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英文契約書で、所有権・危険負担の移転条項条項として置かれるTitle and Riskについて、インコタームズとの関係を含めて解説します。例文をとりあげ、要点と対訳をつけて基本表現に注釈を入れました。
1.解説:
1)Title and Riskとは
製品の売買を目的とするSales Agreement(売買契約)などには、Title and Riskの条項が置かれます。
Title and Riskとは、
売主から買主への製品の所有権と危険負担の移転がいつ行われるのか、
について規定する所有権・危険負担の移転条項条項のことをいいます。
TitleとRiskがそれぞれ何を意味するかについては、以下のとおりです。
・Title:
Titleとは所有権のことを意味します。
所有権とは、製品を自由に利用(使用、収益、処分)することのできる権利です。
・Risk:
Riskとは危険負担のことを意味します。Risk of Lossともいいます。
危険負担とは、製品が輸送中に、売主と買主の責によらず、損傷したり滅失した場合に、その損失を売主と買主のどちらが負担するかという問題をいいます。
2)Risk(危険負担)とインコタームズについて
Risk(危険負担)の移転時期については、インコタームズで規定されています。
インコタームズ(INCOTERMS:International Commercial Terms)とは、ICC(国際商業会議所)が制定した貿易取引条件です。
インコタームズ2010 では、製品が本船に積み込まれた時点で、Risk(危険負担)が売主から買主に移転することになりました。
従って、当事者が契約でRisk(危険負担)の移転時期について取り決めなかった場合は、インコタームズの規定に従うことになります。
*インコタームズについて、詳しくは、Incoterms(インコタームズ)の解説と例文をご覧ください
(留意点):
留意点として、Title(所有権)についてはインコタームズに規定がありません。
従って、Title(所有権)の移転時期については当事者が取り決める必要があります。
3)所有権(Title)と危険負担(Risk)の移転時期が異なる場合のリスク
「所有権(Title)の移転時期についてはインコタームズに規定がないため、当事者が取り決める必要がある」という点は非常に重要です。
なぜなら、所有権の移転と危険負担の移転が異なるタイミングで発生する場合、予期せぬリスクが生じる可能性があるからです。
所有権は移転したが、危険負担はまだ売主にある場合:
例えば、買主が製品を受け取り、所有権が買主に移転したにもかかわらず、危険負担がまだ売主にある期間中に製品が損傷・滅失した場合です。
この場合、所有者である買主は製品の利用や処分はできますが、損害が発生すれば売主がその損失を負担することになります。
売主にとっては、もはや所有していない製品のリスクを負い続けることになるため、注意が必要です。
危険負担は移転したが、所有権はまだ売主に残っている場合:
最も一般的なのは、製品が買主に引き渡され危険負担は移転したが、代金が全額支払われるまで所有権は売主のままとする「所有権留保」のケースです(下記の例文②がこれに該当します)。
・この場合、製品が買主の手元にあり、もし輸送中に事故や損傷があった場合の責任は買主が負いますが、代金が支払われるまでは売主が所有者です。
・もし買主が代金を支払えなくなった場合、売主は所有権に基づいて製品の返還を求めることができます。これは、売主が代金回収のリスクを軽減するための重要な手段となります。
・しかし、買主が製品を転売するなどしてしまうと、所有権が移転済みかどうかの問題が生じることがあります。
そのため、売主としては、製品の転売を制限したり、譲渡先から直接代金を受け取る権利(譲渡担保権など)を確保したりするなど、より強力な担保(担保権設定 security interest など)を設定することで、確実に代金を回収できるよう備えることが重要です。
(下記の例文③をご覧ください。)
このように、所有権と危険負担の移転時期のずれは、どちらかの当事者にとって予期せぬ責任や損失をもたらす可能性があります。
契約交渉の際には、両当事者間の移転時期を明確にし、自社にとって不利な状況にならないか、また必要に応じて担保権の設定などの対策を講じることが、将来のリスクを回避するために不可欠です。
2.例文と基本表現:
(注):以下の例文①と例文②は、インコタームズによらず、Risk(危険負担)の移転時期を取り決めています。
(注):英文契約書によく出る基本表現をハイライトして語注をつけています。
1)Title and Risk(所有権・危険負担の移転)– 例文①
Title(所有権)の移転は、引き渡し又は代金の支払いですが、Risk(危険負担)の移転は、引渡しです。Title(所有権)の代わりに、the property(所有物)の用語で表記しています。
Unless otherwise stated in the Contract, the Products shall become the property of the Buyer free from liens and other encumbrances at whichever is the earlier of: (a) completion of delivery by the Seller in accordance with the delivery terms of the Contract; or (b) when the Seller is entitled to payment of the value of the Products under the Contract. Notwithstanding the foregoing, the Seller shall remain responsible for and shall bear any and all risk of loss of or damage to the Products until completion of delivery in accordance with the terms of the Contract.
(訳):
契約に別段の定めがない限り、製品は、次のいずれか早い方で、留置権その他第三者の権利の付着がない買主の所有物となる:(a)契約の引渡し条件に従った売主による引渡しの完了、又は (b)契約に基づき、売主が製品の代金の支払いを受けることができる場合。 前記にかかわらず、契約の条件に従って、売主は、引渡しが完了するまで、製品のすべての危険負担又は損害に対し継続して責任を負うものとする。
(注):
*Unless otherwise statedは、別段の定めがない限りという意味です。詳しくは、unless otherwise の関連表現と例文をご覧ください。
*free fromは、~がないという意味ですが、意訳(の付着がない)しています。詳しくは、free fromの解説と例文をご覧ください。
*liensは、留置権という意味です。詳しくは、lienの意味と例文をご覧ください。
*encumbrancesは、負担という意味ですが、第三者の権利と意訳しています。
*at whichever is the earlier ofは、ここでは、次のいずれか早い方でという意味です。
*is entitled toは、~ができる、~する権利を有するという意味です。
*Not withstanding the foregoingは、前記にかかわらずという意味です。詳しくは、notwithstanding の意味と例文をご覧ください
*remain responsible forは、~に対し継続して責任を負うという意味です。なお、その後にbear((責任やリスクを)負う)という同様の意味の用語が続いており強調表現になっています。
*any and allは、すべての、一切のという意味です。対象とするもの(ここでは危険負担)なにもかもすべてと強調したいときに使われる英文契約書の表現です。
*in accordance withは、~に従ってという意味です。
2)Title and Risk(所有権・危険負担の移転)– 例文②
Title and Risk(所有権・危険負担の移転)は、引渡しですが、代金の支払い完了まで担保が付着しています。
Title and Risk of Loss shall pass when the Products are delivered. Seller shall retain a security interest in the products and their proceeds until paid in full.
(訳):
製品が引渡しされた時点で、所有権と危険負担は移転するものとする。 売主は、代金の全額が支払われるまで、製品及びその収益に対する担保権を有するものとする。
(注):
*passは、移転するという意味です。
*retainは、有するという意味です。
*security interestは、担保権という意味です。
*proceedsは、収益という意味です。複数形で使用されます。
*until paid in fullは、ここでは代金の全額が支払われるまでという意味です。pay in full(全額を支払う)は、売買契約なので、よく使われる契約表現です。
3)Title and Risk(所有権・危険負担の移転)– 例文③
製品の引き渡しで危険負担は移転するが、代金全額支払われるまで所有権は売主に留保され、買主は製品の転売を制限されるケースです。
Title and Risk of Loss shall pass when the Products are delivered to Buyer. Notwithstanding the foregoing, legal title to the Products shall remain with Seller until Seller has received full payment for the Products. Until such full payment, Buyer shall hold the Products as bailee for Seller and shall not sell, dispose of, or encumber the Products without Seller’s prior written consent.
(訳):
所有権および危険負担は、製品が買主に引き渡された時点で移転するものとする。上記にかかわらず、製品の法的所有権は、売主が製品の全額支払いを受領するまで売主にあるものとする。かかる全額支払いがあるまで、買主は製品を売主のための受託者として保持するものとし、売主の事前の書面による同意なく製品を販売、処分、または担保設定してはならない。
(注):
*legal title:法的所有権という意味です。単にtitleとすることも多いですが、より明確にする際に使われます。
*full payment for the Products:製品の全額支払いという意味です。
*bailee for Seller:売主のための受託者という意味です。買主が売主の代理として製品を管理する立場にあることを示します。これにより、代金支払い前の買主による製品の取り扱いに対する売主の権利が強化されます。
*dispose of:処分するという意味です。製品を売却するだけでなく、廃棄したり譲渡したりする行為全般を指します。
*encumber:担保設定するという意味です。製品を担保に入れて借入れをするなどの行為です。
*without Seller’s prior written consent:売主の事前の書面による同意なくという意味です。買主の行為に制限を加える際に頻繁に用いられる表現です。
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