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英文契約書の秘密保持契約で、秘密情報の開示範囲条項として置かれるDisclosuresについて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳をつけて例文中の基本表現に注記を入れました。
1.解説:
1)Disclosuresとは
秘密保持契約に基づいて秘密情報の開示を受けた受領当事者の会社に対して、秘密情報にアクセスできる従業員やコンサルタントなど関係者の範囲についての条文が置かれることがあります。
Disclosuresとは、
秘密保持契約に基づき開示された秘密情報にアクセスできる受領当事者の関係者の範囲はどこまでなのか
について規定した条項のことをいいます。
秘密情報の開示範囲条項は、Disclosures(秘密情報の開示範囲条項)の代わりに
・Permitted Disclosures(認められた開示範囲条項)
・Receiving Party Personnel(受領当事者の範囲条項)
の見出しタイトルで表示されることもあります。
2)秘密情報の開示範囲のキーフレーズ
秘密情報の開示範囲条項では、bona fide need to knowがキーフレーズとなります。
bona fide need to knowは、直訳すると真に知る必要がある(従業員)ですが、取引目的を遂行するために業務遂行上必要不可欠な(従業員)という意味があります。
3)従業員の秘密保持の遵守
開示を受けた秘密情報にアクセスできる従業員などの範囲を限定する場合、秘密情報の遵守をどのように徹底するかの管理が必要となります。
開示を受けた従業員から、秘密保持の誓約書をとる方法などがあります。
4)関連会社等への開示
開示を受けた側が、その企業の従業員だけでなく関連会社やコンサルタントなどへの開示を認める場合は、その範囲について契約で明確にします。
その際に、開示を受ける関連会社等の範囲を広げた場合、あるいは特定の関連会社やコンサルタントなどを含めた場合、開示側の会社が警戒して秘密保持契約がまとまらない可能性もありうることに、注意する必要があります。
5)Disclosuresの実務上の重要点と交渉の視点
Disclosures条項は、秘密保持契約(NDA)の中でも、秘密情報が「どこまで広がるか」という物理的・組織的な範囲を定める上で極めて重要です。
この条項がなければ、秘密情報が誰にアクセスされ、どのように管理されるかが不明確になり、情報漏洩のリスクが高まります。
ア.開示側(Disclosing Party)の視点:情報管理の徹底
開示側の企業は、自社の秘密情報が受領当事者の社内で適切に管理されるよう、この条項を厳格に規定します。
アクセス範囲の限定:
bona fide need to knowという表現は、「本当に業務上必要不可欠な者に限定する」という強い意思を示しています。
開示側は、この原則を徹底させることで、必要以上の人数に秘密情報が共有されるのを防ぎます。
従業者等への義務の課与:
例文にあるように、受領当事者は、秘密情報にアクセスする従業員や専門アドバイザーに、秘密保持契約の内容を周知させ、法的強制力のある契約や規則で拘束することを求められます。
これにより、万が一、従業員が情報を漏洩した場合でも、受領当事者が責任を負うことを明確にします。
管理措置のレベルの要求:
no less stringent than(~と同様に厳格)という表現は、受領当事者に対して、自社の秘密情報と同等のレベルで相手方の秘密情報を管理することを義務付けます。
これは、秘密情報が受領当事者の社内で軽視されるのを防ぐための重要な防御策です。
イ.受領側(Receiving Party)の視点:ビジネスの柔軟性確保
受領側の企業は、業務遂行上、秘密情報を社内の様々な部署や、関連会社、外部コンサルタントと共有する必要がある場合があります。
このため、この条項は、単なる受け入れではなく、ビジネス上の柔軟性を確保するための交渉ポイントとなります。
開示対象者の明確化:
受領当事者は、employees and professional advisers(従業員と専門アドバイザー)という一般的な表現だけでなく、業務上開示が必要な「affiliates(関連会社)」や、具体的なコンサルタント名を含めるよう交渉することがあります。
これにより、NDAを何度も締結する手間を省き、スムーズな情報共有を可能にします。
例外規定の交渉:
bona fide need to knowという原則は受け入れつつも、合併買収(M&A)の際や、資金調達の際に、デューデリジェンス目的で第三者に開示する権利を明記するなど、特別な状況における開示を交渉することがあります。
責任範囲の確認:
受領当事者は、秘密情報を開示した関連会社やコンサルタントが情報漏洩を起こした場合に、どの範囲で責任を負うかを明確にしておく必要があります。
一般的には、受領当事者が、開示を受けたすべての者が本契約を遵守する責任を負います。
Disclosures条項は、秘密情報の流れを制御する契約上の「ゲートキーパー」です。
開示側は、情報の安全性を確保するための防御線を張り、受領側は、業務遂行に必要な情報のアクセス権を確保するための交渉を行います。
この条項の細部に注意を払うことで、情報漏洩リスクを管理し、同時にビジネスの効率性も確保することができます。
2.例文と基本表現:
(注):基本表現をハイライトしています。
受領当事者は、機密情報を業務遂行上必要不可欠な従業員等に開示できますが、当該従業員等を契約や責任規範で拘束し、機密情報を厳格に保護することが条件です。
Each party may disclose the other party’s Confidential Information to its responsible employees and professional advisers with a bona fide need to know such Confidential Information, but only to the extent necessary to evaluate or carry out a proposed transaction or relationship and only if such employees are advised of the confidential nature of such Confidential Information, and the terms of this Agreement, and are bound by a legally enforceable agreement or code of professional responsibility to protect the confidentiality of such Confidential Information. The Receiving Party shall take all reasonable measures to protect the confidentiality and avoid the unauthorized use, disclosure, publication,or dissemination of Confidential Information; provided, however, that such measures shall be no less stringent than measures taken to protect its own confidential and proprietary information.
(訳):
各当事者は、他の当事者の機密情報を、業務遂行上必要不可欠な立場の従業員と専門アドバイザーに開示することができるが、提案された取引もしくは提案された取引関係を評価し、または遂行するために、必要な範囲でのみ、かつ、当該機密情報の機密性を保護するために、当該機密情報の機密性および本契約の条件について、かかる従業員等が了知しており、法的強制力のある契約もしくは業務の責任規範により拘束されている場合に限るものとする。受領当事者は、機密情報を保護し、機密情報の不正使用、開示、公開または配布を回避するために、あらゆる合理的な措置を講じるものとする。 ただし、かかる措置は、自己の機密情報および専有情報を保護するために講じる措置と同程度に厳格でなければならない。
(注):
*bona fide need to knowは、直訳すると真に知る必要があるですが、業務遂行上必要不可欠なと訳しています。
*only to the extent necessary toは、必要な範囲でのみという意味です。
*carry outは、遂行するという意味です。
*only ifは、の場合に限るという意味です。
*are bound byは、より拘束されているという意味です。
*a legally enforceable agreementは、法的強制力のある契約という意味です。
*code of professional responsibilityは、業務の責任規範と訳しています。
*take all reasonable measuresは、あらゆる合理的な措置を講じるという意味です。
*the unauthorized useは、不正使用という意味です。
*publicationは、ここでは公開、公表という意味で使われています 。
*disseminationは、配布という意味です。
*provided, however, thatは、だだし、~とするという意味です。くわしくは、provided thatとprovided, however, thatの意味と例文をご覧ください。
*no less ~ thanは、に劣らず~、と同様に~という意味です。
*its own confidential and proprietary informationは、自己の機密情報および専有情報という意味です。
■ 英文秘密保持契約(NDA)のドラフト作成と実務要点
誰に開示できるかという点に加え、NDA全体のチェックポイントや、実務で注意すべきリスク管理の全体像をまとめています。
解説記事:
Non-Disclosure Agreement(英文秘密保持契約)の解説と要点
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