Non-Disclosure Agreement(英文秘密保持契約)の解説と実務上の要点

英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)

ビジネスの検討や提携の初期段階で必ずと言っていいほど締結されるのが、Non-Disclosure Agreement(NDA:秘密保持契約)です。

NDAは「とりあえず結んでおくもの」と軽視されがちですが、開示した情報が「目的外」に使われたり、三者間での情報の流れを整理し損ねたりすると、取り返しのつかない損失を招く恐れがあります。


本記事では、基本条項の解説に加え、複雑な三者契約への対応や、実務上の防衛策について詳しく解説します。


1.Non-Disclosure Agreement(NDA)とは

Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約、略称:NDA)とは、取引の検討などのために開示される秘密情報について、その取り扱いルールを定める契約です。

Confidentiality Agreement(CA)とも呼ばれます。

この契約の核心は、以下の3点にあります。

・秘密情報の範囲を特定する

情報の用途を「検討目的」のみに制限する
許可された受領者の範囲(誰までなら見せていいか)を画定する

実務のポイント:二者契約から「三者契約」へ変更するには

プロジェクトに親会社やコンサルタント、共同事業者が加わる際、二者間のNDAを三者契約に書き換える必要が生じます。

単に名称を増やすだけでなく、以下の機械的な変更と、役割の定義が必要です。

【機械的な表記の変更】

・一方の当事者:either party → each party(各当事者)

・相手方当事者:the other party → the other parties(他方当事者)

【三者間での役割と情報の流れ】

三者契約では「誰が情報の源泉(開示者)か」によって責任の重さが変わります。

1)A → B → C の流れ(再開示型):
BはCを管理する責任(Cの違反はBの違反とみなす条項)を負うのが一般的です。

2)A + B → C への開示(共同プロジェクト型):
AとBが共同開示者となり、Cに対して「二人の承諾なしに使うな」と釘を刺す構造です。

3)A ⇔ B ⇔ C(相互開示型):
全員が「開示者」であり「受領者」となるため、最も複雑です。

三者間での秘密情報の共有と責任の所在を明確にするNDA(秘密保持契約)のイメージ


2.Non-Disclosure Agreement(NDA)の構成と要点

秘密保持契約において、基本となる主要条項の構成は以下の通りです。

単なる定型文として流すのではなく、それぞれの条項が「自社のどの情報を、いつまで、どこまで守るのか」を意識して確認することが重要です。

1)Recitals(前文):開示の「目的」を特定する

契約締結の背景を記載します。

NDAにおいて前文が重要なのは、「目的(Purpose)」を定義するからです。秘密情報は、ここで定められた「特定の取引の検討」のためだけに提供されるものであり、それ以外の用途(競合製品の開発など)に使われることを防ぐ根拠となります。

2)Definitions(定義条項):秘密情報の「範囲」を画定する

Confidential Information(秘密情報)の定義を行います。

・書面による特定:
開示時に「Confidential」と明示されたものに限定するか、あるいは「性質上秘密と理解されるべきもの」まで広げるかが交渉のポイントです。

・口頭情報の扱い:
実務では「口頭で開示した後、〇日以内に書面で追認したものに限る」というルールを置くことで、情報の範囲を明確にし、事後の紛争を防ぎます。

3)Use of Confidential Information(秘密情報の用途制限):目的外使用の禁止

受領当事者が、秘密情報を「前文で定めた目的」以外に使用することを厳格に禁止します。

どんなに優れた技術情報であっても、自社の別プロジェクトに流用することは契約違反となることを明文化します。

4)Non-disclosure Obligation(秘密保持義務):第三者開示の禁止と存続期間

受領した情報を第三者に漏洩しない義務を課します。

・存続期間(Survival):
契約が終了した後も、秘密保持義務は一定期間(例:3年〜5年、あるいは情報の性質によっては永久)存続させるのが一般的です。

5)Non-confidential Information(秘密情報の例外条項):義務を負わない範囲

以下の情報は、秘密保持義務の対象から除外されます(証明責任は受領側が負います)。

なお、例外条項に該当することの証明責任は、情報を受け取った受領側(Receiving Party)が負うのが通例です。

・公知の情報:
開示時にすでに世間に知られていたもの。

・自ら保有:
開示前から受領側が独自に持っていたもの。

・第三者から入手:
守秘義務を負わない第三者から正当に入手したもの。

・独自開発:
開示された情報とは無関係に自ら開発したもの。

NDA(秘密保持契約)における、秘密情報と例外条項に該当する情報の仕分け・特定プロセスのイメージ
6)Scope of Receiving Party(受領当事者の範囲):「知る必要」のある者への限定

秘密情報を開示できる範囲を定義します。受領当事者の役員や従業員であっても、無制限に見せて良いわけではなく、「本目的のために知る必要がある(Need to know)」者に限定することが鉄則です。

また、外部の弁護士や会計士に開示する場合の条件もここで定めます。

7)Ownership of Confidential Information(秘密情報の所有権):権利の帰属

秘密情報を開示したとしても、その情報の所有権や知的財産権が開示者に留保されることを確認します。

「開示後も、秘密情報は開示者の排他的な財産である」と明記し、受領側が勝手に自分のものとして扱うことを禁じます。

8)No Warranty(非保証条項):情報の正確性に関する免責

開示者は、提供する秘密情報の正確性や完全性について、何ら保証しない(現状有姿:As-isでの開示)ことを定めます。

これにより、開示側は「情報が間違っていたために損害が出た」と訴えられるリスクを回避します。

9)No Grant of Rights(権利の留保):ライセンスの否定

情報の開示は、特許権や著作権などのライセンス(使用権)を許諾したことを意味しない、という念押しです。

「見せること(NDA)」と「使わせること(ライセンス)」は別物であるという一線を画します。

10)Injunctive Relief(差し止め条項):緊急時の法的救済

秘密保持義務の違反(またはその恐れ)があった場合、金銭賠償だけでは損害を回復できない(Irreparable harm)ことが多いため、裁判所に対して速やかに「差し止め(Injunctive Relief)」を請求できる権利を認める条項です。

11)Return of Information(秘密情報の返還):関係終了後の措置

プロジェクトが終了したり、開示者から請求があったりした場合、受領者は速やかに秘密情報(コピーを含む)を返還または破棄しなければなりません。

実務では、「破棄したことを証明する書面(破棄証明書)」を差し入れるよう義務付けるのが一般的です。

NDA(秘密保持契約)終了時における、秘密情報の確実な返還と破棄証明のプロセスイメージ


3.秘密保持条項(Confidentiality)の具体的な書き方と例文

解説した11の項目を、実際の契約書に落とし込む際のイメージを整理します。

単に「秘密を守る」と書くだけでなく、実務では以下のような具体的な「義務の対象」と「期間」の明記が不可欠です。

【具体的な条項案のポイント】

・情報の特定:
Any and all technical, financial or business information…(あらゆる技術的、財務的、または営業上の情報…)と包括的に記載しつつ、書面には「Confidential」の表示を求めることで、管理の徹底を促します。

・返還または破棄の選択:
Upon the request of Disclosing Party…(開示者の請求に基づき…)返還だけでなく「修復不可能な形での廃棄」を選択肢に入れ、その証明書(Certificate of Destruction)を提出させる文言を加えるのが現代的なスタンダードです。

(※具体的な例文の詳細や実務ポイントについては、以下のリンク先の解説記事でさらに深く掘り下げています。あわせてご活用ください)
解説記事:
Confidentiality(秘密保持条項)の例文と実務ポイント


4.NDAでも見落としがちな「紛争解決」の重要性

秘密保持の内容がいかに緻密であっても、万が一情報の漏洩が起きた際に「どこの国の、どの裁判所」で争うかが決まっていなければ、実効性が失われます。

・Governing Law(準拠法):
どの国の法律に基づいて契約を解釈するか。

・Jurisdiction(管轄裁判所):
実際に訴訟を提起する場所。

・戦略的視点:
情報漏洩の被害を受ける可能性が高い側(開示者側)としては、自国の裁判所や法律を指定することが、初動対応のスピードを左右する極めて重要なリスク管理となります。
逆に、受領側が他国の場合は、執行のしやすさを考慮して仲裁(Arbitration)を選択する場合もあります。

(※紛争解決条項の詳しい選択基準については、以下の解説も併せてご確認ください)
解説:
Dispute Resolution(紛争解決条項)の基本と例文


まとめ:

NDA(秘密保持契約)は、ビジネスパートナーシップを築くための「信頼の礎」です。

単なる形式的な手続きとして済ませるのではなく、三者契約への対応や「破棄証明書」の取得、そして最終的な紛争解決手段までを見据えることが、貴社の貴重な知財を守ることに直結します。

本記事の各チェックポイントを、ぜひ実務の防衛策としてお役立てください。

英文秘密保持契約(NDA)による信頼構築と強固な法的保護のイメージ



英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。リーズナブルな料金・費用で承ります。


お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。

受付時間: 月~金 10:00~18:00

メールでのお問合せは、こちらから。

ホームページ:宇尾野行政書士事務所