreement(ライセンス契約) を締結するに至った経過

を記載します。

(ご参考):

前文については、くわしくは、RecitalsとWITNESSETHとWhereas clauseの意味と例文をご覧ください。

2)Definitions(定義):

Definitions(定義)とは、

当事者間で、用語の意味を正確に定義することにより、その解釈に食い違いがおきないようにする

ことを狙いとする条項です。

License Agreement(ライセンス契約)においては、以下の用語がキーワードとなります。

・ライセンサーがライセンスする別紙 Bに記載の
Licensed Technology(ライセンスされる技術)

・ライセンシーがライセンスを受けて製造・販売する製品である別紙 Aに記載のRoyalty Product(ロイヤリティ製品)

項目4)Royalties(ロイヤリティ)に定めるロイヤリティ製品の販売明細や、ロイヤリティの計算を記載した
Royalty Peport(ロイヤリティレポート)

項目3)Grant of License(許諾)に定める
Territoty(地域)

これらの用語の定義を行います。

(ご参考):

用語の定義については、くわしくは、Definitions(定義条項)の記事をご覧ください(例文あり)。 

3)Grant of License(許諾):

ライセンサーがライセンシーに対して、

ロイヤリティ製品の製造や販売について、Territoty(地域)において、ライセンス技術を使用できる権利を許諾すること、及びその条件

について取り決めます。

(ご参考):

許諾については、くわしくは、Grant of License(ライセンス許諾条項)をご覧ください(例文あり)。 

4)Royalties(ロイヤリティ)

ライセンシーがライセンサーに対して、

ロイヤリティ製品について、ロイヤリティレポートに基づいてのロイヤリティ金額を支払うことや、その支払い条件(詳細は別紙 Cに記載)

について取り決めます。

(ご参考):

ロイヤリティについては、くわしくは、Royalties(ロイヤリティ条項)をご覧ください(例文あり)。

5)Term and Termination(期間及び解除)

以下について、取り決めます:

契約の有効期間自動更新の条件

いずれかの当事者に重大な債務不履行があり、是正の通知後も債務不履行が解消しない場合契約解除期限の利益喪失

③不可抗力が生じた場合の契約解除

(ご参考):

契約の有効期間自動更新については、くわしくは、

Term/Duration(契約期間条項)

term and renewal(契約期間の更新条項)

をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

契約解除については、くわしくは、Termination(契約解除条項)をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

期限の利益喪失については、くわしくは、Acceleration(期限の利益喪失条項)をご覧ください。

(ご参考):

不可抗力については、くわしくは、Force Majeure(不可抗力条項)をご覧ください(例文あり)。

6)Licensee’s Record-Keeping Obligations(ライセンシーの記録保存義務)

以下について、取り決めます:

ライセンシーが支払うロイヤリティ額の根拠となる記録の保持と保存期間

(ご参考):

記録保存については、くわしくは、Record Keeping(記録保存条項)をご覧ください(例文あり)。

7)Licensor’s Audit Rights(ライセンサーによる監査権)

以下について、取り決めます:

ライセンサーが、ライセンシーが支払うロイヤリティ額の計算が正確であるかどうかを監査することができること

(ご参考):

監査権については、くわしくは、Audit Rights(監査権条項)をご覧ください(例文あり)。

8)Technical Training or Assistance by Licensor(ライセンサーによる技術訓練又は支援)

以下について、取り決めます:

ライセンシーは、ライセンサーに、ロイヤリティ製品の製造や販売について、技術訓練や支援の提供を要求することができること。

9)Confidential Information(秘密保持)

ライセンサーとライセンシーとの間での、

秘密情報についての秘密保持目的外利用の禁止

を取り決めます。

(ご参考):

秘密保持については、くわしくは、Confidentiality(秘密保持条項)をご覧ください(例文あり)。

10)Government Approvals(政府の許可)

以下について、取り決めます:

ライセンシーは、地域において、ロイヤリティ製品の営業活動に必要な行政の許可の取得の責任を負うこと。

11)Warranty Disclaimer and Limitation of Liability(非保証及び責任制限)

以下について、取り決めます:

①Warranty Disclaimer(非保証)では、ライセンサーは、ライセンス技術の保証は行わないこと。

②Limitation of Liabilities(責任制限)では、重要な契約違反を除き、一方当事者が他方当事者の債務不履行により被った損害賠償の制限について。

(ご参考):

非保証については、くわしくは、Warranty Disclaimer(保証の排除・免責条項)をご覧ください(例文あり)。

(ご参考):

責任制限については、くわしくは、Limitation of Liability(責任制限条項) をご覧ください(例文あり)。

12)Intellectual Property-Related Liability(知的財産権に関する責任)

以下について、取り決めます:

①第三者からの知的財産権の侵害クレームがある場合に、ライセンサーがライセンシーを補償すること。

②第三者による知的財産権の侵害があった場合の対処・手順

(ご参考):

知的財産権に関する責任については、くわしくは、Intellectual Property Rights(知的財産権条項)をご覧ください(例文あり)。 

Exhibit A(別紙 A)

別紙 Aにて、

項目2) Definitions(定義)で定義する

Royalty Product(ロイヤリティ製品)

の詳細を記載します。

(ご参考):

別紙については、exhibitとappendixの意味と例文をご参考にしてください。 

Exhibit B(別紙 B)

別紙 Bにて、

項目2) Definitions(定義)で定義する

Licensed Technology(ライセンスされる技術)

の詳細を記載します。 

Exhibit C(別紙 C)

別紙 Cにて、

項目4)Royalties(ロイヤリティ)で取り決める

ロイヤリティ製品に係わるロイヤリティの支払金額とその支払い条件

の詳細を記載します。

3.License Agreementにおける実務上の重要点と交渉の視点

License Agreementは、知的財産という企業の競争力の源泉を扱うため、その交渉は非常に複雑かつ周到なものとなります。

上記で網羅された各条項の基本的な理解に加え、以下の点に注目することで、より実務的かつリスクを軽減した契約締結を目指すことができます。

ア.許諾範囲(Scope of License)の厳密な定義

「Grant of License(許諾)」条項は、ライセンス契約の核心であり、許諾される権利の範囲をいかに明確に、かつ抜け穴なく定義するかが最も重要です。

独占性(Exclusivity)の有無:

ライセンスが独占的(exclusive)か、非独占的(non-exclusive)かは、ライセンシーの事業展開とライセンサーの追加ライセンス機会に大きく影響します。

独占的ライセンスの場合、ライセンサーは特定の地域や分野で自身も実施できないため、その対価として高いロイヤリティが設定されることが一般的です。

対象技術・製品の特定:

「Licensed Technology」や「Royalty Product」の定義は、別紙で詳細に定めるだけでなく、将来の改良技術(Improvements)や派生製品をどう扱うかについても明確にする必要があります。

例えば、ライセンシーが改良を加え、その改良技術の権利がどちらに帰属するか、またその改良技術を第三者にライセンスできるかなど、細かな取り決めが求められます。

使用目的(Purpose of Use)の限定:

ライセンスされた技術を何のために使用できるのか(例:製造のみ、販売のみ、研究開発のみなど)を具体的に限定することで、ライセンサーは不測の利用を防ぎ、ライセンシーは自身の事業範囲を明確にできます。

地域(Territory)と期間(Term):

ライセンスの効力が及ぶ地域と期間は、その価値を大きく左右します。

特に地域は、国単位か、特定の州や地域に限定するかなど、詳細に規定します。

期間は、対象技術のライフサイクルや市場の変化を考慮して設定します。

再許諾(Sublicense)の可否:

ライセンシーが第三者にライセンス技術を再許諾できるかどうかは、ライセンシーの事業戦略にとって重要です。

許諾する場合でも、ライセンサーの事前承諾(prior written consent)を必要とする、再許諾先の条件、ロイヤリティの分配などを細かく定めることが一般的です。

イ.ロイヤリティ(Royalties)の設計と監査

ロイヤリティはライセンサーの主要な収入源となるため、その計算方法、支払い条件、そして監査権は非常に重要です。

計算方法の明確化:

「ロイヤリティ製品の売上」をベースにする場合、「純売上高(Net Sales)」を定義し、割引、返品、税金、運送費などを控除対象とするかを明確にします。

また、最低ロイヤリティ(Minimum Royalty)や、特定の売上目標達成によるロイヤリティ率の変更(Tiered Royalty)なども検討されます。

支払い通貨と為替リスク:

国際ライセンスの場合、支払い通貨と為替レートの変動リスクをどちらが負担するかを明確にします。

監査権の実行可能性:

「Licensor’s Audit Rights」条項は、ロイヤリティ計算の透明性を確保するために不可欠です。

監査頻度、監査費用負担、監査後の調整方法などを具体的に定めることで、実効性のある監査を可能にします。

ライセンシーは、不必要な事業活動への干渉を防ぐため、監査の範囲や頻度、秘密保持義務の遵守などを交渉します。

ウ.知的財産権の維持・保護と侵害時の対応

ライセンスされた知的財産の維持・保護責任は、ライセンサーとライセンシーの双方にとって重要な関心事です。

権利の維持・管理:

ライセンスされた特許や商標の登録維持費用、年金(annuities)支払いの責任をどちらが負うか、出願や維持に関する決定権をどちらが持つかを明確にします。

第三者による侵害(Third-Party Infringement)への対応:

ライセンス技術が第三者によって侵害された場合、どちらが侵害訴訟を提起する権利を持つか、その費用負担、回収した損害賠償金の分配などを定めます。

通常はライセンサーが主導しますが、ライセンシーにも訴訟の参加権や、ライセンサーが行動しない場合の代替権を与えることがあります。

ライセンス技術の有効性に関する保証:

ライセンサーが、ライセンスする知的財産が有効な権利であること、かつ第三者の権利を侵害しないことをどの程度保証するか(Non-Infringement Warranty)は、ライセンシーにとって非常に重要です。

ライセンサーは通常、「現状有姿(as is)」での提供や「非保証(Warranty Disclaimer)」を主張しますが、ライセンシーは最低限、知的財産権侵害時の補償(Indemnification)を求めます。

エ.紛争解決(Dispute Resolution)

知的財産に関する紛争は専門性が高いため、通常の商事紛争とは異なる紛争解決手段が検討されることがあります。

仲裁(Arbitration)の活用:

国際ライセンス契約では、裁判ではなく仲裁を選択することが一般的です。

仲裁は非公開で行われ、専門家が仲裁人となるため、知的財産に関する複雑な争点に適しています。

また、仲裁判断は国際的な強制執行が比較的容易であるというメリットもあります。

仲裁地の選択、仲裁規則(例:ICC Rules, LCIA Rules, JCAA Rules)の指定、仲裁人の人数と選任方法などを明確に定めます。

調停(Mediation):

正式な訴訟や仲裁に進む前に、調停(Mediation)を義務付ける条項を設けることもあります。

これは、第三者の助言を得て友好的な解決を模索する機会を提供し、コストと時間を節約する効果が期待できます。

License Agreementの交渉は、単に契約書を作成するだけでなく、知的財産の価値を最大化し、関連するリスクを最小化するための周到なプロセスです。

これらの重要点を深く理解し、自社の立場と目的に合わせて契約条項を交渉することで、より強固な知的財産戦略を構築できるでしょう。

 

 

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