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英文契約書において商標ライセンス条項として置かれるTrademark Licenseについて解説します。例文をとりあげて要点と対訳をつけて基本表現に注記しました。
1.解説:
1)Trademark Licenseとは
Trademark Licenseとは、
商標の使用許諾条件を定める商標ライセンス条項
のことを意味します。
Trademark License(商標ライセンス条項)は、
・Distribution Agreement(販売店契約)
・Sales Agency Agreement(販売代理店契約)
・Manufacturing Agreement(製造委託契約)
などの英文契約書の主要条項として置かれます。
2)Trademark Licenseの内容
これらの英文契約書のTrademark License(商標ライセンス条項)で取り決められる内容は、以下のようなものになります。
① Distribution Agreement(販売店契約):
『ベンダーが販売店に対して、販売店の販売活動のために、ベンダーの商標の使用を許諾すること、及びその使用許諾条件』について取り決めます。(下記の例文をご覧ください)
② Sales Agency Agreement(販売代理店契約):
『ベンダーが代理店に対して、販売代理店の市場開拓活動のために、ベンダーの商標の使用を許諾すること、及びその使用許諾条件』について取り決めます。
③ Manufacturing Agreement(製造委託契約):
『製造を受託する製造会社が、委託先の会社の商標の使用許諾を受けて、その商標を取り付けた製品を、委託先の会社に販売する』ことを取り決めます。
3)Trademark Licenseの実務上の重要点と交渉の視点
Trademark License条項は、単に商標の使用を許可するだけでなく、ブランドの価値と商標権そのものを保護するための極めて重要な防御策です。
特に、商標権者(ライセンサー)は、ライセンシーによる商標の不適切な使用が、商標の希釈化や、商標権自体の喪失につながるリスクを回避しなければなりません。
ア.ライセンサー(商標権者)側の視点:ブランドの厳格な管理
ライセンサーの立場では、自社のブランドイメージと商標権を保護するため、以下の点を厳格に規定します。
使用範囲の限定:
例文のように、ライセンスを「non-exclusive(非独占的)」にすることで、ライセンサーは他の第三者にも商標の使用を許可する柔軟性を保ちます。
さらに、使用できる商標を「designated Marks(指定されたマーク)」に限定し、用途(例:販売活動のみ)や地域を明確に規定することが重要です。
品質管理条項の挿入:
商標法では、ライセンサーが商標の使用をコントロールする義務があるため、商標の使用条件として「ライセンシーが使用する商標付き製品の品質基準をライセンサーが管理・監督する」という条項(Quality Control条項)を設けることが一般的です。
これにより、ライセンシーの不適切な品質管理が原因でブランド価値が損なわれるリスクを防ぎます。
禁止行為の明確化:
例文にあるalter, obliterate, deface or remove(変更、抹消、汚損、削除)といった禁止行為を具体的に列挙することで、ライセンシーが勝手に商標を加工したり、製品から商標を取り除いたりする行為を厳しく制限します。
また、「add any name, brand or trademark thereto(商標を追加する)」という規定は、ライセンシーが自社のブランドとライセンサーのブランドを混同させるような行為を防ぎます。
侵害通知義務:
例文の後半にあるように、ライセンシーが第三者による商標の不正使用(confusingly similar:混同を招くような使用)を発見した場合、直ちにライセンサーに通知する義務を課すことは、商標権の侵害に迅速に対応するために不可欠です。
イ.ライセンシー側の視点:ビジネス活動の柔軟性確保
ライセンシーの立場では、商標をビジネス活動に活用するため、以下の点を交渉で確認します。
使用範囲の確認:
ライセンシーは、ライセンスされた商標を自社の販促資料、ウェブサイト、名刺などで使用できるかどうか、具体的な使用方法や表現についてライセンサーと合意しておく必要があります。
ライセンス料(royalty)の交渉:
例文では「royalty-free(ロイヤリティフリー)」となっていますが、これは稀なケースです。
通常は、売上に応じたロイヤリティや、最低保証額などが定められます。ライセンシーは、自社のビジネス計画に無理のない範囲でライセンス料を交渉することが求められます。
商標使用ガイドライン(Brand Guidelines):
ライセンサーが作成する「商標使用ガイドライン」を遵守する義務が課されることが多いため、ライセンシーは、このガイドラインの内容を事前に確認し、自社のビジネス活動に支障がないかを検証する必要があります。
Trademark License条項は、単なる契約上の条文ではなく、ブランドという無形資産の価値を維持・向上させるための法的枠組みです。
ライセンサーにとってはブランドの防御、ライセンシーにとってはブランド価値の活用という二つの側面があり、両者の利益をバランスよく調整することが、長期的なビジネス関係を築く鍵となります。
2.例文と基本表現:
Trademark License(商標ライセンス条項)– 例文
販売店契約からです。ベンダーが販売店にベンダーのマークの使用を許諾します。販売店は、規定の使用許諾条件に従わなくていけません。
Trademark License.
Vendor hereby grants to Distributor the non-exclusive, royalty-free right and license to use designated Vendor’s Marks. Distributor agrees not to alter, obliterate, deface or remove any Vendor’s Marks displayed on any Product or its packaging, or add any name, brand or trademark thereto without the prior written consent of Vendor. Except as provided in this Agreement, nothing herein shall grant to Distributor any right, title or interest in the Vendor’s Marks, which right, title and interest shall be vested in Vendor. Distributor shall immediately notify Vendor if, during the term of this Agreement, Distributor becomes aware of any other Person who is using any trademark, trade name, service mark, service name or logo that is substantially or confusingly similar to those owned or used by Distributor pursuant to the authority granted by Vendor hereunder.
(訳):
商標ライセンス条項
本契約により、ベンダーは、指定のベンダーのマークを使用するための非独占的かつロイヤリティフリーの権利及びライセンスを販売店に許諾する。 販売店は、ベンダーの事前の書面による同意なしに、製品若しくはそのパッケージに表示されたベンダーのマークを変更、抹消、汚損若しくは削除したり、又は名称、ブランド若しくは商標を追加したりしないことに同意する。 本契約で規定される場合を除き、本契約のいかなる規定も、ベンダーの商標の権利、権限又は利益を販売店に付与するものではなく、権利、権限及び利益は、ベンダーに帰属する。 販売店は、本契約の期間中に、本契約に基づきベンダーが付与した権限に従って、販売店が所有又は使用しているものと実質的若しくは混乱を招くような類似の商標、商号、サービスマーク、サービス名称若しくはロゴを使用する他の者を知り得た場合、直ちにベンダーに通知するものとする。
(注):
*herebyは、本契約によりという意味です。くわしくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
*grants toは、~に許諾する、~に付与するという意味です。
*non-exclusive, royalty-freeは、非独占的かつロイヤリティフリーのという意味です。non-exclusiveについては、くわしくは、exclusiveとnon-exclusiveの意味と例文をご覧ください。
*designatedは、指定の、指定されたという意味です。
*obliterateは、抹消するという意味です。
*defaceは、汚損するという意味です。
*theretoは、to that(それに、その)の意味で、thatがany Product or its packagingを指しますが、意訳しています。くわしくは、thereto, thereof, thereafter, thereby, thereinの意味と例文をご覧ください。
*without the prior written consentは、事前の書面による同意なしにという意味です。
*Except as provided inは、~に規定されている場合を除きという意味です。くわしくは、except asとexcept as provided inの意味と例文をご覧ください。
*nothing herein shallは、nothing in this Agreement shallと同じで、本契約のいかなる内容も~するものではないという意味です。 文頭に置かれる表現です。
*right, title or interestは、権利、権限又は利益という意味です。くわしくは、rights, title, and interestの意味と例文をご覧ください。
*vested inは、~に帰属するという意味です。
*becomes aware ofは、を知り得る、に気が付くという意味です。
*substantially or confusinglyは、実質的若しくは混乱を招くようなと訳しています。
*authorityは、(付与された)権限という意味です。
*hereunderは、本契約に基づきという意味です。くわしくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。
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