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英文契約書の売買取引基本契約書などで製造物責任の条項として置かれるProduct Liabilityについて解説します。併せて、Product Liabilityの例文をとりあげ、対訳をつけて例文中の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)Product Liabilityとは
売買取引基本契約書、販売店契約、製造委託契約、ライセンス契約など、製品や物品を目的物とする英文契約書において、製造物責任の条項としてProduct Liabilityの規定が置かれることがあります。
製造物責任とは、たとえば、
製品に欠陥があり、ユーザーに損害が生じた場合に、メーカーや販売店に過失がなくても、ユーザーは、製品の欠陥により損害が生じたことを証明さえすれば、メーカーや販売店に対して損害賠償を請求できる制度
のことをいいます。
2)Product Liability(製造物責任の条項)で取り決められる内容の例
日本の会社が輸入者の場合と、輸出者の場合のケースに分けて、それぞれ見てみます。
輸入者である日本の販売店が、海外メーカーとの間で、Product Liability(製造物責任の条項)を取り決める場合、日本の販売店に不利にならないようにするには、以下の規定内容が考えられます。
・製品の欠陥が原因となり、国内ユーザーから賠償請求があった場合、海外メーカーが販売店を補償する。
・海外メーカーは、製造物責任保険に加入し、販売店を被保険者に加える。(販売店が、海外メーカーに求償できるようするためです)
ケース② 日本の会社が輸出者の場合:
輸出者である日本のメーカーが、海外の販売店との間で、Product Liability(製造物責任の条項)を取り決める場合、日本のメーカーに不利にならないようにするには、以下の規定内容が考えられます。
・製品の欠陥が原因となって、現地ユーザーから賠償請求があった場合、海外の販売店がメーカーを補償する。
・メーカーは、販売店に対して、製品がカタログ仕様に合致することを保証する。
カタログ仕様の保証以外は、メーカーは、商品適格性や特定目的の適合性を含む一切の保証責任を負わない。(保証条項において、保証の制限と免責を明確にする)
②のケースでは、ユーザーからクレームをうけるのは、通常、海外の販売店であり、日本のメーカーと海外の販売店で契約上の合意があれば、このような取り決めも有効となりえます。
ただし、ユーザーが直接メーカーに賠償請求してきた場合には対抗できません。
3)Product Liabilityに関する契約交渉とリスク管理の重要視点
Product Liability(PL)は、企業にとって甚大な金銭的損害やブランドイメージの毀損につながりかねない、極めて重大な法的リスクです。
そのため、Product Liability条項の交渉は、単に例文を参考に文言を調整するだけでなく、法域ごとのPL法の特性、サプライチェーン全体のリスク配分、保険対応といった多角的な視点から周到に行う必要があります。
ア.PL法と契約上のリスク配分の原則
「Strict Liability(厳格責任/無過失責任)」の原則:
多くの国、特に米国やEU諸国では、Product Liabilityが「Strict Liability」、すなわち「製造者や販売者に過失がなくても、製品に欠陥があれば責任を負う」という原則に基づいています。
これは、製造物責任の対象となる企業にとって極めて重い負担となります。
契約によるリスク配分:
このような厳格なPL法が存在するからこそ、契約書を通じて当事者間でPLリスクをいかに配分するかが非常に重要になります。
上記2)のケース分けはその典型例であり、補償(Indemnification)条項や保証(Warranty)条項、責任制限(Limitation of Liability)条項が密接に関連してきます。
契約交渉の目標は、自社が不当に重い責任を負わないように、かつ、合理的な範囲で責任を負う場合はその範囲を明確にすることです。
イ.PL条項交渉における具体的な重要ポイント
責任の範囲の限定:
責任原因の明確化:
例文①にあるように、補償の対象となるPL請求が、「サプライヤーの設計上の欠陥、製造上の欠陥、不適合製品の提供、過失行為・不作為」など、自社の具体的な責任範囲に起因する場合に限定するよう明確に規定することが重要です。
これにより、相手方(ベンダー)の過失や不適切な取り扱いによるPL請求まで補償する事態を避けます。
除外事由(Exclusions)の明記:
例文①の後半にあるように、「ベンダーの材料仕様」「ベンダーの設計」「サプライヤー以外の者による改造・不適切な修理」など、自社のコントロールが及ばない事由による損害は補償の対象外とすることを明確に規定します。
これは、サプライヤー側の防御を固める上で極めて重要です。
補償義務の「手順(Procedure)」の重要性:
例文②のProcedure条項は、PL請求が発生した際の対応プロセスを定めており、非常に実務的かつ重要です。
迅速な通知義務:
補償を求める側(ベンダー)に、PL請求を知った際の迅速な通知義務を課すことで、補償する側(サプライヤー)が早期に状況を把握し、防御策を講じる機会を確保します。
防御権と和解の同意権:
補償する側(サプライヤー)が、訴訟の防御(defend)を行う権利と、和解(settle or compromise)について事前に書面による同意を与える権利(ただし、「不合理に留保または遅延させない」という但し書き付き)を確保することが極めて重要です。
これにより、サプライヤーは自身の利益を守るために、訴訟対応や和解交渉に主導的に関与できます。
協力義務:
両当事者に根本原因の特定のための協力義務を課すことで、原因究明を効率化し、将来的な欠陥の再発防止にも繋がります。
製造物責任保険(Product Liability Insurance)の活用:
例文③のProduct Liability Insurance条項は、リスクファイナンスの観点から不可欠です。
保険加入義務と付保額:
サプライヤーに適切なPL保険の加入義務と最低付保額(例:年間100万米ドル以上)を課すことで、PLリスクに対する経済的な備えを求めます。
信頼できる保険会社:
「reputable insurance company」で付保することを義務付けることで、保険会社の信頼性を確保します。
被保険者への追加(Additional Insured):
上記「ケース①」の日本の輸入者の例にあるように、販売店(ベンダー)を「被保険者に加える(add Vendor as an additional insured)」よう求めることは、販売店側が直接保険からの補償を受けられるようにする上で非常に有効な手段です。
これにより、サプライヤー経由での求償手続きの煩雑さを回避できます。
保険付保額による責任の「非限定」:
例文③の最後に「サプライヤーの損害賠償責任は、保険の付保額に限定されない」とあるように、保険はあくまで最低限の備えであり、実際の賠償責任額が保険の付保額を超える場合でも、サプライヤーが引き続き責任を負うことを明確に規定します。
これは、補償を受ける側(ベンダー)にとって非常に重要な条項です。
リコール(Recall)費用の分担:
L条項に直接含まれないこともありますが、製品の欠陥によってリコールが必要になった場合のリコール費用(recall costs)の分担についても、別途契約書で規定することが望ましいです。
特に製造委託契約などでは、リコール発生時の責任と費用負担が重要な交渉ポイントとなります。
Product Liability条項は、企業の存続をも脅かす可能性のあるリスクを管理するための中心的な条項です。
契約交渉においては、単に形式的な文言として捉えるのではなく、自社の事業の実態、製品の特性、そして関連法域のPL法制度を深く理解した上で、最も有利かつ合理的なリスク配分を目指すことが、法的リスクを効果的に管理し、ビジネスを安全に展開するための鍵となります。
2.例文と基本表現:
(注):下記の例文は、米国の二つの会社間のOEM売買取引についてのProduct Liability(製造物責任の条項)の例です。売主であるサプライヤー(メーカー)が、買主であるベンダーに対して製造物責任の補償を行う内容です。OEM取引のため、ベンダーによる仕様や設計などの表記があります。
Product Liability(製造物責任の条項)が三つのパートになっており、例文①がIndemnification(補償規定)、例文②がProcedure(手続き)、例文③がProduct Liability Insurance(製造物責任保険)を規定しています。
1)Product Liability(製造物責任の条項)– 例文①
Product Liability(製造物責任の条項)のIndemnification(補償規定)の部分です。売主であるサプライヤー(メーカー)が、買主であるベンダーに製造物責任を補償することを規定しています。
Indemnification.
Supplier will indemnify and defend Vendor against third-party claims or demands for injury or death to persons, property damage,economic loss, and any resulting damages, losses, costs, and expenses (including reasonable legal fees), regardless of whether the claim or demand arises under tort, contract, strict liability, or other legal theories, if and to the extent caused by Supplier’s defective design (if Supplier has warranted design) or manufacture of Products or provision of Services,delivery of non-conforming Products or Services, or its negligent acts or omissions in its performance under the Contract. This Section will not apply to the extent that the injury, loss, or damage results from (1) Vendor’s specification of materials in the Products, (2) Vendor’s design of the Products, (3) any alteration or improper repair, maintenance, handling, or installation of the Products by anyone other than Supplier.
(訳):
補償
不法行為、契約、厳格責任もしくはその他の法理論から生じた請求かどうかにかかわらず、サプライヤーの設計上の欠陥(サプライヤーが設計を保証した場合)、製品の製造、サービスの提供、不適合製品もしくは不適合サービスの提供、または契約の履行における過失行為もしくは不作為によって引き起こされた場合に限り、サプライヤーは、人の傷害もしくは死亡、物的損害、経済的損失、および、この結果として生じる損害、損失、費用(合理的な弁護士費用を含む)に関する第三者の請求から、ベンダーを補償し、弁護する。本項は、以下の事由から生じた傷害、損失または損傷の場合には適用されない:(1)製品に使われるベンダーの材料の仕様(2)ベンダーによる製品の設計(3)改造もしくは不適切な修理、保守、取り扱い、またはサプライヤー以外の者による製品の設置。
(注):
*indemnify and defend ~ againstは、~から、~を補償し、弁護するという意味です。関連記事の、Indemnification(補償条項)をご参考にしてください。
*claims or demandsは、請求という意味です。類語を並べた強調表現です。
*property damageは、物的損害という意味です。
*costs, and expensesは、費用という意味です。類語を並べた強調表現です。
*legal feesは、弁護士費用、訴訟費用という意味です。
*regardless of whetherは、~かどうかにかかわらず、~かどうかとは無関係にという意味です。
*tortは、不法行為という意味です。くわしくは、tortの意味と例文をご覧ください。
*strict liabilityは、厳格責任、無過失責任という意味です。
*legal theoriesは、法理論という意味です。
*if and to the extentは、 if と to the extent that の組み合わせです。~場合に限りと訳されます。
*provision of Servicesは、サービスの提供という意味です。
*delivery of non-conforming Products or Servicesは、不適合製品もしくは不適合サービスの提供という意味です。
*negligent acts or omissionsは、過失行為もしくは不作為という意味です。
*to the extent thatは、~の限り、~の範囲でという意味ですが、意訳(の場合には)しています。 くわしくは、to the extent thatの意味と例文をご覧ください。
*any alterationは、改造という意味です。
*anyone other than Supplierは、サプライヤー以外の者という意味です。
2)Product Liability(製造物責任の条項)– 例文②
例文①のIndemnification(補償規定)に続く、Procedure(手続き)のパートです。賠償請求を知った場合、買主のベンダーは、直ちに売主のサプライヤーに通知する、ベンダーとサプライヤーが不具合の原因を協力して調査する、第三者との合意の協議に必ずサプライヤーを含める、ことを規定しています。
Procedure.
Vendor will notify Supplier promptly after Vendor becomes aware of the basis for a claim under this Section. The parties will cooperate with each other to determine the root cause of a defect in or failure of the Products. Supplier may examine and test all available Products are subject to a third-party claim. Vendor will endeavor to include Supplier in settlement discussions where indemnity has been or will be sought from Supplier, and Vendor may not settle or compromise any third-party claim that gives rise to an indemnification claim without Supplier’s prior written consent, which will not be unreasonably withheld or delayed.
(訳):
手順
ベンダーは、本項に基づく請求の根拠を知った後、直ちにサプライヤーに通知するものとする。両当事者は、製品の欠陥または製品の故障の根本原因について、相互に協力して判断するものとする。 サプライヤーは、第三者請求の対象となるすべての製品について、調査しテストをすることができる。 ベンダーは、サプライヤーに対する過去と今後の補償責任追及についての解決協議の場に、サプライヤーを含めるよう努める。ベンダーは、サプライヤーの事前の書面による同意なしに、補償責任を生じる第三者の請求について解決や和解を行わないものとする。当該同意は正当な理由なく拒否したり、遅らせてはならない。
(注):
*becomes aware ofは、~を知るようになる、~を知ったという意味です。
*The partiesは、両当事者という意味です。
*the root causeは、根本原因という意味です。
*settlement discussions where indemnity has been or will be sought from Supplierは、settlement discussions(解決の協議)と、where indemnity has been(補償責任をこれまで追及し)と、or will be sought(またはこれから追及する)と、from Supplier(サプライヤーから)ですが、サプライヤーに対する過去と今後の補償責任追及についての解決協議の場と意訳しています。
*settle or compromise any third-party claimは、settle(解決する)と、or compromise(または和解する)と、any third-party claim(第三者の請求)で、第三者の請求について解決や和解を行うという意味です。
*gives rise toは、~を生じさせるという意味です。
*consent not unreasonably withheld or delayedは、正当な理由なく同意を拒否したり、遅らせないという意味です。くわしくは、consent not unreasonably withheldの意味と例文をご覧ください。
3)Product Liability(製造物責任の条項)– 例文③
Product Liability Insurance(製造物責任保険)の規定です。サプライヤーは、年間100万ドル以上の製造物責任保険に加入する、信頼できる保険会社で付保する、要求に応じて保険証明を提出する、サプライヤーの賠償責任は付保額に限定されない、ことを規定しています。
Supplier shall be obliged to take out product liability insurance with a cover sum of no less than one (1) million US dollar per annum for injury and damage to property. The insurance shall be effected with a reputable insurance company. Supplier shall provide evidence that such insurance cover is in place as and when requested by Vendor. Supplier’s liability to pay damages shall not be limited to the cover sum of the insurance.
(訳):
サプライヤーは、傷害と財産損害に対する付保額が年間100万米ドル以上の製造物責任保険に加入する義務を負う。 保険は、信頼できる保険会社で付保するものとする。 サプライヤーは、ベンダーが要求した場合は、かかる保険に付保している証明を提示する。 サプライヤーの損害賠償責任は、保険の付保額に限定されない。
(注):
*take outは、(保険に)加入するという意味です。
*no less thanは、以上という意味です。
*per annumは、年間という意味です。くわしくは、per diemとper annumの意味と例文をご覧ください。
*effectedは、(保険を)付保されるという意味です。
*reputableは、信頼できるという意味です。
*in placeは、実施されてという意味ですが、意訳(している)しています。
*as and whenは、~の場合はという意味です。
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