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英文契約書の Manufacturing Agreement(製造委託契約)とはどのような契約なのか、その基本となる一般条項と主要条項の要点は何か、について解説します。
(注記):本記事では、Manufacturing Agreement(製造委託契約)の内容を、日本の買主が海外の製造者に製造委託するケースを例にしています。
(目次)
1.Manufacturing Agreement(製造委託契約)とは
2.Manufacturing Agreement(製造委託契約)の構成
と要点
1)Recitals(前文)
2)Definitions(定義)
3)Orders and Additions/Removals of Products
(製品の発注と追加・削除)
4)Non-Binding Forecast(非拘束的購買計画)
5)Prices(価格)
6)Specifications/Licensed IP(仕様書とライセンス
される知的財産)
7)Delivery and Inspections(引渡しと検査)
8)Payment(支払い)
9)Term and Termination(期間及び解除)
10)Manufacturer’s Post-Sales Support(製造者の販売後
のサポート)
11)Record-Keeping Obligations and Audit/Inspection
Rights(記録保存義務と監査権)
12)Confidential Information(秘密保持)
13)Warranty and Limitation of Liability(保証と責任
制限)
14)Intellectual Property-Related Liability(知的財産権
に関する責任)
15)Exhibit A – Products and Prices
(別紙A:製品と価格)
16)Exhibit B – Licensed IP
(別紙B:ライセンスされる知的財産など)
3.Manufacturing Agreementにおける実務上の重要点と
交渉の視点
1.Manufacturing Agreement(製造委託契約)とは
Manufacturing Agreement(製造委託契約)とは、
契約の当事者が、他方当事者に物品の製造を注文し(製造を委託し)、その製造物を購入する(製造物の供給を受ける)契約
のことをいいます。
たとえば、
製造メーカーが製造・販売する製品に使われる特定の部品を、指定の仕様に基づき別の製造メーカーに製造を委託し、その部品を購入する、
というようなケースです。
Manufacturing Agreement(製造委託契約)の法的性質は、
請負契約(=物品の製造を委託する契約)と売買契約(=その製造物を購入する契約)の混合契約
であるといわれています。
混合契約とは、2つ以上の複数の契約がまじり合った契約のことをいいます。
なお、Manufacturing Agreement(製造委託契約)は、
Manufacturing and Supply Agreement(製造委託契約、製造供給契約)
2.Manufacturing Agreement(製造委託契約)の構成と
要点
Manufacturing Agreement(製造委託契約)において、基本となる一般条項と主要条項の構成は、以下の項目1)から項目16)のとおりです。
これらの各項目は、英文契約書の契約条項に該当します。
(ご参考):
一般条項と主要条項については、くわしくは、
・英文契約書の構成(structure of contract )
・General Provisions(一般条項)とPrincipal provisions(主要条項)
をご覧ください。
1)Recitals(前文):
Recitalsとは、英文契約書に置かれる前文という意味です。
前文とは、契約の締結に至るまでの経緯、背景などを説明した条文のことをいいます。
ここでは、製品(項目2のDefinitionsにおいて定義がされます)を製造委託・購入する買主とその製品を製造する製造者が、
Manufacturing Agreement(製造委託契約)を締結するに至った経過
を記載します。
(ご参考):
Recitals(前文)については、くわしくは、
RecitalsとWITNESSETHとWhereas clauseの意味と例文
2)Definitions(定義):
Definitions(定義)とは、
当事者間で、用語の意味を正確に定義することにより、その解釈に食い違いがおきないようにする
ことを狙いとする条項です。
Manufacturing Agreement(製造委託契約)においては、以下の用語がキーワードとなります。
項目13)Warranty (保証)の製品のエンドユーザーたる
用語:Customer(顧客)
項目7)Delivery and Inspections(引渡しと検査)に定める
用語:Delivery Date(引渡し日)
別紙Bに記載する
用語:Licensed IP(ライセンスされるIP)
項目6)Licensed IP(ライセンスされるIP)に定める
用語:Manufacturing Territory(製造地域)
別紙Aに記載する
用語:Product(製品)、及び
製品の技術仕様である
用語:Specifications(仕様)
別紙Bに記載する買主の
用語:Trademarks(トレードマーク)
これらの用語の定義を行います。
(ご参考):
用語の定義については、くわしくは、
3)Orders and Additions/Removals of Products
(製品の発注と追加・削除)
以下について、取り決めます。
①買主が注文書を発行し、製造者が注文請書を発行すること
②両当事者は、価格と仕様について合意の上、製品を追加できること
③一方当事者は、他方当事者に一定期間の通知により製品の削除を通知できること
4)Non-Binding Forecast(非拘束的購買計画)
買主は、製造者に対し、
四半期ごとの製品の非拘束的な購買予測を提示する
ことを取り決めます。
(ご参考):
非拘束的購買計画については、くわしくは、
Non-Binding Forecasts(非拘束的予測の条項)
5)Prices(価格)
買主に対する製品の価格の貿易取引条件を取り決めます。
たとえば、インコタームズ2010のEXW(倉庫引渡し)の条件とするなどです。
そして、Prices(製品の価格)を別紙Aに記載します。
(ご参考):
貿易取引条件については、
6)Specifications/Licensed IP
(仕様書とライセンスされる知的財産)
以下について、取り決めます。
①Product Specifications(製品の仕様)は、別紙Bに記載するとおりであること
②買主は、その裁量によりProduct Specifications(製品の仕様)を変更できること
③買主は、製造者に対し、Manufacturing Territory(製造地域)での製品の製造・販売のため、ライセンスIPについて非独占的かつ譲渡・再許諾禁止の権利を許諾すること
④トレードマークの使用許諾は、製造者が買主に販売する製品への取り付けのみに限定されること、など
7)Delivery and Inspections(引渡しと検査)
以下について取り決めます。
①製造者は、約定の引渡し日までに買主に製品を引き渡すこと
②買主は、製品の受領後、速やかに受入れ検査を実施し、指定日以内に、受入れ検査の結果を製造者に通知すること
(ご参考):
製品の引渡しについては、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
受入れ検査については、くわしくは、
8)Payment(支払い)
以下について、取り決めます。
①製造者は、買主に対し、注文の請求書を送付すること
②買主は、請求書の受領後、指定日までに送金により代金を支払うこと
③支払期限までに支払いがない場合は、遅延損害金が発生すること
④製品の税金は買主の負担とすること
(ご参考):
代金の支払いについては、
9)Term and Termination(期間及び解除)
以下について、取り決めます。
①契約の有効期間と自動更新の条件
②いずれかの当事者に重大な債務不履行があり、是正の通知後も債務不履行が解消しない場合の契約解除
③債務不履行による解除または債務不履行事由が生じた場合の期限の利益喪失
④不可抗力が生じた場合の契約解除
(ご参考):
契約の有効期間と自動更新については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
契約解除については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
期限の利益喪失については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
不可抗力については、くわしくは、
10)Manufacturer’s Post-Sales Support
(製造者の販売後のサポート)
製造者は、買主に対して、
無償で販売後の製品サポートを提供する
(例:買主からの質問に、電話・メールで速やかに回答する)
11)Record-Keeping Obligations and
Audit/Inspection Rights(記録保存義務と監査権)
以下について、取り決めます。
①製造者はライセンスIPを使用する製品に関する記録を保存すること、及びその保存期間
②製造者がライセンスIPを使用したことを確認するため、買主は、製造者が保存する製造者の記録の原本を監査すること
(ご参考):
記録保存については、くわしくは、
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
監査権については、くわしくは、
Audit Rights(監査権条項)
12)Confidential Information(秘密保持)
買主と製造者の両当事者の間で、
秘密情報についての秘密保持や目的外利用の禁止
を取り決めます。
(ご参考):
秘密保持については、くわしくは、
13)Warranty and Limitation of Liability
(保証と責任制限)
以下について、取り決めます:
①Warranty(保証):
製造者は、顧客が製品を受領後、一定期間、製品が顧客向けの仕様に合致することを保証するが、それ以外の明示・黙示の保証については免責されること。
②Limitation of Liabilities(責任制限):
重要な契約違反を除き、一方当事者が他方当事者の債務不履行により被った損害賠償の制限。
(ご参考):
明示・黙示の保証の排除については、くわしくは、
implied warrantyとexpress warrantyの意味と例文と
Warranty Disclaimer(保証の排除・免責条項)
をご覧ください(例文あり)。
(ご参考):
責任制限については、くわしくは、
Limitation of Liability(責任制限条項)
14)Intellectual Property-Related Liability
(知的財産権に関する責任)
以下について、取り決めます。
①製造者がライセンスIPを使用したことよって、第三者からの知的財産権の侵害クレームがある場合に、買主が製造者を補償すること。
②第三者による知的財産権の侵害があった場合の対処・手順。
(ご参考):
知的財産権に関する責任については、
Intellectual Property Rights(知的財産権条項)
Exhibit A – Products and Prices(別紙A:製品と価格)
別紙Aにて、
項目2)Definitions(定義)で定義するProduct(製品)と、
項目5)Prices(価格)で取り決めるPrices(価格)
の詳細を規定します。
(ご参考):
別紙については、
Exhibit B – Licensed IP
(別紙B:ライセンスされる知的財産など)
別紙Bにて、
項目2)Definitions(定義)で定義する
Licensed IP(ライセンスされるIP)と
Trademarks(トレードマーク)
および、
項目6)Specifications/Licensed IP(仕様書とライセンスされる知的財産)の
Product Specifications(製品の仕様)
の詳細を規定します。
3.Manufacturing Agreementにおける実務上の重要点と交渉の視点
Manufacturing Agreementは、製品の品質、コスト、納期、そして知的財産権の保護に直結するため、非常に重要な契約です。
上記で網羅された各条項の基本的な理解に加え、以下の実務的・戦略的な視点を持つことで、より安全かつ効率的な製造委託関係を構築できます。
ア.品質管理と保証の強化
製造委託契約において、製造された製品の品質は、委託元(買主)のブランドイメージと顧客満足度に直結します。
そのため、品質管理に関する条項は特に詳細に定める必要があります。
品質基準の明確化:
「Specifications(仕様)」は単なる技術的要件だけでなく、品質基準、検査方法、許容される欠陥の範囲などを具体的に定めます。
「品質保証体制(Quality Assurance System)」や「品質管理基準(Quality Control Standards)」に関する条項を設け、製造者が遵守すべきプロセスを明確にすることも有効です。
不良品対応(Defective Products):
不良品が発生した場合の通知義務、検査、修理または交換、費用負担を明確にします。
特に、不良品の責任が製造者に帰する場合の損害賠償の範囲(例:リコール費用、代替品の製造費用)を詳細に規定することが重要です。
工程監査権(Process Audit Rights):
「Audit/Inspection Rights」を、単に記録の監査だけでなく、製造プロセスや工場設備そのものへの監査(Process Audit / Factory Inspection)にまで広げることが推奨されます。
これにより、製造過程における潜在的な品質問題を早期に発見し、予防することができます。
イ.知的財産権の帰属と保護
製造委託契約では、買主が提供する製造ノウハウや設計情報(Licensed IP)が製造者によって適切に扱われるか、また製造過程で生じる改良発明(Improvements)の帰属が重要な論点となります。
所有権の明確化:
買主から提供される図面、設計データ、製造ツール、金型など(Tooling / Molds)の所有権が買主にあることを明確にします。
製造過程で製造者が開発した改良発明(Improvements)について、その知的財産権が買主に帰属すること、または買主に無償で実施権が付与されることを定める条項(Improvements Clause)を設けることが一般的です。
秘密保持の徹底:
提供されるSpecificationsやLicensed IP、その他の機密情報に対して、製造者が厳格な秘密保持義務を負うことを改めて強調し、従業員や下請け業者への情報開示についても厳しく制限します。
製造後の競争禁止(Non-Compete):
特に買主の専有技術を委託する場合、製造者が契約終了後も一定期間、類似製品の製造や競合他社への技術提供を行わない旨の競業避止義務(Non-Compete Clause)を設けることがあります。
ただし、この条項は独占禁止法や公正取引に関する法規制との兼ね合いで、その有効性が問われることがあるため、期間や範囲を合理的に設定する必要があります。
ウ.供給安定性とリスク管理
製造委託契約は、買主にとっての供給源となるため、その安定性は事業継続に直結します。
最低発注量(Minimum Order Quantity: MOQ)と最大製造能力(Maximum Capacity):
買主は安定供給を確保するため、製造者は生産ラインの効率化のため、MOQやMaximum Capacityを定めることがあります。
これにより、双方の生産計画の予測可能性を高めます。
原材料の調達(Sourcing of Materials):
原材料の調達責任とリスク負担を明確にします。
特定の原材料が不足した場合の代替策や、品質基準を満たさない原材料の使用禁止なども規定します。
緊急時対応計画(Disaster Recovery Plan / Business Continuity Plan: BCP):
製造者の工場で火災、自然災害、疫病などが発生した場合の製造継続計画や代替生産体制について合意しておくことが、買主のサプライチェーンリスクを軽減するために重要です。
責任制限(Limitation of Liability)の交渉:
製造者としては責任範囲を限定したい一方で、買主としては製品の欠陥が自社のブランドや顧客に与える甚大な影響を考慮し、リコール費用、間接損害(consequential damages)、逸失利益(lost profits)なども含めた賠償責任を製造者に求める傾向があります。
この条項は、最も激しく交渉されるポイントの一つです。
エ.現地法規の遵守と労働環境
特に海外の製造者に委託する場合、現地の法規や労働環境に関するリスクも考慮する必要があります。
法規遵守(Compliance with Laws):
製造者は、製造地の労働法規、環境法規、安全基準などを遵守する義務を負うことを明確にします。
買主は、製造者のサプライチェーンにおける人権侵害や児童労働などの問題(ESGリスク)が自社のブランドイメージを損なうことを避けるため、製造者が倫理的な事業活動を行うことを契約で義務付けることがあります。
監査権の拡大:
前述の品質監査に加え、製造者の労働環境や環境負荷に関する監査権を設けることで、ESGリスクのモニタリングを可能にします。
Manufacturing Agreementは、製品の「ものづくり」の根幹を支える契約であり、単に製造を委託するだけでなく、品質保証、知的財産保護、サプライチェーンリスク管理といった多岐にわたる側面を考慮した上で、慎重に交渉・締結することが求められます。
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