英文契約書の基礎知識:契約のリスク管理と頻出する重要表現

英文契約のリスク管理とはどのようなものか、リスク管理の視点から頻出する重要表現とは、契約条項を読む上でどのようなリスクに注意すべきか、具体的な例文を交えながら解説します。

1.はじめに:英文契約とリスク管理の重要性

グローバル化の現代において、国内企業が海外の企業と取引を行う機会はますます増えています。その際に用いられるのが英文契約書です。

しかし、異なる法制度や商習慣を持つ海外企業との契約には、日本国内の契約とは異なる様々なリスクが存在しています。

もし、英文契約書の内容を十分に理解せず、リスクを適切に管理しないまま契約を締結してしまうと、後々予期せぬ損害を被る可能性があります。

例えば、契約違反が発生した際の当事者双方の責任範囲が明確でなかったり、自社に不利な損害賠償条項が含まれていたりする場合、大きな金銭的損失につながりかねません。

また、製品の欠陥に関する保証範囲が曖昧なために、顧客との間で深刻なトラブルに発展する可能性もあります。

この記事では、英文契約のリスク管理とはどのようなものか、リスク管理の視点から頻出する重要表現、契約条項を読む上でどのようなリスクに注意すべきか、具体的な例文を交えながら解説します。

契約リスクに関係する重要表現を理解することで、英文契約書のリスクを早い段階で発見し、適切な対策を講じるためのステップになればと思います。

2.英文契約のリスク管理

英文契約のリスク管理は、契約締結の準備段階から、契約交渉、そして契約履行に至るまでの全過程において行うことが重要です。

ここでは、契約の一連の過程におけるリスク管理のポイントと、特にリスク管理上、重要な条項の種類について解説します。

1)契約の全プロセスにおけるリスク管理のポイント:

①契約の準備段階:

相手方の信用調査を行う:
契約を締結する前に、相手方の財務状況、事業実績、評判などを調査し、契約不履行のリスクを評価します。

契約目的を明確にする:
契約によって達成したい目的を明確にし、その目的を達成するために必要な条項を洗い出します。

適用法と紛争解決方法を検討する:
契約に適用される法律や、紛争が生じた際の解決方法(仲裁、訴訟など)を事前に検討します。

②契約交渉段階:

適用法と紛争解決方法を交渉する:
契約準備段階で検討した内容に基づき、相手方と適用法や紛争解決方法について交渉し、自社に有利な条件となるように努めます。

当事者間のリスク分担を明確にする:
契約上の義務や責任、そしてそれらに伴うリスクを、両当事者間でどのように分担するかを明確にします。

例えば、製品の輸送中に発生した損害について、売主が責任を負うのか、買主が責任を負うのかを明確にする。あるいは、両当事者間で、ソフトウェアに瑕疵があった場合の責任範囲(無償修理、損害賠償の上限など)を定めるなど、です。

曖昧な表現をなくす:
契約書中の曖昧な表現は、後々の解釈の相違や紛争の原因となります。明確かつ具体的な文言を用いるように努めます。

自社に不利な条項を修正・削除する:
相手方から提示された契約書に、自社にとって過度なリスクとなる条項が含まれていないか慎重に確認し、修正や削除を交渉します。

③契約の履行段階:

履行状況を監視する:
相手方が契約内容通りに義務を履行しているかを定期的に確認し、遅延や不履行の兆候がないかを早いうちに発見します。

記録を保持する
契約に関連する重要な連絡や履行状況の記録を保持し、紛争発生時の証拠とします。

契約変更に対応する:
契約内容を変更する必要が生じた場合は、口頭合意ではなく、書面による明確な合意(契約変更書)を作成します。

2)リスク管理において特に重要な条項:

英文契約書には、リスク管理の観点から特に注意すべき、以下のような種類の条項があります。

責任制限条項 (Limitation of Liability Clause):
契約上の義務不履行などによる損害賠償責任の範囲や上限を定める条項です。

補償条項 (Indemnification Clause):
第三者からの請求や損害が発生した場合に、一方当事者が他方当事者を補償する責任を定める条項です。

保証条項 (Warranty Clause) /保証の排除条項 (Disclaimer Clause):
製品やサービスの品質、性能などについて保証する内容、または保証しない内容を定める条項です。

解除条項 (Termination Clause):
契約を途中で終了させる条件や手続きを定める条項です。

不可抗力条項 (Force Majeure Clause):
当事者の合理的な支配を超える事由による履行遅延や不能に対する免責を定める条項です。

準拠法条項 (Governing Law Clause) と裁判管轄条項 (Jurisdiction Clause):
契約の解釈や適用、紛争解決に適用される法律や裁判所を定める条項です。

損害賠償額の予定条項 (Liquidated Damages Clause):
契約違反が発生した場合の損害賠償額をあらかじめ定める条項です。

これらの条項は、契約におけるリスクを特定し、その影響を小さくする(=自社が負うリスクの範囲や程度を小さくする)または移転する(=自社が負う可能性のあるリスクを相手方や保険会社などに負担させる)ために重要な役割を果たします。

続く【用語集】のセクションでは、これらの条項に登場する重要表現を、例文を交えながら詳しく解説していきます。

3.【用語集】英文契約のリスク管理:重要表現と例文

契約リスクには、大きく分けて、法的リスク、金銭的リスク、履行リスク、契約終了リスクの4種類があります。

法的リスク:
契約の解釈や適用、契約違反、知的財産権侵害、法令違反など、法的な問題に起因するリスク全般を指します。

法的な問題が生じると、金銭的な損失や事業継続ができなくなる場合があります。

金銭的リスク:
契約不履行による損害賠償、支払遅延による利息、為替変動、原材料価格の高騰など、金銭的な損失が発生するリスクを指します。

履行リスク:
契約で定められた義務を期日通りに、または契約内容通りに履行できないリスクを指します。これには、品質不良、納品遅延、サービスの提供不可などがあります。

履行リスクが生じると、契約解除や損害賠償請求につながるおそれがあります。

契約終了リスク:
契約が予期せぬ形で終了するリスクを指します。これには、相手方の倒産、契約解除条項に基づく解除、不可抗力による終了などがあります。

契約終了は、事業計画に大きな影響を与えるおそれがあります。

最初に述べた法的リスクは、他のリスクの原因となったり、既に生じた他のリスクの結果として発生する可能性があります。

いずれにせよ、これらのリスクは相互に関連し合っていることをご理解ください。

以下に、これらの各リスクに関連する表現と例文を挙げています。

1)法的リスクに関連する表現と例文

Breach of Contract (契約違反)

例文:

If either party commits a material breach of contract, the other party shall have the right to terminate this Agreement upon written notice.

(いずれかの当事者が重大な契約違反を犯した場合、他方当事者は書面による通知をもって本契約を解除する権利を有する。)

解説:

Breach of Contract (契約違反)は、当事者の一方が、契約書で定められた義務を履行しないことを定める条項です。

契約違反が発生した場合、他方当事者は損害賠償請求や契約解除などの法的措置を講じることができます。

リスク管理の観点からは、契約違反の定義を明確にし、違反時の対策を定めておくことが重要です。

以下が、契約違反の定義と違反時の対策の例です。

契約違反の定義の例:

Failure by Buyer to pay the Price by the due date shall constitute a material breach of this Agreement.

買主が、定められた期日までに代金を支払わない場合重大な契約違反とする。)

Delivery by Seller of Goods that do not conform to the quality standards specified herein shall constitute a material breach of this Agreement

売主が、契約で定められた品質基準を満たさない製品を納入した場合、重大な契約違反とする。)

違反時の対策の例:

The breaching party shall be liable for and shall indemnify the non-breaching party against any and all damages arising out of or relating to such breach.

(契約違反により損害が発生した場合、違反した当事者は相手方に対してその損害を賠償する責任を負う。)

In the event of a material breach of this Agreement by Buyer, Seller shall have the right to terminate this Agreement with immediate effect upon written notice to Buyer.

(買主が重大な契約違反を犯した場合、売主は書面による通知をもって直ちに本契約を解除することができる。)

Indemnification (補償)

例文:

Supplier shall indemnify and hold harmless Buyer against any and all losses arising from any claim that the Products infringe any third party’s intellectual property rights.

(サプライヤーは、製品が第三者の知的財産権を侵害するといういかなる請求から生じる一切の損失について、買主を補償し、免責するものとする。)

解説:

Indemnification (補償)は、第三者からの請求や損害賠償請求が発生した場合に、一方当事者が他方当事者を補償する(損害を肩代わりする)ことを定める条項です。

知的財産権侵害や製造物責任など、特定の状況におけるリスクを一方に負担させることを目的とします。

Warranty (保証)

例文:

Seller warrants that the Goods shall be free from defects in material and workmanship for a period of one year from the date of delivery.

(売主は、商品が引渡し日から1年間、材料および製造上の欠陥がないことを保証する。)

解説:

Warranty (保証)は、製品やサービスの品質、性能、権利などについて、一方当事者が他方当事者に対して保証する条項です。

保証内容に不備があった場合、保証する側は修理、交換、損害賠償などの責任を負うことがあります。

リスク管理においては、保証範囲を明確に定めることが重要です。例文の赤文字部分です。

Disclaimer (保証の排除・免責)

例文:

EXCEPT AS EXPRESSLY PROVIDED IN THIS AGREEMENT, SELLER DISCLAIMS ALL WARRANTIES, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING, BUT NOT LIMITED TO, THE IMPLIED WARRANTIES OF MERCHANTABILITY AND FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE.

(本契約に明示的に規定されている場合を除き、売主は、商品性および特定の目的への適合性の黙示の保証を含むがこれに限定されない、明示的または黙示的な一切の保証を排除する。)

解説:

Disclaimer (保証の排除・免責)は、明示的または黙示的な保証を排除または制限する条項です。特に製品やサービスの欠陥、特定の目的への適合性などに関する責任を限定するために定められます。

リスク管理の観点からは、責任範囲を明確にすることが重要です。例文の赤文字部分です。この例外の文言により、売主は、本契約に明示的に保証として記載されていること以外について、一切の保証を行わない、という責任範囲を明確にしています。

2)金銭的リスクに関連する表現と例文

Limitation of Liability (責任制限)

例文:

IN NO EVENT SHALL EITHER PARTY’S AGGREGATE LIABILITY ARISING OUT OF OR RELATED TO THIS AGREEMENT, WHETHER IN CONTRACT, TORT (INCLUDING NEGLIGENCE) OR OTHERWISE, EXCEED THE TOTAL AMOUNT PAID BY BUYER TO SELLER UNDER THIS AGREEMENT.

(いかなる場合においても、契約、不法行為(過失を含む)またはその他のいずれによるかを問わず、本契約から生じるまたは関連するいずれの当事者の累積責任は、買主が売主に本契約に基づいて支払った総額を超えないものとする。)

解説:

Limitation of Liability (責任制限)は、契約上の義務不履行や不法行為によって相手方に損害を与えた場合の賠償責任の範囲や上限を定める条項です。

損害賠償額を一定の範囲に限定することで、一方当事者の金銭的リスクを少なくします。例文では、赤文字部分が賠償責任の総額を示しています。

Liquidated Damages (損害賠償額の予定)

例文:

If Seller fails to deliver the Goods by the agreed delivery date, Seller shall pay Buyer liquidated damages in the amount of five (5)% of the total contract price for each week of delay, up to a maximum of fifteen (15)%.

(売主が合意された納期までに商品を納入できなかった場合、売主は買主に対し、遅延1週間あたり契約総額の5%の予定損害賠償額を、最大15%まで支払うものとする。)

解説:

Liquidated Damages (損害賠償額の予定)は、契約違反が発生した場合に、実際に発生した損害額を証明することなく、あらかじめ契約で合意された一定の金額を損害賠償額と定める条項です。

例文の赤字部分が、あらかじめ契約で合意された損害賠償額を示します。

状況次第で困難となる損害額の算定を回避し、紛争を予防する効果があります。

Payment Terms (支払条件)

例文:

The purchase price shall be payable by Buyer to Seller within thirty (30) days following the date of Seller’s invoice.

(購入代金は、売主の請求書の日付から30日以内に買主から売主に支払われるものとする。)

解説:

Payment Terms (支払条件)は、代金の支払時期、支払方法、支払通貨などを定める条項です。

支払遅延による金銭的リスクを管理するために、遅延利息や支払保証などの条項と一緒に規定されることがあります。

Interest on Late Payment (遅延利息)

例文:

Any amounts not paid when due shall bear interest at the rate of three (3)% per annum or the maximum rate permitted by applicable law, whichever is lower.

(期日までに支払われなかった金額には、年3%の利率または適用法で認められる最大限の利率のいずれか低い方が適用となる利息が付されるものとする。)

解説:

支払いが遅延した場合に、未払い金額に対して課される利息を定める条項です。

支払遅延による金銭的損失を補填し、支払いを促す効果があります。

3)履行リスクに関連する表現と例文

Delivery Date (納期)

例文:

Seller shall use its best efforts to deliver the Goods to Buyer on or before April 30, 2024.

(売主は、2024年4月30日までに買主に商品を納入するために最善の努力を払うものとする。)

解説:

Delivery Date (納期)は、製品やサービスが相手方に引き渡される期日を定める条項です。納期遅延は、契約不履行のリスクを高め、損害賠償請求や契約解除につながるおそれがあります。

リスク管理の観点からは、実現可能な納期を設定し、遅延した場合のペナルティなどを明確にしておくことが重要です。

Acceptance Criteria (受入基準)

例文:

Buyer’s acceptance of the Software shall be conditional upon the Software meeting the Acceptance Criteria set forth in Appendix A.

(買主によるソフトウェアの受入れは、別紙Aに定める受入基準を満たすことを条件とする。)

解説:

Acceptance Criteria (受入基準)は、納品された製品やサービスが契約内容に適合しているかどうかを判断するための基準を定める条項です。

受入基準が曖昧な場合、当事者間で認識のずれが生じ、受入拒否や紛争のリスクが高まります。リスク管理の観点からは、具体的かつ客観的な受入基準を定めることが重要です。

Performance Standards (性能基準)

例文:

The System shall achieve a Performance Standard of processing at least one thousand (1000) transactions per second with an average response time of less than fifty (50) milliseconds.

(本システムは、平均応答時間50ミリ秒未満で、1秒あたり少なくとも1000件のトランザクションを処理する性能基準を達成するものとする。)

解説:

Performance Standards (性能基準)は、提供される製品やサービスが満たすべき品質、機能、性能などの基準を定める条項です。

性能基準が不明確な場合、契約不履行や品質に関する紛争のリスクが高まります。リスク管理の観点からは、客観的かつ測定可能な性能基準を定めることが重要です。

4)契約終了リスクに関連する表現と例文

Term (契約期間)

例文:

This Agreement shall commence on May 1, 2024 and shall continue for a term of three (3) years (the “Term”).”

(本契約は2024年5月1日に開始し、3年間(以下「契約期間」という。)存続するものとする。)

解説:

Term (契約期間)は、契約が有効に存続する期間を定める条項です。

契約期間満了による終了が一般的な流れですが、期間が不明確な場合や自動更新の条件が不明確な場合、意図しない契約継続のリスクが生じるおそれがあります。

Termination for Convenience (任意解除)

解説:

Termination for Convenience (任意解除)は、一方の当事者が、相手方に理由を示すことなく、一定の予告期間をもって契約を解除することができる条項です。

事業戦略の変更など、やむを得ない事情で契約を終了させる必要が生じた場合に備えるための条項ですが、相手方にとっては契約の安定性を損なうおそれが生じます。

例文:

Either party may terminate this Agreement for convenience upon ninety (90) days’ prior written notice to the other party.

(いずれの当事者も、他方当事者に対し90日前までに書面で通知することにより、任意に本契約を解除することができる。)

Termination for Cause (正当事由による解除)

例文:

Buyer may terminate this Agreement for cause,if Seller fails to deliver the Goods in accordance with the specifications set forth herein and fails to cure such failure within thirty (30) days of written notice thereof.

(買主は、売主が本契約に定める仕様に従って商品を納入せず、その不履行を書面による通知後30日以内に是正しない場合、正当事由に基づいて本契約を解除することができる。)

解説:

Termination for Cause (正当事由による解除)は、一方の当事者が、相手方の契約違反や特定の事由の発生を理由として、契約を解除することができる条項です。

契約不履行のリスクに対応するための重要な条項となります。

Insolvency (支払不能)

例文:

Either party may terminate this Agreement immediately upon written notice,if the other party becomes insolvent or files for bankrupcy.

(いずれの当事者も、他方当事者が支払不能になった場合または破産を申し立てた場合、書面による通知により直ちに本契約を解除することができる。)

解説:

Insolvency (支払不能)は、一方の当事者が破産、支払不能、会社更生手続きなどの状態に陥った場合、他方当事者が契約を解除できる事由として定められることがあります。

相手方の経営状況が悪化した場合のリスクに対応するための条項です。

4.リスク管理と英文契約を読む際のポイント

英文契約書を読む際には、単に条文の文言を理解するだけでなく、契約全体を通して潜在的なリスクを把握し、自社にとって不利な条件がないか、またはリスクを適切に管理できているかという視点を持つことが重要です。

以下に、リスク管理の観点から英文契約を読む際に特に注意すべきポイントを挙げます。

1)責任と義務の所在を明確にする

各当事者が負うべき具体的な義務の内容と範囲を詳しく確認します。

「shall」や「must」などの義務を示す言葉だけでなく、「best efforts」や「commercially reasonable efforts」といった努力義務の程度も確認することが重要です。

義務の範囲が曖昧な場合、将来的に紛争が生じるおそれがあります。

以下が、当事者の責任と義務について、注意すべき条項です。

表明保証条項(Representations and Warranties):

契約締結時点における事実に関する表明保証の内容を確認します。

表明保証が万が一、虚偽であった場合、損害賠償請求や契約解除の根拠となる場合があります。自社が行う表明保証の範囲が適切か、また相手方の表明保証が十分かという視点で検討します。

責任制限条項(Limitation of Liability):

損害賠償責任の範囲や上限が定められているかを確認します。

自社が負うおそれのある損害賠償額が適切に限定されているか、また相手方の自社に対する責任制限が一方的すぎて、自社が負う責任範囲が大きすぎないか、という視点で検討します。

免責条項(Exclusion of Liability):

免責条項(Exclusion of Liability)とは、契約当事者の一方または双方が、特定の種類の損害や特定の状況下での責任を負わないことを定める条項です。

免責条項(Exclusion of Liability)の代表的な例文を二つ、ご紹介します。

例文1:

IN NO EVENT SHALL EITHER PARTY BE LIABLE TO THE OTHER PARTY FOR ANY INDIRECT, INCIDENTAL, CONSEQUENTIAL, SPECIAL OR PUNITIVE DAMAGES ARISING OUT OF OR RELATING TO THIS AGREEMENT, EVEN IF SUCH PARTY HAS BEEN ADVISED OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES.

(いかなる場合においても、いずれの当事者も、本契約に起因または関連する間接的損害、付随的損害、派生的損害、特別損害、または懲罰的損害について、たとえ当該当事者がそのような損害の可能性を知らされていたとしても、他方当事者に対して責任を負わないものとする。)

例文2:

THE SELLER SHALL NOT BE LIABLE FOR ANY LOSS OF PROFITS, LOSS OF BUSINESS, OR LOSS OF GOODWILL ARISING FROM ANY DEFECT IN THE GOODS.

(売主は、商品のいかなる欠陥から生じる利益の損失、事業機会の損失、または信用毀損について責任を負わないものとする。)

これらの例文から分かるように、免責条項(Exclusion of Liability)では、間接損害、特別損害、逸失利益などが免責となる場合があります。

契約書を読む際には、特定の損害について責任を負わないとする免責条項(Exclusion of Liability)の有無と内容を確認します。

契約書に免責条項(Exclusion of Liability)がある場合は、どのような損害が免責されているか、自社にとって重要な損害が免責されていないか、また相手方の免責範囲が広すぎないか、という視点で慎重に検討します。

2)契約不履行時の確認

契約不履行時の確認について、以下が注意すべき条項です。

契約解除条項(Termination Clause):

どのような場合に契約を解除できるか、解除の手続き、解除時の効果などを確認します。

自社にとって不利な解除条件がないか、また契約不履行時の解除権が適切に反映されているかという視点で検討します。

損害賠償条項(Damages Clause):

契約不履行によって生じた損害の賠償方法や範囲が定められているかを確認します。

予定損害賠償額(Liquidated Damages)が適切か、また間接損害の賠償範囲がどうなっているかなどを検討します。

遅延損害金の条項(Late Payment Interest):

支払遅延が発生した場合の遅延損害金の利率や計算方法を確認します。

3)当事者間のリスク配分を確認する

補償条項(Indemnification Clause):

第三者からの請求や損害について、一方当事者が他方当事者を補償する義務を定める条項の有無と内容を確認します。

補償義務の範囲、対象となる損害、手続きなどを詳細に検討し、自社が過度な補償義務を負っていないかを確認します。

保険条項(Insurance):

契約に関連するリスクをカバーするための保険加入義務が定められているか、その内容(保険の種類、保険金額など)が妥当かを確認します。

不可抗力条項(Force Majeure Clause):

当事者の合理的な支配が及ばない事由(天災、戦争など)によって契約履行が遅延または不能になった場合の責任について定めた条項を確認します。不可抗力事由の範囲が適切か、また影響を受けた場合の対応について検討します。

4)紛争解決

準拠法条項(Governing Law Clause):

契約から生じる紛争に適用される法律を確認します。

自社にとって有利な法律が選択されているか、または紛争解決の手続きに精通している法律が選択されているかを検討します。

紛争解決条項(Dispute Resolution Clause):

訴訟、仲裁、調停など、紛争解決の方法が定められているかを確認します。

手続き、場所、言語などを検討し、自社にとって不利な条件がないかを確認します。

5)その他のリスク要因

知的財産権(Intellectual Property Rights):

知的財産権の帰属、使用許諾、侵害時の責任などが明確に定められているかを確認します。

秘密保持義務(Confidentiality Obligation):

秘密情報の定義、管理方法、開示範囲、期間などが適切に定められているかを確認します。

契約期間と解除条件:

契約の期間、自動更新の有無、中途解約の条件などを確認します。

6)契約を読む際の心構え:

契約全体の把握:

契約書全体を読み通し、各条項がどのように関連しているかを理解します。

不明点の明確化:

不明な用語や条項があれば、必ず相手方に確認し、明確にします。

専門家の活用:

法務部門や外部の専門家の意見を求めることを検討します。

上記を参考に、英文契約書のリスクを多面的に評価し、自社にとって最適な条件で契約を締結することが重要です。

5.まとめ:リスク管理を意識した英文契約の締結

英文契約締結はグローバルビジネスの鍵ですが、様々なリスクも伴います。

契約書に用いられる用語の正確な理解に加え、リスク管理の視点での契約全体の精査が極めて重要です。

重要なポイントをまとめます。

1)事前準備:

契約目的を明確にする:
契約を通じて何を達成したいのか、自社の権利と義務は何かを明確にします。

相手方について調査する:
相手方の事業内容、信用力、交渉姿勢などを事前に調査し、把握します。

社内体制を整える:
関連部署が連携し、リスク評価と対応策を検討する体制を整えます。

交渉戦略を策定する:
自社の許容できるリスク範囲、譲歩できる点、確保する条件などを明確にします。

2)契約書の検討:

用語を正確に理解する:
不明な点は必ず確認し、曖昧な表現は具体的に相手方に修正を求めます。

責任と義務の所在を明確にする:
各当事者の義務範囲、表明保証、責任限定、免責条項などを詳細に確認し、自社にとって不利な条件がないかを精査します。

契約不履行時の対応を確認する:
契約解除、損害賠償、遅延損害金など、不測の事態に備えた条項が適切に置かれているかを確認します。

当事者間のリスク配分を確認する:
補償条項、保険、不可抗力条項などを確認し、今後発生しうるリスクを適切に管理できているかを確認します。

紛争解決方法を明確にする:
準拠法、紛争解決手段、手続きなどを確認し、自社にとって不利な条件がないか検討します。

3)交渉と修正:

主体的に交渉する:
不利な条項や曖昧な点があれば、積極的に修正を求めます。

記録を保持する:
交渉の過程で合意された内容は、書面に記録します。

専門家を活用する:
必要に応じて、専門家のアドバイスを受けながら交渉を進めます。

4)締結後の管理:

契約内容を周知する:
関連部署に契約内容を周知し、適切な履行体制を整える。

履行状況をチェックする:
契約の履行状況を定期的に確認し、問題が発生した場合は早期に対応します。

契約書の保管と管理:
締結された契約書を適切に保管・管理し、必要に応じて参照できるようにします。

ビジネス機会を最大限に活かし、リスクを最小限に抑えるためには、英文契約のリスク管理について継続的に注意することが重要です。

 

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