prevail、supersede、overrideの意味と例文

英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)

英文契約書によく出るprevailsupersedeoverrideについて解説します。いくつかの例文に要点と対訳と語注をつけました。

1.解説:

1)prevail、supersede、overrideとは?

英文契約書では、prevailsupersedeoverrideは、いずれも、

~に優先する、~に優先適用する

という意味で用いられます。

prevailsupersedeoverrideは、以下のような状況が考えられる場合に、将来、起こりうる紛争をさけるために、事前に特定のひとつの契約書や、 契約書の特定の条項を、優先して適用させる場合に、使います。

複数の契約書や契約関係が存在し、それらの間に内容の食い違いが予想されるとき。(たとえば、基本契約書と個別契約書、前に作成した契約書と後で作成した契約書、契約書と合意書、契約書と口頭約束、などです。)

ひとつの契約書でも、本契約と別紙資料との間で、食い違いが予想されるとき。

ひとつの契約書でも、互いに食い違う条項の存在が、予想されるとき。

2)契約レビューと交渉における優先関係条項の重要性

prevail、supersede、overrideといった語句を用いて定める「優先関係条項(Order of Precedence ClauseやEntire Agreement Clauseの一部として規定されることも多い)」は、

複数の文書間や契約書内の異なる部分間で矛盾が生じた際に、どの規定が法的拘束力を持つかを明確にする、極めて重要な役割を担います。

この条項の設計は、将来の紛争を防ぎ、当事者の意図を正確に反映するために不可欠です。

ア.なぜ優先関係を明確にする必要があるのか?

解釈の統一性確保:

複数の文書(例:基本契約書と個別契約書、添付資料、発注書、口頭合意など)が存在する場合、それぞれの内容が完全に一致することは稀です。

優先関係が不明確だと、どの条項が適用されるべきかで解釈の対立が生じ、紛争に発展するリスクが高まります。

「全体合意条項(Entire Agreement Clause)」との連携:

多くの英文契約書には、「本契約が当事者間の最終的かつ完全な合意である」旨を定めるEntire Agreement Clauseが設けられます。

これは、本契約より前の口頭または書面による合意(prior written or oral understandings or agreements)をsupersede(優先し無効化)する機能を持つため、本条項が過去の合意に「取って代わる」ことを明確にするために、supersedeが頻繁に用いられます(例文③例文④)。

特定文書への重要性の付与:

例えば、詳細な技術仕様を定める「別紙(ScheduleやExhibit)」と、一般的な契約条件を定める「本文(Body of the Agreement)」が存在する場合、どちらを優先させるかで、ビジネス上のリスク負担が大きく変わります。

イ.優先関係条項の種類と使い分け、交渉のポイント

優先関係条項は、主に以下のパターンで使われます。

契約書本文と添付書類・別紙間の優先関係(prevail):

売主/サービス提供者側:

一般的な契約条件(terms and conditions)を定める契約書本文を優先させたいと考えることが多いです(例文①のthe terms and conditions herein shall prevail)。

これは、本文が広範な法的リスクをカバーし、一方的な責任を負わないよう慎重に作成されているためです。

買主/顧客側:

詳細な要求事項や仕様が記された「別紙」を優先させたいと考える場合があります。

特に、製品の機能やサービスレベルが厳密に定められている場合、仕様書が本文に優先すると規定することで、自社の期待通りの品質・性能を確保しようとします。

交渉ポイント:

どちらを優先させるかは、取引の性質や当事者の力関係によって決まります。

技術的な詳細が極めて重要であれば別紙優先、一般的な法的枠組みを重視するなら本文優先となります。

複数言語版の契約書間の優先関係(prevail):

国際取引においては、英語の契約書と現地の言語の翻訳版が存在することがあります。

この場合、「英語版が優先する(English language version shall prevail)」と規定するのが一般的です(例文②)。

交渉ポイント:

自社が英語を母国語としない場合でも、国際ビジネスの慣習上、英語版優先を受け入れることが多いですが、翻訳の正確性には細心の注意を払う必要があります。

事前の合意・取り決めとの優先関係(supersede):

「本契約が、これまでの全ての書面または口頭による合意に取って代わり、優先する」という形で用いられます(例文③例文④)。

これは、本契約が当事者間の最新かつ完全な意思表示であることを明確にし、過去の不明確な約束や交渉履歴が法的拘束力を持たないようにするために不可欠です。

交渉ポイント:

契約締結前に電子メールや議事録などで交わされた重要な合意事項がある場合、それらを本契約の「別紙」として明確に組み込むか、本条項の例外として明記しない限り、法的効力を失う可能性があるため注意が必要です。

その他の書面・通信との優先関係(override):

注文書(purchase order)、見積書(quotation)、請求書(invoice)など、日常の取引で交換される様々な文書と契約書との関係を定める際に用いられます(例文⑤)。

「本契約がこれらの文書の矛盾する条項にoverrideする」と規定することで、取引基本契約などが包括的な法的枠組みとして機能することを明確にします。

交渉ポイント:

通常、売買基本契約などの上位契約が個別の注文書等に優先すると規定しますが、個別の取引ごとに特有の条件がある場合は、その限りではない旨の例外規定を設けることを検討する場合があります。

ウ.「不一致(inconsistencies, conflict, discrepancies)」の定義

これらの条項において「不一致」が発生した場合に優先関係が適用されますが、「不一致」の定義自体が不明確だと問題になります。

単なる補足的な情報と、真に矛盾する内容との区別が重要です。

例えば、「本契約の記載と別紙の記載が矛盾する場合は、本契約が優先する。ただし、別紙の記載が本契約の記載を具体化または補足するに過ぎない場合は、この限りではない」のように、より詳細に規定することもあります。

優先関係条項は、契約書の法的安定性予見可能性を高める上で極めて重要な規定です。

契約書を作成・レビューする際は、これらの条項が自社の意図とリスク許容度を正確に反映しているか、また、将来起こりうる様々な状況下でどのように機能するかを慎重に検討する必要があります。

2.例文と基本表現:

(注):prevail例文①例文②)、supersede例文③例文④)、override例文⑤)は、青文字で示し、基本表現をハイライトしています。

1) prevail の例文①

契約の条件と添付資料との優先関係を規定しています。

In the event of any inconsistencies between the terms and conditions of this Agreement and a schedule attached hereto, the terms and conditions herein shall prevail.

(訳):

本契約の条件と、本契約に添付される付属書類との間に矛盾がある場合本契約の条件優先するものとする。

(注):

*In the event ofは、~の場合にはという意味です。

*the terms and conditionsは、(契約の)条件という意味です。

*schedule は、(契約の)貼付資料付属資料を意味します。詳しくは、exhibitとappendixの意味と例文をご覧ください。

*heretoは、本契約に(=to this agreement)を意味します。hereinは、本契約の(=in this agreement)を意味します。 詳しくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。

2) prevail の例文②

英語の本契約と他の翻訳言語の契約との優先関係を規定しています。

This contract is made in the English language. Where there is any conflict in meaning between the English language version of this agreement and any version or translation of this agreement in any other language, the English language version shall prevail.

(訳):

本契約は英語で作成される。 英語バージョンの本契約および他の翻訳言語バージョンの契約との間に意味の矛盾がある場合、英語バージョンの本契約が優先するものとする。

3) supersede の例文③

事前の合意と本契約との優先関係の例文です。

This Agreement expressly supersedes any prior written or oral understandings or agreements between the Parties with respect to the product.

(訳):

本契約は、製品に関する当事者間における事前の書面もしくは口頭の理解、または合意に明示的に優先する

(注):

*with respect to は、~に関するの意味です。

4) supersede の例文④

例文③と同様、事前の合意や書面と、本契約の優先関係です。

This Agreement replaces and supersedes any other agreement or agreements, oral or written, that the Company may have with Customers with respect to the subject matter covered by this Agreement.

(訳):

本契約は、本契約の対象となる主題に関して、当社が顧客と締結した口頭または書面の一切の契約又は合意に取って代わり優先する

(注):

*the subject matter は、(契約の)主題を意味します。詳しくは、subject matterの意味と例文をご覧ください。

5)overrideの例文⑤

本契約とそれ以外の条件等の優先関係です。

Terms of this Agreement shall override any additional, inconsistent or conflicting conditions or any purchase order, quotation, acknowledgement, invoice or other written correspondence.

(訳):

本契約の条件は追加のもしくは矛盾する条件注文書、見積もり、確認、請求書またはその他の書面による通信優先するものとする。

(注):

*inconsistent or conflictingは、矛盾する(条件)という意味です。同義語による強調表現です。

 

英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。リーズナブルな料金・費用で承ります。

お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。

受付時間: 月~金 10:00~18:00

メールでのお問合せは、こちらから。

ホームページ:宇尾野行政書士事務所