Amendment and Alteration(修正・変更条項)

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英文契約書の 一般条項である Amendment and Alteration(修正・変更条項)についてとりあげます。いくつかの例文に要点と対訳と語注をつけました。

(目次)
1.解説
 1)Amendment and Alteration(修正・変更条項)とは
 2)Amendment and Alteration(修正・変更条項)と
   Amendment Agreement(変更契約)
 3)Amendment and Alteration(修正・変更条項)と
   Entire Agreement(完全合意条項)
 4)Amendment and Alteration(修正・変更条項)が
   担保する「契約の安定性」と「ビジネスの柔軟性」の
   バランス 
2.例文と基本表現
 1)例文① – 契約の修正・変更は、当事者の署名する文書
   が必用
 2)例文② – 契約の修正・変更に加え放棄も、当事者の
   署名する文書が必用
 3)例文③ – 契約の修正・変更は、当事者の署名する文書
   が必用
 4)例文④ – Entire Agreement(完全合意条項)がセット
   になっている条文

1.解説:

1)Amendment and Alteration(修正・変更条項)とは

Amendment and Alteration(修正・変更条項)とは、

締結した契約内容を修正・変更するための条件を明確にする

ことを目的とする契約条項です。

両当事者が署名した変更の文書がない限り、口頭、メール、署名のない書面等で変更の合意をしても、契約の修正・変更の効力は発生しない

と定めたりします。

契約期間、価格、添付書類などは、よくある修正・変更ですが、当事者の合意により、あらゆる契約内容を修正・変更することができます。

契約で修正・変更されていない残りの部分の条文は、引き続き有効となります。 

2)Amendment and Alteration(修正・変更条項)とAmendment Agreement(変更契約)

当事者による署名の文書は、別途、

Amendment Agreement(変更契約)

を結んで行われるのが普通です。

Amendment Agreement(変更契約)とは、

すでに締結済みの原契約の内容を変更する契約

のことをいいます。くわしくは、

Amendment Agreement(変更契約書)の解説と要点

をご覧ください。

Amendment and Alteration(修正・変更条項)では、双方の当事者による署名の文書を必要とすることを定める場合がほとんどです。

例外として、エンドユーザーライセンス契約などでは、 Amendment and Alteration(修正・変更条項)で、メーカー側が一方的な修正を行うことを定めることが多くあります。

エンドユーザーライセンス契約とは、ソフトウエア製品の使用権を付与することを認めることについて、メーカーとユーザーの間で交わされる契約です。

3)Amendment and Alteration(修正・変更条項)とEntire Agreement(完全合意条項)

Amendment and Alteration(修正・変更条項)Entire Agreement(完全合意条項)の二つの内容が、ひとつにセットになっている条文もあります。

Entire Agreement(完全合意条項)とは、

本契約のみが完全で最終的な合意であり、他のすべての合意や交渉などに優先する

ことを規定する契約条文のことです。くわしくは、

Entire Agreement(完全合意条項)とParol Evidence Rule(口頭証拠排除原則)

をご覧ください。

この場合、以下のような内容になります。

①本契約のみが最終的な合意であることの確認(=Entire Agreement(完全合意条項)の内容)

②両当事者が署名した文書がない限り、契約の修正・変更の効力は生じない(=Amendment and Alteration(修正・変更条項)の内容)

(このタイプについては、下記の例文④をご覧ください)

4)Amendment and Alteration(修正・変更条項)が担保する
「契約の安定性」と「ビジネスの柔軟性」のバランス

Amendment and Alteration(修正・変更条項)は、一見すると単なる手続き的な条項に見えますが、契約の「安定性」を確保しつつ、変化するビジネス環境への「柔軟性」を担保するという、極めて重要な二重の役割を担っています。

契約の安定性(口頭合意の排除):

この条項の最も重要な機能の一つは、「書面による合意」を要件とすることで、口頭での約束や電子メールのやり取りといった非公式な方法による契約変更の効力を明確に排除する点にあります(例文①例文②例文③)。

法的確実性の確保:
契約締結後に、当事者間で「言った」「言わない」の争いが起きるリスクを排除し、契約内容の法的確実性を高めます。

これにより、当事者は現在の契約内容が文書に記載された通りであると安心して事業を進めることができます。

意図しない変更の防止:
当事者の一方が、偶発的な発言や意図しない行為によって契約内容が変更されたと主張することを防ぎます。

特に、複雑な取引や長期契約において、契約の信頼性を維持する上で不可欠です。

ビジネスの柔軟性(適切な変更手続きの提供):

一方で、ビジネス環境は常に変化するため、締結した契約を一切変更できないとすると、事業活動に支障をきたす可能性があります。こ

の条項は、両当事者の合意に基づき、適切な手続き(通常は署名済みの書面)を踏めば契約を変更できることを明確に定めることで、契約に必要な柔軟性をもたらします。

これにより、市場の変化、技術の進歩、法規制の改正、あるいは当事者間の新たなニーズに対応するために、契約を実情に合わせて調整することが可能になります。

ただし、エンドユーザーライセンス契約におけるベンダーによる一方的な修正(本記事で言及されている例外)のように、特定の契約においては、当事者間の交渉力や契約の性質に応じて、一方的な変更権限が認められることもあります。

しかし、エンドユーザーライセンス契約はあくまで例外であり、一般的な商取引契約では双方の合意が必須です。

Entire Agreement(完全合意条項)との連携:

この修正・変更条項は、Entire Agreement(完全合意条項)と密接に関連しています(例文④)。

Entire Agreement条項が「本契約書に書かれていることだけが最終的な合意である」と宣言することで、契約締結前のあらゆる口頭合意や交渉を無効化します。

そして、Amendment and Alteration条項が、契約締結後の変更も「書面による合意」がなければ無効であると定めることで、契約全体の法的安定性を二重に保護します。

この二つの条項が連携することで、契約の範囲が明確に固定され、紛争リスクが大幅に低減されるのです。

 

この修正・変更条項は、契約締結後の契約関係を安定させ、かつ必要に応じて適切に変化させていくための、契約マネジメントの要となる条項です。

その存在意義を理解し、適切に運用することが、予期せぬ法的トラブルを回避し、円滑なビジネス関係を維持する上で非常に重要です。

 

2.例文と基本表現:

(注):基本表現をハイライトし語注を付けています。

1) Amendment and Alteration(修正・変更条項)の例文①

標準的な内容です。両当事者が署名した文書がない限り、契約の修正・変更は有効となりません。

No amendment or alteration of the terms of this Agreement shall be valid unless made in writing and signed by both of the parties hereto.

(訳):

本契約の条件に係る修正または変更は、本契約の両当事者により、書面で行われ署名されない限り、有効とはならないものとする。

(注):

amendment or alterationは、修正または変更という意味です。

*made in writing and signedは、書面で行われ署名されるという意味です。

*heretoは、本契約のという意味です。詳しくは、hereto, hereof, herein, hereby, hereunder, herewith, hereinafterの意味と例文をご覧ください。

2) Amendment and Alteration(修正・変更条項)の例文②

当事者の署名する書面の対象に、契約の修正、変更に加え、契約条件の放棄が規定されています。

No amendment, alteration or waiver of the terms of this Agreement shall be binding unless made in writing signed by all appropriate parties to this Agreement specifically referring to this Agreement.

(訳):

本契約の条件の修正、変更または放棄は、本契約のすべての適切な当事者が、本契約を明確に参照して書面にて署名しない限り、法的な拘束力を持たないものとする。

(注):

amendment, alteration or waiverは、修正、変更または放棄という意味です。

*specifically referring to this Agreementは、本契約を明確に参照してという意味です。

3) Amendment and Alteration(修正・変更条項)の例文③

例文①と同じく、契約の修正・変更は当事者が署名した文書が必用です。

This Agreement may be changed, altered or amended as the parties may agree, provided such change, alteration or amendment is evidenced in writing or by endorsement executed by both parties.

(訳):

両当事者の書面または署名した承諾により、変更または修正が証明されている場合に限り、本契約は、当事者の合意に従って変更または修正することができる。

(注):

*be changed, altered or amendedは、変更または修正するという意味です。同義語を並べた強調表現です。同義語による強調表現については、null and voidとright or privilegeの意味と例文をご覧ください。

*evidenced in writing or by endorsement executed by both partiesは、両当事者の書面または署名した承諾により証明されるという意味です。すなわち、当事者による署名のことです。

4) Amendment and Alteration(修正・変更条項)の例文④

Entire Agreement(完全合意条項)とセットになっている条文の例です。前段(下線部分)がEntire Agreement(完全合意条項)で、後段がAmendment and Alteration(修正・変更条項)の内容となっています。

This Agreement constitutes the complete understanding between the parties with respect to the employment of Employee hereunder, and no statement, representation, warranty or covenant has been made by either party with respect thereto except as expressly set forth herein. This Agreement shall not be altered, modified, amended or terminated except by a written instrument signed by each of the parties thereto.

(訳):

本契約は、本契約に基づく従業員の雇用に関する当事者間の完全な認識を構成するものであり、本契約に明示的に定める場合を除き、いずれの当事者による声明、表明、保証または誓約も行われていない。 本契約は、各当事者が署名した正式な書面による場合を除き、変更、修正、修正または終了しない。

(注):

*hereunderは、本契約に基づくという意味です。

*statement, representation, warranty or covenantは、声明、表明、保証または誓約という意味です。

*written instrumentは、正式な書面(契約)という意味です。

*theretoは、意訳していますが、to that(その)の意味で、thatThis Agreementを指します。詳しくは、thereto, thereof, thereafter, thereby, thereinの意味と例文をご覧ください。

 

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