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英文契約書で、表明保証条項として置かれるRepresentations and Warrantiesについて解説します。例文をとりあげて、要点と対訳をつけて基本表現に注釈を入れました。
| 用語 | 主な法的意味 | 違反時の主な救済 (英米法の原則) |
| Represent (表明) |
過去または現在の「事実」 が真実であるとの説明。 |
虚偽表示(Misrepresentation)による「契約取消・解除」 |
| Warrant (保証) |
特定の事実が真実であることの「約束(保証)」。 | 契約違反(Breach of Warranty)による「損害賠償」 |
1.解説:
1)Representations and Warrantiesとは
Representations and Warrantiesとは、英文契約書の
表明保証条項
のことを意味します。
表明保証条項では、
『当事者が、合意する〇〇の契約内容が真実であることを、表明し保証する(represent and warrant)』
というような内容で記載されます。
そしてキーフレーズとなるのが、
『表明し保証する(represent and warrant)』です。
当事者は、表明し保証する(represent and warrant)内容について法的責任を負うことになります。従って、万が一これに違反があった場合は、賠償責任を負うおそれがある
ことに注意が必要です。

2)Representations and Warranties(表明保証条項)が置かれる英文契約書
表明保証条項は、以下の種類の英文契約書に置かれます。
①M&A契約で:
代表的なのが、株式譲渡契約、事業譲渡契約などのM&A契約です。
M&A契約に設けられるRepresentations and Warranties(表明保証条項)では、たとえば、
『資産を売却する売主が、買収先に対して、売却の対象となる資産が契約条件のとおりであることを約束する』
というような内容になります。(下記の例文①をご覧ください)
なお、M&A契約の表明保証条項においては、M&A契約の性質から、売主が表明保証する対象は、
法人の正当な存在、財務内容、法令遵守、訴訟やクレームがないこと、従業員の承継、すでに締結している契約の存在、在庫品、知的財産権など、
多岐にわたるのが一般的です。
②一般の英文契約書で:
Representations and Warranties(表明保証条項)は、他の一般の英文契約書でも置かれることがあります。(下記のライセンスからの例文②をご覧ください)
3.Representations and Warrantiesにおける実務上の
重要点と交渉の視点
Representations and Warranties(表明保証条項)は、英文契約書において、契約締結時における事実関係や法的状態について、当事者が相手方に対して「真実であること」を約束する、極めて重要な条項です。
これに違反があった場合、相手方に対する損害賠償責任や、M&A取引においては代金減額、契約解除などの事態に発展する可能性があります。
実務上、以下の点に特に留意して交渉・検討を進める必要があります。
ア.表明保証の目的とリスク分担
表明保証は、単なる事実の確認に留まらず、契約締結時点での情報ギャップを埋め、将来のリスクを当事者間で分担するという重要な役割を担います。
情報開示の促進:
表明保証を要求することで、相手方に対し、契約に関連する重要な情報を網羅的に開示するよう促す効果があります。
これにより、隠れたリスクや問題点を契約締結前に発見する機会が増えます。
リスクの特定と分配:
例えばM&Aにおいては、売主が対象会社の現状について表明保証を行うことで、その現状に関するリスクの大部分を売主が負うことになります。
買主は、表明保証違反があった場合に、その損害について売主に請求できるため、リスクを軽減できます。
デューデリジェンス(Due Diligence)の補完:
表明保証は、買主(または権利を得る側)が行うデューデリジェンスを補完するものです。
デューデリジェンスで全てのリスクを発見することは困難であるため、表明保証によって、デューデリジェンスでは見つけきれなかった、あるいは見つけにくい隠れたリスクに対する防御線を張ることができます。
イ.表明保証の範囲と具体性
表明保証の対象となる範囲と、その内容の具体性は、交渉の最重要ポイントです。
対象事項の網羅性:
契約の性質に応じて、可能な限り広範かつ詳細な事項を表明保証の対象とすることが、表明保証を受ける側(買主、ライセンシーなど)にとって望ましいです。
M&Aの場合、対象会社の財務、資産、負債、契約関係、訴訟、税務、環境、労働、知的財産、コンプライアンスなど、多岐にわたります。
「真実かつ正確であること(true and accurate)」の基準:
表明保証は、「契約締結日現在において真実かつ正確であること」を保証するものです。
「重要な点において(in all material respects)」や「知る限りにおいて(to the best of its knowledge)」といった限定を付ける場合があります。
「知る限りにおいて(to the best of its knowledge)」:
これは表明保証を行う側(売主など)が、自らが「知っている範囲」での真実性を保証するものです。
これにより、合理的な調査では知り得なかった事実については責任を負わないというリスク軽減効果があります。
表明保証を受ける側としては、この限定をできるだけ避けたい、あるいは「合理的な調査を行った上で知り得た限りにおいて」などの限定を加えるよう交渉します。
継続的な表明保証(Bring-down Clause):
M&A契約などでは、契約締結日からクロージング日までの間に表明保証の内容に変化がないことを、クロージング日にも再度表明保証する旨の条項(Bring-down Clause)が設けられることがあります。
これにより、契約締結後からクロージングまでの期間に生じるリスクにも対応できます。
ウ.表明保証違反の救済と責任制限
表明保証に違反があった場合の相手方への救済措置と、責任の制限は、非常にシビアな交渉ポイントです。
補償義務(Indemnification):
表明保証違反があった場合、違反当事者は相手方に生じた損害を補償(indemnify)する義務を負います。
補償の範囲(直接損害、間接損害など)や、補償の対象となる損害の種類(弁護士費用、調査費用など)を明確に規定します。
責任制限(Limitation of Liability):
表明保証を行う側は、表明保証違反による損害賠償責任に上限を設けることを交渉します。
上限額(Cap):
賠償責任の総額を契約金額の一定割合(例:20%)や特定の金額に制限します。
最低請求額(Basket / Deductible):
一定額(Basket Amount)以上の損害が発生した場合にのみ請求できる、または一定額を超過した部分についてのみ請求できる、といった規定を設けることで、軽微な違反による請求を回避します。
請求期間(Survival Period):
表明保証が効力を有する期間、つまり表明保証違反を主張できる期間を定めます。
通常、契約終了後も一定期間(例:1年〜数年、税務関連などはより長期)継続します。
唯一の救済(Sole Remedy):
表明保証違反に対する救済が、契約に定める補償条項のみであると規定することで、相手方が契約外の法的手段(例:不法行為)で損害賠償を請求することを制限しようとする場合があります。
これは、表明保証を受ける側にとっては不利な条項であるため、慎重に検討が必要です。
【核心:補償条項(Indemnification)へのスイッチ】
表明保証違反は、単なる事実の相違に留まらず、補償条項(Indemnification)を発動させるトリガーとして機能します。
通常の損害賠償請求に比べ、補償条項を利用することで、より確実かつスムーズな損害の回収が可能になります。
※連動する「補償」の具体的な仕組みについては、以下の記事をあわせてご覧ください。
👉 indemnify and hold harmlessの意味と例文
エ.開示(Disclosure)との関係
表明保証を行う側は、開示スケジュール(Disclosure Schedule)または開示レター(Disclosure Letter)を用いて、表明保証の内容に影響を与える事実や例外事項を事前に開示することができます。
効果:
開示された事項については、表明保証違反とはみなされないのが一般的です。
これにより、表明保証を行う側は、知りながらも意図せず表明保証に違反してしまうリスクを回避できます。
交渉の視点:
表明保証を受ける側は、開示された内容を詳細に確認し、重大なリスクが含まれていないかを精査する必要があります。
もし重大なリスクが発見された場合、契約条件(価格、その他の義務など)の見直しや、補償条項の強化を求める交渉の材料となります。
【上級者向け視点:サンドバギング(Sandbagging)条項】
表明保証の交渉において、非常にシビアな論点となるのが「サンドバギング」です。
これは、「買主が、売主の表明保証違反を(契約締結前に)知りながらあえて指摘せず、契約締結後にその違反を理由に補償を請求すること」を指します。
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- Pro-Sandbagging(サンドバギング容認):
買主が知っていたかどうかにかかわらず、違反があれば補償請求できるとする立場。買主側に有利です。 - Anti-Sandbagging(サンドバギング禁止):
買主が知っていた違反については、後で補償請求できないとする立場。売主側の防御手段となります。
- Pro-Sandbagging(サンドバギング容認):
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実務では、準拠法(ニューヨーク州法か英国法かなど)によってデフォルトの判断が異なるため、明文でどちらの立場をとるかを規定することが重要です。
Representations and Warranties条項は、契約当事者間のリスクの分配を明確にするための中心的な条項です。
交渉においては、自社の立場と目的を明確にし、潜在的なリスクを十分に評価した上で、その範囲、期間、そして違反時の救済措置について、細部にわたる検討と周到な交渉が不可欠です。
2.例文と基本表現:
(注):represent and warrantを青文字で示しています。
1)Representations and Warranties(表明保証条項)– 例文①
事業譲渡契約からです。売主は、契約条件の遵守と、不履行事由がないことを表明し保証すると規定しています。
The Seller hereby represents and warrants to the Buyer that they are in compliance with all the terms and provisions set forth in this Agreement on their part to be observed or performed, and that no Event of Default has occurred or is continuing, and hereby confirm and reaffirm the representations and warranties contained in Section 15 of this Agreement.
(訳):
売主は、これにより買主に対して、売主が遵守し履行する部分について本契約で定めるすべての条件と規定を遵守すること、および債務不履行事由が発生または継続していないことを表明し保証すると共に、本契約の第15条に記載の表明および保証を再確認する。
(注):
*herebyは、by this agreementのことで、これ(本契約)によりという意味です。
*represents and warrantsは、表明し保証するという意味です。くわしくは、represent and warrantの意味と例文をご覧ください。
*in compliance withは、~を遵守する、~に従うという意味です。
*all the terms and provisions set forth in this Agreementは、all the terms and provisions(すべての条件と規定)とset forth in this Agreement(本契約で定める)の組み合わせで、本契約で定めるすべての条件と規定という意味です。
*on their part to be observed or performedは、直訳するとon their part(売主の側で)とto be observed or performed(遵守し又は履行する)ですが、売主が遵守し履行する部分についてと訳しています
*Event of Defaultは、債務不履行事由という意味です。債務不履行事由とは、債務不履行に該当する不履行当事者による行為や関連する出来事のことをいいます。
2)Representations and Warranties(表明保証条項)– 例文②
ライセンス契約からです。ライセンサーは、ライセンスを許諾し、契約を締結・履行する権限を表明し保証すると規定しています。
Licensor represents and warrants to Licensee that Licensor has the authority to grant the license granted hereunder, and has all necessary corporate power and authority to execute and deliver this Agreement and perform its obligations hereunder.
(訳):
ライセンサーは、ライセンサーが本契約において付与されているライセンスを許諾する権限を有し、本契約を締結し交付し、本契約に基づく義務を履行するために必要なすべての法人としての権限を有することを、ライセンシーに対して表明し保証する。
(注):
*Licensorは、ライセンサーという意味です。ライセンサーとは、ライセンスする者、実施許諾者のことをいいます。
*Licenseeは、ライセンシーという意味です。ライセンシーとは、ライセンスを受ける者、実施権者のことをいいます。
*grant the licenseは、ライセンスを許諾するという意味です。くわしくは、grant licenseとgrant sublicensesの意味と例文をご覧ください。
*corporate power and authorityは、法人としての権限という意味です。power and authority(権限)は、類語を並べた強調表現です。くわしくは、power and authority(権限)の解説と例文をご覧ください。
*execute and deliver this Agreementは、本契約を締結し交付するという意味です。
*perform its obligationsは、義務を履行するという意味です。
*hereunderは、under this agreementのことです。本契約のもとで、本契約に基づきという意味です。くわしくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
■ 英文契約の「重要条項」をセットで確認する
本条項で解説した「表明保証」は、万が一の違反時に「責任制限」や「補償」と組み合わさることで初めて実務的に機能します。契約書全体の整合性をとるため、以下の関連記事も必ずあわせてご確認ください。
・表明保証違反の責任をどう制限するか?
Limitation of Liability(責任制限条項)の修正例とポイント
・具体的な補償の手続きと範囲を知る:
indemnify and hold harmless(補償条項)の意味と実務解説
・紛争解決の最終地点(管轄と法律):
裁判管轄と準拠法の「危険な組み合わせ」と回避策
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