英文と日本語のビジネス契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳の専門事務所です。(低料金、全国対応)
売買基本契約などで、製品の非拘束的購入予測の条項として置かれるNon-Binding Forecastsについて解説します。併せて、例文をとりあげ、要点と対訳をつけて例文の基本表現に詳しい注記を入れました。
1.解説:
1)Non-Binding Forecastsとは
長期に渡って製品の売買が繰り返し行われる売買取引基本契約や販売店契約などの英文契約書において、
『Non-Binding Forecasts』
の規定がよく設けられます。
Non-Binding Forecastsとは
『買主が売主に対して、製品の非拘束的な購入予測を提示することを定める非拘束的購入予測の条項』
のことを意味します。
2)Non-Binding Forecastsで定められる内容
Non-Binding Forecastsでは、たとえば、以下のような内容が定められます:
①『販売店は、年間や四半期ごとの製品の非拘束的な購入予測をサプライヤーに提示する。』
②『販売店の購入予測に法的拘束力はないが、将来の製品所要数量についての最も正確な見積りを提示する。』
3)Non-Binding Forecastsの実務上の重要点と交渉の視点
Non-Binding Forecasts条項は、単なる予測の共有にとどまらず、サプライチェーンの効率を最適化し、同時に両当事者のリスクを管理するための重要なツールです。
特に、製造リードタイムが長い製品や、需要の変動が大きい市場では、この条項の存在がビジネスの成否を左右することもあります。
ア.売主(サプライヤー)側の視点:生産計画の最適化
売主の立場では、購入予測を「法的拘束力はないが、最も正確な見積り」と定めることで、以下の目的を達成します。
生産計画の立案:
予測を基に原材料の調達や生産ラインの調整を行うことで、過剰在庫や在庫切れを防ぎ、生産コストを削減できます。
これにより、顧客(買主)の注文に迅速に対応できるようになります。
納期遵守の根拠:
もし買主が予測を大幅に上回る注文を行った場合、売主は「予測が不正確だったため、納品に遅れが生じる可能性がある」と主張する根拠となります。
これにより、納期遅延に関する責任を一部回避できる可能性があります。
確約注文(Firm Order)との区別:
Non-Binding Forecastsはあくまで予測であり、実際に法的拘束力を持つのはPurchase Order(発注書)です。
この条項を設けることで、買主の予測に基づいて売主が勝手に生産した製品の在庫リスクを、法的に明確に切り離すことができます。
イ.買主(販売店)側の視点:柔軟性の確保
買主の立場では、需要の変動に対応するため、購入予測に法的拘束力を持たせないことが不可欠です。
市場変動への対応:
市場のトレンド、競合製品の動向、経済状況の変化など、予測不可能な要因によって需要は大きく変動します。
non-bindingとすることで、将来の不確実な需要に対応するための柔軟性を確保できます。
義務の範囲の確認:
例文のように、予測の提示期間(例:rolling quarterly)や提出期限(例:at least thirty (30) days prior to the start of each calendar quarter)が具体的に定められているかを確認します。
これにより、予測の義務範囲を正確に把握できます。
「reasonable best estimate」の解釈:
この表現は、「善意に基づき、知り得る限りの情報を用いて、合理的に努力した上で作成された予測」を意味します。
しかし、この定義が曖昧だと、後々、売主から「予測が不正確だった」と主張されるリスクがあります。
実務上は、この概念を「過去の販売実績、マーケティング計画、および既存の顧客注文に基づいて作成されたもの」のように具体的に定義することで、責任範囲を明確にすることができます。
Non-Binding Forecasts条項は、単なる形式的なものではなく、サプライチェーンに関わる両当事者にとって、リスクと効率性のバランスを取るための戦略的ツールです。
この条項が適切に機能することで、長期的なビジネス関係の安定に貢献します。
2.例文と基本表現:
(注):基本表現をハイライトしています。
1)Non-Binding Forecasts(非拘束的予測の条項)– 例文と基本表現
販売店契約からです。販売店は、四半期ごとに、ローリング方式(=予測の周期的な見直しの手法)による非拘束的な購入予測を提示します。
Non-Binding Forecasts
Distributor shall provide Supplier with rolling quarterly purchase forecasts for the Products. Distributor shall provide Supplier with the first forecast within thirty (30) days after the Effective Date, covering the then-current calendar quarter and the next three calendar quarters. Thereafter, Distributor shall provide Supplier with a forecast at least thirty (30) days prior to the start of each calendar quarter during the term of this Agreement covering the upcoming calendar quarter and the next three calendar quarters. Distributor’s forecasts are non-binding, but shall be Distributor’s reasonable best estimate of its future Product requirements.
(訳):
非拘束的予測
販売店は、製品の四半期毎のローリング購入予測をサプライヤーに提示するものとする。 販売店は、本契約の発効日から30日以内に、その時点の四暦半期および次の3期分の暦四半期をカバーする最初の予測をサプライヤーに提示するものとする。 その後、販売店は、本契約の期間中、その次の暦四半期およびその次の3回分の暦四半期をカバーする予測を各暦四半期の始まる日の少なくとも30日前までにサプライヤーに提示しなければならない。 販売店の予測に法的拘束力はないが、販売店の将来の製品所要数量についての合理的かつ最も正確な見積りとなるものとする。
*rolling quarterly purchase forecastsは、四半期毎のローリング購入予測という意味です。ローリングとは、(予測の)周期的な見直しの手法をいいます。
*the Effective Dateは、本契約の発効日という意味です。
*then-currentは、その時点のという意味です。くわしくは、then-currentの意味と例文をご覧ください。
*calendar quarterは、暦四半期という意味です。
*Thereafterは、その後という意味です。くわしくは、thereto, thereof, thereafter, thereby, thereinの意味と例文をご覧ください。
*the upcoming calendar quarterは、その次の暦四半期という意味です。the upcomingは、その次の、次回のという意味です。
*non-bindingは、法的拘束力はないという意味です。
*reasonable best estimateは、合理的かつ最も正確な見積りという意味です。
*its future Product requirementsは、将来の製品所要数量という意味です。
英文契約書・日本語契約書の作成・チェック(レビュー)・翻訳は、当事務所にお任せください。リーズナブルな料金・費用で承ります。
お問合せ、見積りは、無料です。お気軽にご相談ください。
受付時間: 月~金 10:00~18:00
メールでのお問合せは、こちらから。
ホームページ:宇尾野行政書士事務所
